![見出し画像](https://assets.st-note.com/production/uploads/images/147102121/rectangle_large_type_2_53a1f4871132d6dad6eccc7e97221c2f.png?width=1200)
御霊憑依 ‐怨霊を獲る物語‐③【創作大賞2024 漫画原作部門】
-都内某区-
高層ビル群が並ぶエリアから少し離れたところに全く異なる自然が溢れる景観が広がり、その奥にひっそりと校舎が立っていた。
築はまだ新しめで周りの緑あふれる様相からは浮いている。
校舎の前面には校門があり「真保良学園」と看板に書かれていた。
真保良と書いて まほら と読む。
真保良学園は異能な少年少女たちが集い学ぶ出動に備える特殊校である。
-真保良学園某教室-
教室には机と椅子がそれぞれ6つずつ。
4人が座っていて2つは空席。左中右で前後の計6席だ。ちょうど真ん中の前後が空席になっている。
対面には教壇と一人の男性がいた。
男性はハツラツとした笑顔で目の前に座っている4人に声をかけた。
「おはよう!みんな。さあ元気よく出席取るか」
左前にいる女子生徒が男性に問うた。
「土御門(つちみかど)先生、いまこの教室に4人しか生徒いないんですけど出席いります?」
土御門と呼ばれた男性はA4サイズの出席簿を開きながら出席は大事だよと遮った。
「では出席とります!一番、葵(あおい)さん」
先程出席不要を提案した女子生徒がはいと小声目で返事をした。
「次は二番、三葉(みつば)さん」
左後にいる女子生徒がはい!と元気よく手を挙げて返事をした。
「では次は三番、夜叉(やしゃ)くん」
土御門は座っていない真中前席をみるも返事はない。
「引きつづき四番、夢魔(むま)さん」
土御門の視線はもうひとつの空席である真中後をみるがこれまた返事はない。
「気を取り直して五番、将胤(まさたね)くん」
右前にいる将胤がはいと返事をした。
「最後に六番、ナタリーさん」
右後にいる女子生徒がにこやかな笑顔ではいと返事をした。
土御門は出席簿を閉じながら、夜叉くんと夢魔さんは転校先で長引いてるから公欠扱いだねとつぶやいた。
引きつづき土御門は目の前の生徒たちに語らいを続けた。
「じゃあ今日の授業はこのまま開始しましょう。一限目は歴史です。歴史と云っても令和になってから続く摩訶不思議な現象の歴史だけどね」
教壇の土御門は続けた。
「そう、はじまりは令和に入って間もなくだった。当時はなにか突発的な興奮、意識障害、錯乱、幻覚などの神経症状に悩まされる人が多発してね」
「症状が狂犬病の傾向が見受けられたので、狂犬病でないにせよ何かのウイルスが発生したと考えられた。世間一般では新しいウイルスの発生と片付けることになった」
「とはいえ本当はそうじゃない。ここからが世の中で出てる話より深い話だ。君たちはここに通う経過で知ってきたことでもあるけどね」
「この現象にはウイルスとは違った症状が三つあった。一つは両目が朱くなる。まあこれ自体はそういうウイルスなんだろうと云える。問題は残り二つのほうさ」
「全員じゃないけど幾人かは昔のことをたどたどしく語るんだよ。昔といってもその人の幼少のころとかでない。生まれる以前のことでね。大体は数十年前から遠くて百年近く前のことだ」
「はじめは何かの集団催眠の類かとも検討されたが、それにしては個々の語りが別すぎてね。かつその昔の話が調べてみると合ってるのさ。なにか埋めた話なら掘ったら出てくるとかね」
「なにかしら昔の人の記憶を症状が出た人に継がれたということだよ。脳科学の見地からも検討されたがそんな綺麗に多数で伝播するのは可能と云えないとなった」
「そして残ったのが昔から伝わる『怨霊のとりつき』という考えでね。突拍子もないが説明自体は強引につく。ただし怨霊が本当にいるのかという事が議論の中心になった」
「時を同じくして『異能』と云われる人々も出没し始めた。こっちはもうハチャメチャさ。なんか気力みたいので物理攻撃できたり様々だからね」
土御門は話しているところに三葉(みつば)が割って入った。
「土御門先生はその『異能のはじまり』のひとりなんでしょう?」
「そうさ。僕の場合はある日突如目覚めたというか出たというか。。。しばらくは頭が混乱したよ」
土御門は笑いながら答えた。
「さて、この怨霊とりつきと異能者には共通点がある。ナタリーさん、なにかな?」
ナタリーと呼ばれた女子生徒は右手をビシッと挙げて元気よく答えた。
「年齢デス!」
「年齢は合ってるけどもう少し詳しく答えてみようか」
「この事象は十代しか出まセン」
土御門は正解!と言いながら柏手を打った。
「そうなんだよ。この事象はどちらも早くても十代前半に現れるも十代後半までには消えゆくんだ」
三葉が再び割って入った。
「でも土御門先生は二十歳を超えても異能者なんでしょう?」
土御門はてへへと照れ笑いしながら返した。
「そうなんだよ。なぜか僕は能力が消えなかった。そんな例は僕を含めて滅多にいない。レアものってことかな」
「まあ、ここまでの話を整理するとね『このウイルスもどきの事象は両目が朱くなる。それは怨霊がとりいたんじゃないか説』『同時期に異能者が複数出現する』『どちらも事象は十代しか出ない』という感じかな」
「それではどの様に怨霊だと定義できたのかに関する歴史を続けようか」
土御門は深呼吸をしたのち、語りを続けた。
「故人が怨霊になって取りついたであろうと定義するきっかけはある人物による」
「その人物は岩畔豪雄(いわくろ ひでお)と云って昭和の初めの頃にスパイ養成学校造ったり、アメリカとの開戦回避の交渉をしたりした人なんだ。彼自身は昭和の終わり前には亡くなっている」
「岩畔の怨霊が取りついた可能性があった人を隔離して政府内で質問調査を繰り返した」
「彼しか知りえないであろう話がいくつかあって、日本政府やアメリカ政府の門外不出の資料とも一致した」
「まあこのことを以て怨霊はあるだろう、そしてとりついていることが発生しているだろうとされたんだよ。実際にその後も質問調査をすると一致することが殆どだしね」
「しばらくは怨霊に取りつかれた人々は各所施設で隔離することになった。とは云え隔離する一方では施設の数も持たないし、そのうち狂暴な怨霊も出現するのも見受けられるようになってきた。なかなかの問題さ。どう解決していこうかを試行錯誤するのはのちの話」
「一方、異能者の度重なる出現はどうしようかとなった。このまま街中にほっておくわけにいかないしね」
「こちらは怨霊と違って日常生活を支障なく普段は暮らせるも、能力のコントロールも効かない。人によっては自ら能力を開放して暴れるものもいた」
「年齢も十代しかいないし、世に何千人と出現してる訳でもないし。そこでだ。急遽だけど異能者を集める施設をこしらえた。そして学校として運営していくとうことにしたんだ」
「それがこの真保良学園(まほらがくえん)さ」
土御門は更に話を続けようとしたが、1限目の終了を告げるチャイムが鳴り響いた。土御門はああ残念と呟き続きは今度と話を終え、教室を後にした。
この記事が参加している募集
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?