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【β版】千葉篤胤の転生記_15

ここは下総。いるのは胤頼(タネヨリ)意識内ではあるが。いまは下総にある千葉氏の館奥。胤頼の目の前にいるのは千葉氏当主の常胤。左横に千葉兄弟の長男、胤正(タネマサ)。右横に千葉兄弟の4番目、胤信(タネノブ)。そして胤頼(意識内に篤胤はいるが)の計4名がこの場にいた。常胤がまず口を開いた。

「胤頼、都でのお勤めご苦労である。久方ぶりよの。もう何年経つのか。ずいぶん立派になったものだな」

父上こそお変わりなくと定番な返しを胤頼はしていた。胤正はなぜ日胤を通じて源頼朝の近況を知っていたことを下総にちゃんと伝えなかったのかと胤頼を詰問始めていたがまあそれはと胤頼は流していた。胤信は源頼朝はどれくらいの強さなのかを聞くも日胤でもわかりませんぬと質疑が少々かみ合ってなかった。

「父上、兄上方にはさまざまなお考えはあるかとは思いますが、まずは胤頼の考えをお聞きください」

胤頼がそう言って話し始めた。胤頼は頼朝が挙兵する可能性がこの度の政変で出てきたことを伝えた。それだけ全国各地で軋みが出ているようだ。

とはいえ頼朝に必要なことが3つある。一つは挙兵する理由。もう一つは実行できるだけの兵力。そして本人の意思。どれが欠けてもできない。

最後の意思のところは何度か日胤が頼朝とは会っているが未だ視えないようだ。

挙兵する理由は平氏に対しての不満だとして自然発生的に大きくなるのか何か朝廷から宣旨が下るのかはこれまた不明瞭。兵力は伊豆にはないが、頼朝の奥方が北条氏なので、少しばかり北条近臣が参画するくらい。

となると篤胤から聞いた「千葉一族が頼朝と共に挙兵する」となると、結構千葉一族が兵力として担う部分が大きい。

但しこちらから頼朝の元へ海を大人数で渡るのは難しく,、頼朝の方から下総に来てもらうではとなる。また兵力も下総だけでは大兵力ではないので上総を加えてはじめて平氏と戦える規模になるのではというのが胤頼の見立てだった。

胤正は胤頼にいる篤胤に向かって、もう少しわれらが動けるような具体的な事を思い出せと指摘してくるし、胤信は胤信で、結局未来人の篤胤は剣が達者なのか腕っぷしが強いのかどんな奴だと聞いてくる始末。

いずれもどう答えていいかまごまごしている篤胤に対して胤頼がいいように返答していた。また頼朝だけ挙兵しても平氏方に集中攻撃を食らうので、その折は甲斐源氏はじめ各地の源氏側と連携を取り、平氏を囲むようにすることも重要と添えた。次に常胤が語り始めた。

「頼朝様の心中は頼朝様しかわからぬ。またどのような機運で立つべき時がくるかもわからぬ。われらにできる事は頼朝様が立たれる時に大きな力となれるよう準備をすることだ。そのためにも上総の力も必要になるであろうから、今一度広常には儂からも話をつけておくわ」

胤頼はさすが父上ですと持ち上げていた。


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