宝くじを買った暑い日
この夏、宝くじを買った。
母は宝くじを買うのが趣味の人だったが買うだけで満足して殆ど当たりを調べたりしなかった。
もしかしたら億万長者になっていたかも…。そして母亡き今、私はそれを相続して…。
などと考えるだけでまあまあ楽しいのでよしとする。
その血を私は受け継いでいなかったようで宝くじを買うくらいなら馬券を買った方が楽しい、という側の人である。
ところが、歳を重ねてきてこの先の人生をふと考えることが多くなった。
お金欲しいな。
ストレートな願い。
友人と2人で合同で宝くじを買ってみようということになった。
なんでも以前、宝くじの話になった時、1億円当たったらどうする?という友人の問いに私が
「網戸を取り替える」
と答えたらしい。
あまりのみすぼらしい答えに友人は涙したそうだ。
本人はすっかり忘れているが、なんてささやかな人生なんだろうと笑える。
「ゴージャスな網戸に取り換えようや!」と耳元で囁く友人にのせられて、よっしゃ!サマージャンボ買お!となったわけで。
友人は大安とか吉日とか方角とか、そういうのにうるさい。
なので購入する日は一粒万倍日とかいう、とてもいい日に行くことになった。
私はというと、一粒万倍日ってなに?グリコみたいに一粒で万倍にもいいことがある日?程度の知識と興味しかないけど。
購入場所は割と高額当選の出ている某所の売り場。
「その前にな」
巫女のような友人が言う。
「お参りに行かんとあかん」
宝くじが当たりますようにと神様にお願いしてから買わねばならないと。
そんな事をお願いしても神様はお怒りにならないのかしらとチラと思うけど。
売り場から歩いて行けるお金関係の神社へお参りに行くことにする。
お金関係の神社てなんやねん。
ここでパンパンと手を叩いて、どーか宝くじを当ててくださいとお願いする。
さあ!買いに行こか!
あかん、まだや。
へ?
買うべき時間というのがあるらしい。
「夕方やで。」と巫女友人。
まだ朝なんやけど。
朝の早よから家を出てきたんやけど。
お腹空いたな。
とりあえずお昼ご飯食べに行こか。
行きたかったお店が既に長蛇の列で仕方なく別の店に入る。
なんか…めっちゃ…高かった。
そのわりには…(以下自粛)
宝くじを買うために高額ランチで無駄遣い。
人生なんてそんなもの〜♪
さて、ようやく昼過ぎ。
どないするん?
ここからIKEAに送迎バスが出てるねん。
片道210円やけど500円のクーポン付いてるから無料みたいなもんや。
いや、既にランチで出費してますけどな。
とにかくそのバスに乗ってIKEAへ。
IKEAは私たちにとってさしずめディズニーランドみたいなもの。
買い物って楽しいよねー。
しかも、わーかわいいー!って買って、帰ってからなんでこんなん買ったんやろ…みたいになる買い物って多分一番楽しい。
宝くじでお金を手にするために、IKEAで買い物をしてお金を使って時間潰しをする。
意味わからん。
今回は電車に乗って帰らないといけないので、なるべく重くならないように、かなり考えながら買う。
ダンナは昔、街で安いからとパソコンを買って電車で帰って手がちぎれかけたことがあった。
あんなバカの真似だけはしたくない。
3時間ほど楽しくお買い物をして、また送迎バスに乗って宝くじ売り場近くまで戻ってきた。
既に売り場には行列ができている。
みんな考える事は同じなのね。
私たちはそこに並んで無事宝くじを買った。
わーい!これで億万長者だー!
さっ!飲みに行こか!
もはや何が本日のメインなのかわからなくなっている。
そもそも宝くじを買うのに丸一日費やす必要があったのか。
ビールで乾杯しながら話す。
当たったらすぐニューヨーク行こな。
沖縄も行こ。
車も買い換えよかな。
あと、網戸替えるわ。
私たちはハシゴ酒までしてご機嫌で帰った。
当選発表の日。
人生なんてこんなもんやんな。
まあ、あの日一日楽しく遊んで夢を見させてもらってハッピーやったから、それでいいかー。
落ち込むのもバカらしいほど惜しい番号がなかった。
今もうちの網戸は所々破れて蚊が出入りしている。
多分、生涯このままだな。
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