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【β版】千葉篤胤の転生記_06

昨日は言いっぱなしでそのまま寝てしまったことに篤胤(アツタネ)はもうろうとしながらも申し訳ないとどうにか起きなきゃと頑張るも、呪縛ががった強制睡魔の仕組みともいえる強硬な流れには逆らえず、いつものように完全に意識が途絶えてしまっていた。そしてまたもやおかしいくらい意識だけは普通な目覚めから始まる。光景は2度ほどみたような草原で変に揺れるなと思ったら馬の上…

「はじめまして。おはようございます。」

またまた自分の中に語り掛けがくる。一度経験するとこれはまた先祖の誰かの体に入って元の人の意識もちゃんとある状態なんだなと理解できた。ただ肝心の誰かはわからず。どなた様でしょうかと問いかけてみると「胤盛(タネモリ)です。三番目です」とのこと。胤盛って僕をロジハラ的に迫った末に爆弾発言に追い込んだ人じゃないですか。今日は師常(モロツネ)と違って詰問オンパレードになるのかなと滅入るまでないけど、少しため息感になった。

「先日は畳みかけてしまい、失礼しました。よろしくない癖でして。ちなみにこの前の『この時代に来た意味発言』より2週間程経ちました」

そう一言添えてからはほぼ一方的に胤盛は篤胤にこの間のことを報告するが如く語ってくれた。「篤胤は未来人(みらいびと)or物の怪問題」は未来人として一同で同意、「頼朝挙兵話」はその折には千葉一族総出で加担する事と、その動きに対処できるように各人で情報収集と行動となったようだ。篤胤の発言を皆が受け入れた結果ともいえる。

「という訳で私は今からわれらが同胞である上総家に頼朝様に関しての相談事となり、上総へ向かっているのです」

篤胤は上総といってもあまりピンとこない。元の世界での生活圏じゃないし。千葉の下半分ですよね(若干安房もありますが)。千葉県内を旅行に行くとき行くところというイメージ。師常から「上総は広常ががっしりと構え、上総は東国一の兵力を持ち、広常自身が東国最強」とは聞いている事を思い出した。そのことを伝えたら胤盛はあらよくご存じでと返したあと、上総に行く理由を教えてくれた。篤胤の時代ではピンとこないが実は千葉は海路の便の故に伊豆はおろか京からも玄関口らしい。わざわざ下総からくることはないようだ。だから下なのに上総、上なのに下総なのかと昔学校で学んだようなことを思い出しながら納得した。頼朝挙兵の可能性を探るにしても上総が伊豆からの経路になるし、そもそも東国最大最強の上総家が加わる加わらないでは雲泥の差があると考え、胤盛が様子見に向かったようだ。

「そろそろ国境ですね。あら、わざわざ広常様ご一行が来てくれてますね」

胤盛が少し上目で遠くを見た。眼前には少し丘になったところに騎馬に乗った数十名くらいの集団がいた。真ん中で一際大きい男が広常なんじゃないかと篤胤は思った。

「胤盛!よくぞ上総へ。久方ぶりだな」

「広常様、お久しゅうございます。この度は父より預かっている相談事の件で訪ねてきました」

「事前に文ではもらっておるが秘め事としかなく、直接は胤盛からと書いたてあった。前から常胤殿に願っている胤盛か師常を上総家へ迎えたい返事かと思い、いてもたってもおれなくなったわ」

胤盛はああまたその話かと困惑しつつ今日はそのことではない旨を広常に伝えると、急に関心が薄れたのか広常の顔つきが笑みから呆けめにかわっていた。そんな広常を尻目に胤盛は人払いを願い、広常も応じて共の者たちをだいぶ後ろへ下げさせた。

「情報元は明かせませぬが、頼朝様が伊豆より蜂起する可能性が出てまいりました。父常胤としては、頼朝様蜂起の折には加わり、東国の地を自ら担ってまいりたい所存です。ただし、頼朝様が立つとなると、広常様のお力が無ければ事は成り立ちませぬ。そこで広常様へ事あらば共に歩みたいという話をしにまいりました」

広常の顔が呆けからギラギラした顔に変わってきた。

「胤盛、これは大層な話をもってきたな。大事な事なので即答はできぬ。ただ主旨はわかった。合戦は大いに望むところ。ただ明らかな負け戦はしたくない。西国平氏の世になって20年経つ。今更頼朝様が立ち上がるのかは甚だ疑問だ」

広常の答えは至極全うであるが、本人のやる気ベクトルは戦したいのほうのようだ。そのあとは広常と胤盛でここ最近の様々な動きや世情に対して意見交換かわし、話を終え、別れた。

帰り際、胤盛から篤胤に語り掛けてきた。

「遠い未来の世界にいる篤胤が頼朝様の蜂起を歴史の一つとして覚えてるくらいなら、きっと私の生涯で一番の大ごとが今から起こるんでしょうね」

篤胤はこれから起こる事への胤盛の決意がみえた気がした。




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