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実朝暗殺_02 千葉純胤の時空移動

純胤は続けて話した。

「では実朝が殺された日のことを伺いたいです。時は建保7年1月27日。鶴岡八幡宮の夜にて、実朝の官位就任参賀の折だったでよかったでしょうか」

相馬義胤は左様と返した。

「その参列に公暁が突如襲い掛かり実朝を惨殺したと。実朝だけですか?」

相馬義胤は太刀持ちの源仲章も一緒に斬られて亡くなったと添えた。

「公暁は斬ったままその場で取り押さえられたのでしょうか。逃げおおせたのでしょうか」

相馬義胤は逃げたと答えた。

「その後、公暁はどうなりました?」

千葉胤綱が割って入り、話し始めた。

「純胤。其方は未来からきたので事の動きは知っておろう。公暁は直後から実朝様の首をもったまま逃げおせ、三浦義村邸へ向かう途中で追手に誅殺されたわ」

純胤は千葉胤綱に説明の礼を述べつつ続けた。

「ここで幾つかの謎があるのです。先ずは公暁の立場です」

「公暁は実朝にとって兄である頼家の子。比企家謀殺の折に共に討たれた頼家の嫡子である一幡の兄だったと思います」

「兄だけど嫡子でなかった由縁は比企家の子である一幡と外戚の力の差ですかね」

「比企家の娘は正室ですか?」

相馬義胤は確か側室で、公暁こそが正室の子であったはずと答えた。

「なるほど。そうしますと公暁としては頼家死後は実朝でなく本来自分が征夷大将軍を継ぐべきという強い願望はあったかもしれませんね」

「公暁はいきなり鶴岡八幡宮に乱入したわけでなく、そもそも鶴岡八幡宮の別当。いわば八幡宮で一番上の役職にいたとのこと。合ってますか」

相馬義胤は合ってると返した。

「ならば公暁からするとまんまと自分の庭に実朝が行事でほいほい来てくれたということですね」

「公暁は式の最中、実朝を討ってから源仲章も斬っています。ここで謎です。源仲章は何故討たれたのでしょうか」

千葉胤綱は巻き添えにでも食ったのであろうと答えた。

「巻き添えを食うにしても順番があります。公暁と実朝の関係を考えますと公暁の最大の目的は実朝の首」

「源仲章が先に斬られたのなら巻き添えかもしれませんが、公暁としては本懐を遂げているのです。その後逃げていることから、2人目の殺害も目的のひとつと推察されます」

「ここでまた謎が発生します。源仲章は太刀持ちの役目を担ったのは当日であったと伝わっています」

相馬義胤は確か鶴岡八幡宮参詣に供奉していた従弟の大須賀道信から、当日の役務変更でどたばたがあったと聞いていたと添えた。

「義胤。それはだれがなぜ替わったのでしょうか」

相馬義胤は述べた。

「そう...北条義時殿が太刀持ちであったが、気分が優れなくなり北条邸へ帰ってしまった。太刀持ちの務めを急遽、源仲章殿が担う事になった」




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