君に贈る火星の
「純胤、聖徳太子のエピソードで『あまの原南にすめる夏日星 豊聡にとへよもの草とも』って和歌を詠んだけど、夏日星ってなに?」
従弟の純胤は篤胤に言った。
「篤胤兄ちゃん、それは火星の事だよ。江戸の頃までは『夏日星』って呼んでたらしいよ」
純胤が云うには古来より夏日星と呼ばれていたようで、火星が接近した年には夏日星を用いた俳句や短歌を都度詠まれたらしい。明治初期には西南戦争で亡くなった西郷隆盛を偲んで『西郷星』とも呼んでいた様だ。
篤胤はふと想った。近づくってどういうこと?純胤が「地球と火星の公転周期が倍ほど違うことにより2年2か月に一度追い越すからその時最も近づく」と説明してくれた。篤胤は判った様でモヤモヤした。
篤胤はふと考えた。「すめる夏日星」って人じゃないのかと。
純胤が云うには火星が時折童子になって人と遭遇するという設定なので、そんな和歌になったらしい。
そりゃ西郷も火星になる訳だ...
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