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公認会計士こそアンコンシャス・バイアスに気付くべき?

こんにちは!
4,5月は経理部や監査法人は決算開示対応、監査対応の1年の内もっとも忙しい時期と思います。大手企業の開示も出そろってきており落ち着いてきている方もいるのではないでしょうか。

今回は、そんな企業の財務情報の信頼を築いていく公認会計士とI&Dでよく聞く「アンコンシャス・バイアス」の関係性について解説します。
あまり関係は無さそう、と思われがちですが大いに関係があるので財務数値に携わる方に知ってもらおうと書いてみました。


アンコンシャス・バイアスとは

多くの企業がアンコンシャス・バイアスについて説明しているので詳細は省きますが、

  • 無意識に働く先入観や偏見のことであり、人々の判断や行動に影響を与えるもの。(よく例示されるのが、「男の子だから○○、女の子だから○○」)

  • 脳の正常な機能であるため誰もが持っており、持っていること自体は問題にならない。

  • ただし、「人と一緒に働く時」に、アンコンシャス・バイアスに気付かずにいると、上手くコミュニケーションが取れなかったりする。自分のキャリアに制限を自らかけてしまい苦しい思いをする。

というものです。研修講師をしていて受講者からよく間違われるのが、アンコンシャス・バイアス自体が悪いと捉えてしまうことですが、本来は「人と協働する時に」「気付かないこと」が問題です。

公認会計士の職業的懐疑心とは

そんなアンコンシャスバイアスですが、実は公認会計士に似たような概念があります。それが「職業的懐疑心」というもので、特に監査を担う監査人には監査基準において特に強調して定められています。クライアントの提出してきた財務情報に疑念を持たずにいると不正が見抜けませんからね。

  • 公認会計士は、企業の財務情報を監査し、信頼性を確保する役割を担っています。

  • 職業的懐疑心は、公正かつ客観的な監査を行うために不可欠な要素です。

  • 公認会計士は、情報の真偽や正確性に対して懐疑的な姿勢を持ち、疑問を持つことが求められます。

監査の現場では、全員が懐疑心をもって財務数値を分析しているが・・・

公認会計士は職業的懐疑心をもって重要な財務数値に疑いを持って監査手続きを行っていて、そのスキル面では信頼がおけます。一方で、実は人間関係などのソフト面で、アンコンシャスバイアス(以下"アンコン")の存在に気付かないと不正を見つけることが難しくなるケースがあります。
例えば、

アンコンに気付かずに不正を見抜けないケース①
不正の見落とし・・・・確証バイアス

確証バイアスは、人々が既存の信念や予想に基づいて情報を解釈する傾向を指します。会計士が特定の部署や個人に対して好意的なバイアスを持っている場合、その部署や個人の不正行為を見落とす可能性があります。例えば、会計士が長年にわたって特定の部署と良好な関係を築いている場合、その部署の不正行為に対して十分な懐疑心を持たず、不正を見逃す可能性があります。

アンコンに気付かずに不正を見抜けないケース②
不正の報告の抑制・・・・承認バイアス

承認バイアスは、他人からの承認や肯定的な評価を求める傾向を指します。会計士が組織内の上層部や重要なステークホルダーからの評価を重視する場合、不正行為を報告する意欲が低下する可能性があります。
例えば、(本来あってはならないですが)会計士がクライアントの経営陣との関係を重視し、経営陣に不正行為を報告することが難しい状況であれば、不正を報告する意欲が低下する可能性があります。

アンコンに気付かずに不正を見抜けないケース③
監査の客観性の欠如・・・帰属バイアス

帰属のバイアスは、成功や良い結果を自分自身の能力や努力に帰属し、失敗や悪い結果を外部要因に帰属する傾向を指します。会計士が自身の監査手続きや判断に対して過度の自信を持っている場合、不正行為の兆候を見逃す可能性があります。例えば、会計士が自身の監査手続きを完璧だと思い込んでいる場合、不正行為の証拠を見逃し、不正を発見できない可能性があります。

アンコンの対処方法

それぞれのアンコンの対処方法ですが、「気付くかどうか」がポイントとなるため、結局は研修やロールプレイを通じて気付いていくしかありません。ちなみに、監査人となる公認会計士に関しては、クライアントとの関係が長期間にわたらないためにも数年に一度、監査人の交代が一部義務付けられています。ただし、実際に監査手続きを実施するメンバーが癒着の恐れもあるため、メンバーのローテーションも行うことが非常に重要です。不正は現場で起こっている、ということですね。

筆者が伝えたかった事のまとめ

いかがでしたでしょうか。公認会計士とアンコンシャス・バイアスの関係性を書いてみましたが、結論、以下の通りです。
「公認会計士の職業的懐疑心=アンコンシャス・バイアスに気付き自身をコントロールする力」

なんだか会計士も大変な義務を負っているなと思いつつ、それだけに責任の大きい仕事と改めて考えさせられました。
アンコンシャス・バイアスはダイバーシティの文脈で解説、語られることが多いですが、別の切り口でみるとまた違った解釈ができます。
財務報告に携わる監査人、監査役の方はこの記事を読んでご自身のアンコンシャス・バイアスに触れられればと思います。

また、経営者や経理関係の方は、本来信頼性の高い財務報告をするために雇っている会計士と深い関係になりすぎていないか、年に一度振り返っていただくことをお勧めします。

次回もI&Dに関連する話をしたいと思います。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました!


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