【ネタバレあり】映画「バクテン!!」 見どころ徹底紹介!!後編
こんにちは!
元男子新体操全日本チャンピオン、現在はアメリカでシルクドソレイユのパフォーマーをしています、井藤 亘です!
昨日公開したネタバレ解説(前編)はいかがでしたか?
今日はいよいよ最終日!
みなさんお待ちかね、「男子新体操あるある」の答え合わせを行います!
みなさんが発見したものと同じものはあるかな…?!
では早速スタート!
男子新体操あるある
さて、皆さんお待ちかねの答え合わせの時間がきました!
前回の記事で、「この映画には男子新体操あるあるがたくさん詰まっているので
、ぜひ見つけてみてください!」ということを書きましたが、見つけられましたか…?
男子新体操をしていた人ならクスッと笑ってしまう。
していなかった人なら「これって普通なの?」と疑問に思ってしまう。
そんな男子新体操あるあるを、映画の中から厳選して五つご紹介いたします!
1、扉の隙間から見える相手チーム
アオ高がインターハイの会場に着いた時、シロ高は練習をしていましたね。
その姿を体育館の扉の隙間から見るアオ高の部員たち。
これ、あるあるです。
新体操の大会には、「本会場」と「サブ会場」の2つ会場があります。
本会場は本番の演技をする会場で、サブ会場は本番前の練習をする会場です。
サブ会場の扉は開けっ放しにされていることが多いので、そこを通るたびにどこかしらのチームが練習をしている姿が目に入るわけです。
なぜかわかりませんが、会場の扉の隙間から見る相手チームってすんごく上手に見えるんですよね。
上手に見えるというよりは、上手なチームの雰囲気に見えると言ったほうが正しいかもしれません🤔
当然、自分たちもそう見られたいので練習を頑張るのですが、外の目に意識がいきすぎて全然集中できず…。
というのが、大会初日あるあるです。
経験を積めば積むほどこういったことはなくなってきますが、経験が浅いと自分の気持ちをコントロールするのにも苦労します。
ということで、選手の試合会場でのメンタルをまとめると↓
3流は人の演技に魅了され
2流は人を魅了しようとし
1流は何も気にしない
といった感じになります。
1流の選手は誰を見るでもなく、誰に見られようとするでもなく、ただただ淡々と自分のやるべきことをこなします。
こうなるためには、相当な量の鍛錬と経験が必要です。
2、演技直前に先生からのメッセージ
インターハイの本番直前、志田監督が一人一人に声をかけているシーンがありました。
これ、新体操あるあるです。
一人一人に声をかけるか、全体に声をかけるかといった多少の違いはありますが、あんな感じで演技前に「監督からの最後の言葉」をいただきます。
ちょうどわかりやすい動画があるので、僕が大学4年生の時の本番前の様子を皆さんにご紹介します。
0:10~
監督が全員に話をした後に、一人一人に何かを伝えているのがわかりますか…?
列の最後尾に並んでいる、当時キャプテンだった僕に監督がくれた最後の言葉は、「お前に任せた。」でした。
この一言だけで「よっしゃ、やるぞ。」と気合いを入れられる監督の力…
まさにマジックですね。
3、倒立の失敗の仕方
亘理、インターハイで倒立に失敗してしまいましたね…
亘理には申し訳ありませんが、あの倒立の失敗の仕方、本当にリアルでした。
あの失敗の仕方もあるあるです。
亘理の失敗の仕方はこうでした。
1:左手が前に1歩出る
2:おなか側に倒れそうになる
3:どうにか倒立の姿勢に戻そうとする
4:戻しすぎて背中側に倒れる
倒立は、一回バランスを崩してしまうと、元の姿勢に戻すのがなかなか大変…。
前に1歩出ただけでこらえられたら良かったのですが、崩れたバランスが元に戻ることなく、亘理はみんなより早く前転(背中側に倒れる)してしまいました。
もちろん、倒立の失敗は減点がされます。
亘理の場合、
1、1歩歩いた
2、バランスを崩して肘を曲げた
3、他の人とタイミンングが合わなかった
の3つの要素に対して減点がされます。
細かい点数を把握できていないので申し訳ありませんが、あの失敗でだいたい0.3〜0.5くらい、もしくはそれ以上の減点がされるのではないかと思います。
新体操は、「18.225」や「17.675」という細かな点数で競われる競技なので、それを考えると、この減点がどれほど大きなものかがわかるでしょう。
4、靴下に何塗ってるの…?
