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千葉篤胤の転生記_05~治承・寿永の乱

篤胤としては頼朝が挙兵しないと千葉一族の動きようもないので、頼朝自身会って確かめるしかないだろうと考えた。結構無理難題な話かと思いきやそうでもないとのこと。

実は末っ子である日胤は石清水八幡宮という源氏ゆかりの神社で僧をしている。何故僧が神社?とは篤胤は思ったが、100年以上前から徐々に神社と寺が一緒になっているところが増えてきて石清水八幡宮もその一つだ。

源頼朝は石清水八幡宮から祈祷の為に年に何度か僧を呼んでるらしく、そのお役目を前任の僧より日胤が昨年より引き継いでる。

そろそろ日胤が頼朝のいる伊豆へ祈祷へ行く頃合いらしいので、そこに同行していれば頼朝と話すチャンスはあるかもしれない。

早速、伊豆へ行くメンバーとして胤通と、旅に慣れている胤盛が行くことになった。

伊豆へのルートだが、下総を出て上総から安房へ、そこから海路で伊豆へ向かうとのこと。篤胤がネットでみた頼朝脱出の正に逆ルートだった。でもそれは脱出だからと思っていたのだが、これがこの時代の全うなルートで千葉の房総半島に来るには海路がメインらしい。だから京に海路で近いほうが上総でその奥が下総となったようだ。

上総を通るので、その際にこの度の頼朝挙兵の可能性を遠戚である上総広常にもきちんと共有したほうがいいとなり、その説明がてらの旅路となった。頼朝挙兵時には上総の兵力無くしては成り立たないので今から通じておくことは大事である。常胤は先に上総広常に手紙は送っておいてくれてるそうだ。

下総を出立してその日の夕方前には上総へ着いた。胤盛は胤通(と篤胤)に語る。

「そろそろ国境ですね。あら、わざわざ広常様ご一行が来てますよ」

胤盛が少し上目で遠くを見た。眼前には少し丘になったところに騎馬に乗った数十名くらいの集団がいた。真ん中で一際大きい男がいた。あれが上総広常だと胤盛が話してくれた。

「胤盛!よくぞ上総へ。久方ぶりだな」


「広常様、お久しゅうございます。この度は大事な相談事で訪ねてきました」


「事前に文ではもらっておるが秘め事としかなく、直接は胤盛からと書いたてあった。前から常胤殿に願っている胤盛か師常を上総家へ迎えたい返事かと思い、いてもたってもおれなくなったわ」

胤盛はああまたその話かと困惑しつつ今日はそのことではない旨を広常に伝えると、急に関心が薄れたのか広常の顔つきが笑みから呆けめにかわっていた。

そんな広常を尻目に胤盛は人払いを願い、広常も応じて共の者たちをだいぶ後ろへ下げさせた。

「情報元は明かせませぬが、頼朝様が伊豆より蜂起する可能性が出てまいりました。父常胤としては、頼朝様蜂起の折には加わるつもりです。ただし頼朝様が挙兵となると広常様のお力が無ければ事は成り立ちませぬ。そこで広常様へ事あらば共に歩みたいという話をしにまいりました」

広常の顔が呆けからギラギラした顔に変わってきた。

「胤盛、これは大層な話をもってきたな。大事な事なので即答はできぬ。主旨はわかった。上総と下総が手を取り合って困難に立ち向かうことは本望。ただし頼朝様の父親である源氏の棟梁、為朝様が敗死して20年経つ。今更頼朝様が立ち上がるのかは甚だ疑問だ」

これより胤盛は安房を経由して頼朝へ会いに行くことも広常に伝えた。上総下総の命運を賭けれる御仁なのか、しかとみてきてほしいと広常は胤盛に言づけた。

もう日は暮れ始めたが、胤盛と胤通(と篤胤)は広常に別れを告げ、安房へと向かった。

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