たかが日記（されど日記）

人気のハッシュタグを上位から順に選んで文章を書いていこうという試みである。「#日記」は堂々第一位だった。それだけ書きやすいということであり、同時にそれだけ読み物として面白くするのが難しいジャンルなのだと思う。

昔ほど上手に文章が書けなくなった。技術的な面では練習をしたから少しは上手くなったかもしれないけど、心に蓋をしてしまっていて、感性も死んでるし、何も面白いことが書けない。文章が上手いって、「てにをは」の使い方がうまいとかそういうことじゃなくて、そもそも本人の発想が面白いということなのだろう。私が感情に蓋をしてしまったのには様々理由があるが、感情が乗っかってない文章ほど面白くないものはないし、かといって蓋をこじ開けるわけにもいかないので、どうしたものかと悩む。

最近では文章を通して伝えたいこともなくなってしまった。というか、私の言語能力では、どんなに心を砕いて文字を並べて伝えようとしても、結局相手には何も伝わらないということが分かってきてしまった。意図している形で言葉が伝わらないのなら、もう「人のために書く」という原動力も保てやしない。かといって「自分のために書く」のであれば、公に文章を公開する必要もない。そんな「どないしたらええねん」状態の中、日々ふにゃふにゃと生きている。

そういえばウルフルズが「何もなくてもええねん」と歌っていたなあ。全肯定の歌。トータス松本（敬称略）は本当に男の中の男だと思う。今どき「男の中の男」という表現は古臭いのかもしれないけど（そしてジェンダー論的に怒られるのかもしれないけど）、ウルフルズが描いている世界観も割とそういう感じであり（世代的なものが大きい）、まあええでしょう。トータス松本は本当にかっこよくて、愛に溢れている。これは私の持論なんだけど、結婚したら絶対にトイレットペーパーを交換してくれると思う。帰り道に牛乳も買ってきてくれると思う。トータスはそういう男なのだ。

トータスという男は、ジェンダー論とかで判断せずに心の根っこを見るべき好例だ。世代によって価値観は違う。いくら若者が若者ゆえに先進的な考え方を身に着けたとて、上の世代はそれまで古い価値観で生きてきたのだ。理解するのが難しいことだってあるだろう。私はさだまさし（敬称略）の説教臭い歌詞があまり好きではないけど、だからといって「さだが憎けりゃまさしも憎い！ヤツを裁け！」みたいな気持ちにはならない。だってまさしはおじいちゃんなんやもん。まさしにはまさしの考え方があるんやから仕方ないよ。それで何十年も生きてきたんだから自信もあるのでしょう。まさしの周りもおじいちゃんなんだから先進的な考え方の人なんて少ないのでしょう。

だからといって年寄り世代の考え方を若者世代に押し付けられたらそれは違うので、お互いが交わらないようにスルーしあっていきたい。ネットはなんでも可視化されすぎてスルーしにくくなっているのかもしれない。嫌いな物のことなんて考えるだけ自分の時間がもったいない。嫌いな物のことなんて忘れて楽しいこと考えようぜということである（なにも享楽的に生きよと唱えているのではない。解決すべき問題に向き合うこと自体は大事）。

などとさだまさしの話をしていたら筆が乗ってきた。先日書いた「音楽のリハビリ」同様、何かを書くことも気楽に楽しめば「文章のリハビリ」になるのかもしれない。そういう面でも「#日記」はちょうどいいハッシュタグだ。

ところでお笑いの界隈では「ちょうどいい」が来ているような気がする（私の中でだけかもしれないが）。桂小枝師匠は物件内覧番組で「ちょ〜どいい！」と言いまくっているし、２丁拳銃の修二さんも大喜利の答えに対して「ちょうどええ」とジャッジを下しているし、相席スタートの山崎ケイちゃんも「ちょうどいいブス」理論を提唱している。私も色々とちょうど良くなりたい。ちょうどいいのが一番。それが一番大事。

この間「しくじり先生」の再放送で、大事MANブラザーズバンドのボーカルの人が「何十年もそれが一番大事って歌いすぎて結局何が一番大事なのかわからなくなった」って吹っ切れたように言ってたのがすごく笑えた。人生が進んでくると歌詞のメッセージを自分の人生経験が乗り越えてしまって、何を聞いても薄っぺらく感じてしまうらしい。私が聞きたい音楽がなくなった理由もそこにあるのかもしれない。大事MANの人は、自分で曲を作っていたもののそのうち伝えたいこともなくなって、今では曲は書かずに、音楽に意味を求めすぎず楽しくカバーを歌っているのだそうだ。ちなみに売れる歌詞の条件は「桜が舞い散ってる」のだそうだ。清々しく尖ってることを言ってて、久々にめちゃくちゃ笑った番組だった。確かにこれからますます桜が舞い散る季節だ。

日記といえども結局、テレビの話題やら雑感やらになってしまった。今は日中何か特別なことをすることは皆無なので（朝ごはんを食べて、お風呂に入って、お昼ごはんを食べて、テレビを観て、バンテリンを全身に塗って、寒くて寝て、おやつを食べて、本を読んで、晩ごはんを食べて、お風呂に入って、テレビを観て、日記を書いている）、もしかすると私にとっては「日記」こそ難しいジャンルなのかもしれないなぁと思った。