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頼朝の死_02 千葉純胤の時空移動

あっけらかんとしている常胤と師常を前に純胤は言葉を続ける。

「頼朝が落馬してそのまま寝込んでしまい、結局お亡くなりになってしまうんです」

「急っていや急な事なんで。まあ色々ばたばたと。嫡男の頼家が継ぎはしますけどね」

「話変わりますけど、やっぱりじいちゃんに似てますね。びっくりだ」

純胤はざっと話すと一息ついた。純胤の登場より頭の整理がようやく落ち着き始めたのか、師常が問い始めた。

「純胤と言ったな。貴方は未来から来たということか」

「そうです」

「歳は」

「十六です」

「父を『やっぱりじいちゃんに似てますね』と言ったな。篤胤と関係ある者か」

「篤胤にいちゃんですね。関係ありアリです。にいちゃんって言ってますけど関係は従弟です」

「篤胤が去ってから十五年程経つ。篤胤は従弟と言ったが歳はだいぶ離れているのか」

「そんなに。僕より六つ上です。こっちの時の流れとあっちでは違いそうですね。篤胤にいちゃんも、こっちに5年くらいいたようなんですけど、あっちでは一晩しか経ってなかったですね」

「篤胤にいちゃんは当時は大変だったんですよ。なんかご先祖と一緒にいただの頼朝を見ただのって。僕の親からはしばらくそっとしてあげなさいとか言って触れないようにさせてましたけど、家近くて面白そうだったんでしょっちゅう会って話いろいろ聞いてました。1か月もしたら落ち着きました」

師常は純胤は篤胤と違ってずいぶんとおしゃべりな性質だなと感じるも、未来で篤胤が元の日常に戻って暮らしているようだと知って安堵した。続けて師常は問い続けた。

「篤胤はわれ等兄弟に憑依してこの世にいた。しかし純胤、貴方は誰かに憑依したわけでなく未来からそのまま来たと見受けられる」

「そうなんですよね。篤胤にいちゃんから聞いていたのと違いますよね。憑依したことないからちょっと期待してたんですけど」

「ではその黒い衣は未来の装束か」

「これは学生服っていいます。学校っていう勉強をしに行くところに来ていく衣装です」

師常は続けざまに純胤に質問をしていった。純胤は篤胤からこの時代の事を沢山教えてもらったようだ。篤胤はどの時代かは別としていつか戻るかもと念望があったようでかなり千葉一族に関わりそうな過去の事を調べていたようだ。純胤はそんな篤胤と一緒に調べ物をしているうちにどんどん覚えていき、自身も過去への関心が高まったようだ。

「過去を調べるっていっても700年も前から現在までですよ。いや長い長い。御蔭で歴史博士になっちゃいました」

「こうやって過去へ来れたんで、これも運命なんだと思います。篤胤にいちゃんは千葉一族が進むべき道を伝えました。僕も今これからの事を伝えるためにきたんでしょう。きっと」

純胤はそこまで言った最中、純胤の周りに突如として濃い霞がかかり、ものの数秒で霞ごと純胤が忽然と消えた。常胤と師常は目を丸くして呆けてしまった。

そんなことがあった数か月後、頼朝は相模を訪れた際に落馬し、しばらく後に亡くなった。享年五十三歳だった。



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