【β版】千葉篤胤の転生記_08
胤頼(タネヨリ)は日胤(ニチイン)のいる八幡宮へたどり着いた。篤胤(アツタネ)は胤頼の中にいたままだ。八幡宮は各地に沢山あるらしく、日胤のいるのは石清水八幡宮で源氏ゆかりの神社らしい。八幡宮って神社だよね。なんでお坊さんの日胤がいるのか篤胤は胤頼に聞いてみたが100年以上前から徐々に神社と寺が一緒になっているところが増えてきて石清水八幡宮もその一つだそうだ。鳥居を超えて門番みたいな人にも特に顔パス感で通過してスタスタと胤頼は中へ中へと入っていく。でかい社の前にちょこんと一人立っているのが見えてきた。胤頼が篤胤にあれが日胤だよと伝えてくれた。
「兄様、お久しぶりです」
「やあ日胤、お久しぶりだね。相変わらず元気そうだね。僕の中にあの篤胤が今いるんだよ。どう?」
どうって胤頼が日胤に問うてみるも日胤はいつもと変わらない兄様ですよと笑顔で返した。篤胤は僕が見えるわけでもしゃべるわけでもないからそうだよなと思った。
「さてと、今日はかわいい日胤の顔を見たくなったことと同じくらい大事なことがあって」
篤胤は僕と日胤を遭わせる事の件かと思いつつ
「もうひとつは、今度はいつ頼朝様と会うのかを知りたくて来たんだ」
篤胤は僕の事じゃないんだね。そうかー、源頼朝と会うことは大事だよねと思いながら、ん?頼朝と会うってどういうこと?日胤が?どうして?と全く話が見えてこない。胤頼は篤胤に意識の中でなく、声に出して話し始めた。
「そうだったね。篤胤には言ってなかったね。日胤は伊豆に出向いて頼朝様の祈祷を年に何度かしているんだよ。そのお役目を前任の僧より引き継いで去年から行っているんだ」
篤胤は「この千葉一族、頼朝といまも繋がってるじゃん。えー」と思いつつ、下総でもそんな話一度も聞いてないと篤胤は胤頼にいうも、そういえば下総には言ってなかったかなーとの返事。胤頼としてはいちいち過保護的に日胤の仕事ぶりを伝えることもなく、日胤も下総とはほぼ胤頼を通じてやり取りをしているらしい。頼朝話もここ最近で篤胤がこの世界に来たから一族的にホットな話題だけど、それまではただの伊豆で幽閉されている人感だったようだ。とは言えこんな大事な事を下総の面々にも言わず、ここにもフラッと来た感で寄るとか言いながら、結構大事な事を抑えていってる胤頼を篤胤は喰えない奴と今更ながら思った。
「伊豆への出立は4日後です。篤胤の事も頼朝様に起こるであろうことも兄様の手紙で理解しております。頼朝様は穏やかな方でその様な大層なことを起こすとは思えないのですが。私なりに頼朝様のお心内を見て参りますね」
「篤胤」
と日胤は胤頼に向かって声をかけてきた。
「もし篤胤が私の中に入った折には初めに7番目ですと名乗ったほうがいいかしら」
篤胤はそれはいいです。大丈夫と語ると、胤頼が「それはいいってさー。って篤胤が言ってるよ」と日胤に答えた。
胤頼と日胤は少しばかり言葉を交わしたのち、胤頼は日胤に別れを述べ、来た道を戻っていった。帰路で胤頼は篤胤に賽の目は博打だけど願わないと叶わないよと呟いた。篤胤には次の目覚めの事を示唆していると感じた。