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実朝暗殺_03 千葉純胤の時空移動

純胤は重ねて話を続けた。

「そう。もともと太刀持ちは北条義時でした。それが当日に体調不良で参詣を欠席し、源実朝と源仲章が殺されてしまったのです」

「公暁は源実朝と北条義時の二人を標的にしていたのではないでしょうか」

千葉胤綱は二人を狙うとしても、そもそも北条義時でなく源仲章だった可能性はどうだと純胤に問うた。

「なかなか鋭い視点ですね。しかし源仲章は文官。誅殺したところで公暁に益があるとは考えにくい。まあなにか秘密を握られていて口封じしたかもしれませんが」

「ここは2人目として北条義時も共に討ち果たしたかったと推測します」

「とはいえ実際には狙った北条義時は急遽参詣を取りやめています。これは偶然なのかはたまた事前に察知していた故の振舞だったのか。この点は後程」

純胤は一度呼吸を整え、また語り始めた。

「さてここからはまた新しい謎です。公暁は実朝を討って自分が頼朝・頼家・実朝ときて次は自分が東の王になるべきと思い至った故の行為だったのでしょう」

「しかし実朝を討ち取っても、じゃあ北条義時が次の将軍として公暁を受け入れるか」

承服できないでしょうと相馬義胤は返した。

「そうですね。北条義時からすると実朝は姉である北条政子の子。外戚故の権力でもあるのです」

「公暁とは頼家が同じく北条政子の子であるも、その息子となると血筋も離れます」

「そもそも北条義時が支えていた実朝の命を奪われて推せるわけがない」

「では公暁が実朝と北条義時を排して組むべき勢力はだれか」

「公暁の母は足助家です。清和源氏の流れである足助家ではありますが、さほど勢力を築いていません」

「ただ『外戚』は母方の家だけではないです。乳母の家も外戚の一人です」

相馬義胤はハッとして呟いた。

「公暁の乳母の家は確か三浦家...」

「そうです。これがもう一つの謎である『公暁が三浦義村邸へ向かった』へと繋がるのです」

「公暁は三浦義村と申し合わせてことに及んだのか、公暁の選択肢として三浦義村を頼ったのかは判りません」

「ただ公暁の心中に『公暁-三浦義村体制』があったからこそ、三浦義村邸へ向かったと思われます」

「これが謎です。三浦義村は公暁が惨殺に及ぶことを知っていたのか知らなかったのか、実朝と北条義時が葬られる世を望んでいたのか望んでいなかったのか」

「今のところ、重要なカギとなる可能性の人物として『北条義時』『三浦義村』の2名を挙げました」

「さてここから謎の解明に移りたいと思います」

「実朝暗殺とは誰のために為されたのか」




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