本当にそれを今やることが必要なのか

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長らく関わってきた二つの社会福祉法人 グロー(滋賀県)と愛成会(東京都)が絡む重大なハラスメント事案(係争中)にまつわる新聞記事が久しぶりに出ていた。12月6日(月)の産経新聞の朝刊の地域ニュース欄。「『係争中』口閉ざす関係者」と見出しが綴られている。


そんななか、来年の2月に2年ぶりにアメニティフォーラムが実施されると聞いて困惑している。アメニティフォーラムは毎年2月に滋賀県びわ湖大津プリンスホテルを会場に、“障害がハンディにならない社会の実現を目指して回を重ね”、“この間、何回もの制度改革を経てきましたが、一貫して「ハンディのある人の豊かな地域生活の実現に向けて」必要なサービスとそれを提供していく仕組みづくりを提案”してきた障害福祉分野を代表する大きなシンポジウムだ。(“ ”内は、主催のNPO法人全国地域生活支援ネットワークのBlogより引用)。
このシンポジウムのプロデューサーは実質、グローの元理事長の北岡賢剛氏であり、僕も北岡氏からオファーをもらい、2010年2月から前回2020年2月開催時(昨年2021年時はコロナ禍の影響で開催せず)までシンポジウムの企画や登壇、関連する音楽イベントへの出演や福祉を志す学生向けのセッションの進行など、幅広く関わってきた。ここで出会ってきた「福祉」と「アート」に関わる人たちとのつながりは、現在の僕の仕事にも生かされ、北岡氏に様々な縁をいただいたのは事実である。
しかし、と言えばいいのか、いや、だからこそ、今回、ハラスメントの事案に何も決着が付いていない状況で、しかも北岡氏やグローからのまともな見解が示されないなか(約一年前の2020年12月18日にここで書かれている「ハラスメント対応についての再点検」の進捗はどうなっているのか?など)、形式的にはグローの主催イベントでないにせよ、実質北岡氏やグローによる企画・運営力が色濃いこのフォーラムを再開すること(200人限定とは言え人数の問題ではない)は端的に残念だ。もちろん障害当事者の方も、支援職の方も、また福祉やアートなど様々な分野の専門家もこの場を楽しみにしてきたし、ここで生まれる新たな政策もあるし、この場でエンパワメントされ、明日も自分の現場に帰ってより良い社会をつくろうと励まし合ってきた風景は、10年も参加してきた立場からよくわかっているつもりだ。だからこそ、「やっぱり何があってもなかったことにしてやっちゃうんだ」と自分のように困惑する人も、傷つく人も、裏切られたような気分になる人も、確実に存在していると思う。


出演者のなかには、自分とも一緒に仕事をしてきた尊敬すべき仲間もいる。滋賀はもちろんのこと各地で、ともに汗を流すこともあった人たち。正直に言えば、やはり残念だ。「これはこれ、それはそれ」と割り切っているのか、それともはたまた「いやいやそもそもハラスメントなんてなかったから」と本当に思っているのか。
前者であったとしても弱者に寄り添う現場に深く携わってきた方々としていかがなものか?と思うが、もし、万が一、後者だったらなおのこと。そんなことはないと思いたいが、本当に「何もなかった」あるいは「仮にそういったことがあったとしてもまぁ仕方ないんじゃない?」と思っているとすれば。もちろん裁判は終わっていないので、「絶対あった」とは言い切れない。しかし、裁判所に行けば訴状とそれを紐づけるいくつもの証拠の資料、元職員たちによるハラスメント被害の調査報告などが閲覧できるのでぜひ見て欲しい。それでも、「なかった」と言えるならその根拠や考えを教えてほしい。別に「係争中」であろうが、そのシステムの外で、つまり私たちの生きた生活のなかで、仲間達を気遣い、自分の加害性/被害性を再度点検し、問い合い、高め合うことだってできるはずだ。
そういう対話の機会を経ずしては、僕はアメニティの実施には賛同できない。こんなこと言ってもちっぼけな声だけど、大切な人たちが集ってきた場だからこそ、再び集う人たちはよく考えてほしい。

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