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和田合戦_05 千葉純胤の時空移動

成胤は千葉館の奥にいた。

そこにはもう一人いた。

千葉一族の子孫である純胤だ。

「またまたお呼びいただき恐縮です」

いつもとおり純胤は微笑んでいた。純胤はいまはいつと尋ね、成胤は建暦三年の秋と答えた。

「なるほど。では和田家は…」

純胤は成胤へ事の顛末を聞かせてほしいと問いかけた。成胤は語り始めた。

「和田義盛殿は上総介が叶わなかったことや泉親衡が絡む騒動に巻き込まれたこともあり追い込まれていた」

「方々で和田義盛殿はなにかしでかすのではという噂はたっておった」

「結局、和田義盛殿は和田家郎党を引き連れ決起した」

「この決起には同族である三浦家も随従していた」

「和田一族は御所、北条義時邸、大江広元邸を襲撃した」

「しかし、御所では三浦家の離反に遭い、三浦義村殿の手によって実朝様は逃がされた」

「北条義時邸と大江広元邸は共に主がいなく留守預かりの者しかおらず、決起は不首尾となる」

「和田一族は翌日にかけて戦うも、実朝様が北条方に庇護された中での戦いでは御家人の誰も和田方には就かず、和田義盛殿含め方々で討ち果たされていった」

「ただ和田義盛殿の子息の一人である朝比奈義秀殿の一軍だけはなんとか切り抜け安房へと船で渡った」

「朝比奈義秀殿たちの消息は不明なままよ。探索するにも安房ゆえ、上総の常秀が動かねば探しようもない」

純胤は成胤にここまでの語りへのお礼を述べつつ、問うた。

「侍所別当として鎌倉の武を司ってきた和田義盛も遂に倒れましたか」

「丸二日にかかった合戦でしたが、僕の中で謎がふたつあります」

「まずひとつはこの合戦は三浦義村が裏切る裏切らないで結末は大きく変わりました。彼がなぜ裏切ったのかということがひとつ」

「もうひとつは成胤。貴方です。貴方はこの合戦にどう関わっていたのかです」

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