友蔵の気持ち

こんなに友蔵の気持ちがわかる時がくるとは思っていなかった、いや、わかる気になっているだけで実際には他人の気持ちなどわかるはずもないし、安易に「わかる」などと言われては「は？お前にわかるわけがあるか」と腹も立つのだが、それにしても友蔵と自分の人生経験がシンクロするとは。

まる子に夕飯のリクエストを聞かれた友蔵は「やわらかくて消化に良いものがいい」と答えた。するとまる子は「おじいちゃん、本当にそれでいいの！？やわらかくて消化に良いだけの人生でいいの！？」と凄むのだ。

友蔵は戦慄し、思い悩み、「やわらかくて消化に良いだけの人生なんていやだ。やわらかくて消化が良くて美味しいものにしておくれ」とリクエストを改める。

やわらかくて消化に良くて美味しいもの。
それは私が求める食事と一致している。

友蔵と私は「やわらかくて消化に良くて美味しいものが食べたい」という共通の欲求を持つ。だから私は「友蔵の気持ちがわかる」などとわかったような口を利く。他人の気持ちなどわかるはずもないのに。ましてや友蔵の気持ちなど。

就寝中も日中も無意識に歯を食いしばってしまうらしく左右の歯がランダムに疼くようになった。歯が痛いとものが噛めない。

おまけに胃腸の具合も良くないので肉などの油分のあるものが食べられない。消化に良いものを食べないとお腹を壊す。

消化に良いものを食べようにも、油分の少ない食品はかたい。

やわらかいものを食べようにも、やわらかい食品は油分を含む。

こういう時一休さんならどうするのかな？晩年の一休さん、年を取って歯も胃腸も悪くなった一休さんは何を食べて生きていたのかな？八方塞がりな食生活の悩みをとんちで解決できたのだろうか？

やわらかくて消化に良くて美味しいもの……

乳がゆ？

乳がゆはかなり不味いと聞いたことがある。やわらかくて消化に良くて美味しいものなんてこの世に存在しないんだ……

ああ、今日も歯が疼く。
お腹もいつ壊すかわからない。
とんちでも解決できない問題はある。

さようなら……