3年生が引退した後の練習シーンで、翔太郎が靴下に何かを塗っていましたよね…
僕、このシーンを見たときに「こんなことまで再現しなくても😂」と笑ってしまいました笑
翔太郎があの時塗っていたのは、「炭酸マグネシウム(通称タンマ)」と呼ばれる滑り止めの粉です。
器械体操の選手が粉を腕に塗って真っ白にしているシーンを見たことがある人もいると思いますが、翔太郎が塗っていたのはまさにその粉です。
新体操は靴下を履いて演技をします。
靴下とフロアの素材(目の深い絨毯)はあまり相性がよくなく、あまりグリップが効きません。
動きの中で走ったり跳んだりするためには、足がしっかりと地面と噛み合っている必要があるため、滑らないようにああやって粉を塗るわけです。
とは言えど、ああやって手で靴下に塗り込むタイプの選手は割と少数派なイメージが僕の中にはあります。
多くの場合は、靴下を履いた状態で粉をつけてフロアとなじませます。
翔太郎、いい感じに新体操に染まってきてますねぇ…笑
5、久しぶりの新体操キツすぎ
受験勉強に取り組んでいた3年生3人が久しぶりに練習を再開したら、全然体が動かず苦しんでいましたね。
これ、本当にあるあるです。
体操は何と言っても感覚が命。
ほんの少し筋力が落ちたり、ほんの少し体が硬くなったりするだけで感覚が変わり、いつも通りに技ができなくなります。
いつも通りに技ができなくなると、いつも以上に筋力を使ったり、バランスを取ろうとしたり…
普段とは比べ物にならないほどの体力を消耗するのでキツイんです。
僕は仕事上ほぼ毎日体を動かしていますが、たまに1週間ほどの長期休みがあったりします。
休み期間には走ったり筋トレをしたり、体を鈍らせない努力はもちろんします。
しかし、バク転やバク宙の感覚や筋力は、バク転やバク宙をすることでしか鍛えられないので、どれだけトレーニングをしても体って鈍っちゃうんですよね…
そうなった体が元々の状態(いつも以上の疲れを感じなくなる状態)に戻るまでは、大体2週間〜1ヶ月はかかります。
歳を取れば取るほど、ブランクが空けば空くほど、それは長くなります。
彼らはまだ高校生だから大丈夫ですが、社会人になってからの復帰はやる気・根性・一緒にする仲間がいない限りはなかなか難しいですね😅
小さな少年の存在
さて、あるあるはここまでにして…
映画の中に、おかっぱ頭の小さな少年が出てきましたね。
「男子新体操がカッコよくて、バク転をしてみたい!」
無邪気にそう話す少年の姿はとっても可愛らしかったです。
彼は「今回の映画に欠かせないキーパーソン」と言っても過言ではないほどの存在だと僕は思っています。
なぜなら、彼がいることによって翔太郎たちは自分の価値に気づき、彼がいることによって志田監督や馬淵監督の言動・行動に深みが増すからです。
今回の映画の中では、「誰が誰の心に火を灯したのか」ということが各キャラの口から語られていました。
美里は志田監督を見て新体操を始め、マシロは美里を見て新体操を始めた。
そして、志田監督は生徒の姿を見てもっと新体操のために動こうと決意し、少年はアオ高の演技を見てバク転をしてみたいと思った。
そしてマシロがこんなことを言っていましたね。
「遠く離れたくらいじゃこの火は消えないよ。」と。
誰しも「新体操を始めたきっかけ」というものを必ず持っていて、そのきっかけとなった人(心に火を灯した人)が必ずいる。
自分の心に火を灯してくれた人を必死に追いかけていると、気づけば自分が火を灯す立場になっていたりする。
そうやって新しい選手がどんどん生まれてくるからこそ、元選手たちは、新しい選手たちの将来を明るいものにしなければという責任を感じるのです。
馬淵監督は志田監督の進退について、アオ高の生徒にこう言っていました。
「彼がすることは、もしかしたら君たちのためにはならないかもしれない。でも、君たちよりもっと若い選手や、これから新体操を始める選手のためにはなるはずだ。」と。
「男子新体操の普及」と口では簡単に言っても、それが何年かかるのか、そもそも普及させられるのかなんてことは誰にもわかりません。
しかし、誰かの心に火が灯っている限り、可能性は0ではありません。
最後まで諦めずに一丸となって頑張っていきたいな、と改めて僕の心に火を灯してくれた「バクテン!!」という素晴らしい作品に感謝いたします。
終わりに
最後までお付き合いいただいた皆様、本当にありがとうございました!
そして何より、僕にこの記事を書くきっかけを与えてくださった制作陣の皆様、本当にありがとうございました。
試写会が始まってからというもの、知り合いの感想ツイートを見るたびに僕はこのタイミングで映画を見にいけないことに対してやや寂しさを感じていました。
しかし、制作陣の方のご厚意によって作品を拝見する機会をいただき、こうしてレビューまで書かせていただけたこと、本当に感謝しております。
男子新体操への愛がたくさん詰まった「バクテン!!」という作品が大好きです。
男子新体操が大好きです。
もっともっと多くの人にこの作品が届きますように。
もっともっと多くの人に男子新体操の素晴らしさが届きますように。
2022年7月10日 井藤 亘
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井藤 亘(いとう わたる)🇺🇸
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