yatoのこと
2023年より、yatoというニットブランドをスタートしています
筆不精でSNSが苦手、書き出す前に身構えてしまって更新できない人の一人です
ですが、昨年1年間いろいろな場所で販売会をさせていただいて、出会えた方々には「伝わる」感覚があったものの、まだまだ認知度が低すぎるという課題が明確になりました
父親の職人的一面も受け継いでいて、ものづくりは得意でなのですが、ものづくりと同じくらいの熱量で「伝えること」の重要性を感じております
「究極のセーター」のような安易な売り文句で伝われば楽だと思うのですが、その反面で失われることも多いと感じるため、コツコツと丁寧にお伝えしていければと考えています
伝えることの練習だと思って2週間前からTHREDSを初めました
「もっと気軽に書いていいんだ」と思えたことは有難かった
いいねやフォローをいただくことで、日々、SNSに身構えてしまう気持ちが楽になってきています
これ以上ブランドはいらない
僕自身10年以上アパレル業界の裏方として活動を続けてきて、ファッションビジネスの構造が限界にきていること、工場が減少し国内生産が難しくなってきていること、所謂ファッションのものづくりがメールと電話だけになってしまいチグハグなもので溢れていること、など様々な息苦しさを感じていました
正直なところ、「これ以上ブランドはいらない」と思っていました
その上で、もしもブランドを作るならば、繊維産業の課題を解決するブランドでなければ意味がないと思い3年間の準備期間を経てyatoを立ち上げました。
なぜ3年も要したかというと、
300日間かけてセーターを着続けるテストをしたこと
もう一つは、想いや哲学の部分と、生産、販売、流通構造のデザインを矛盾なく構築することに時間を要しました
yatoのものづくりは、原料から製品に至るまで、すべての工程で働いた経験をもとに、すべての職人と工場を繋いだものづくりをしています
繊維業界の課題として、チグハグなものづくりが溢れていることの原因の一つには、工程間の分断があると考えています
多くのデザイナーは工場に来なくなり、職人から技術を学ぶ機会がなくなりました。もう一方で、職人はデザイナーの感性を学ぶ機会がなくなっています
デザイナーが工場に行っても間に営業が入るため、職人と直接話をすることはあまりありません
それだけではなく、紡績工場の職人は自分の作った糸がどんな製品になるか見ることは稀です。また、ニット工場の職人は、紡績工場の職人と会うことは基本的にありません
これらはほんの一例ですが、セーターが出来上がるまでの工程には何人ものキーパーソンが関わっていますが、各工程で分断が起きています
工程を経るごとに付加価値が上がっていくものづくりが理想だとすると、現在のものづくりは工程を経るごとに価値が落ちていくものも少なくありません
幸いなことに、僕はそれぞれの現場で働いたことで、各工程の職人や目利きといった人たちと直接会って様々なことを教えていただきながら、すべての工程を統合したものづくりをさせていただいています
シンプルなデザインへの想い
yatoのものづくりは非常にシンプルな見た目に仕上げています
原料の特性や、各工程の職人技術や機械の特性を活かしながらものづくりをしていくと、表面的な装飾は不要に思え、できる限り削ぎ落したデザインにしています
奇をてらったもの、見た目の装飾は、時代や流行が付随します。一見シンプルな見た目でも、衿のサイズや全体のシルエット、着丈や袖のフォルムなど、時代が付随したものは、翌年着ると古く見えてしまいます
そのため、長年着用することを考えると、できるかぎり普遍的なデザインが必要になります。シンプルでありながら野暮ったくならず、着用する場を限定せず、着用する人の好みを限定せず、着用する人の年齢や体型を限定しないようなデザインを心がけています
コンセプトの一つでもある「あくまでも衣食住の一部であること」も主張のないデザインや表現と繋がっています
特性を活かすということ
着る人によって印象ががらりと変わる
という、自分でも予測していなかった現象が起きました
yato が今現在展開しているアイテムは全部で6型。小物を除けばわずか4型だけの展開で色も2色のみ
僕は着用試験も兼ねて、冬の間ずーっとyatoの衣服を身に着けていますが、販売側の3~4人が同じ服装でお客さまを出迎えることもしばしばあります
それでもペアルック感はありません
また、試着していただくお客さまも、着る人によって印象が変わります
服が目立たず、人が美しく見えることが多いです
「主」が人であり、「従」が衣服のような関係です
最初のうちはあまり体感したことのない経験に「なんでだろう?」と自問自答していました
結果としては「その人の魅力が出てくる」というのが答えな気がしています
原料の特性を活かした糸づくり、糸の特性を活かした編みたて、それらを活かすための洗い、、、、その工程間にも機械の特性や職人技術の特性を活かしながらものづくりを繋いできた結果、着てくださる人の魅力も引き出すようなものになっていると感じています
少しうさん臭くなってきたのでこの辺で止めておきますが、このブログを読んでくださった方にも、いつの日か着用していただけて、体感していただける日がくることを祈っております
また書きますね