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あと少し

換気をしていながら授業をしていると、いきなり授業妨害が入る。

そいつは、何の前触れもなく現れる。

不規則に動きまわり、やりたい放題。

やつはあざ笑うかのように、こう言う。

「それでは皆さん、さようなら。」

さんざん暴れまわって、あっという間に去って・・・。

「ゴン・・。ブーン。ゴン・・。」

くれない・・・蜂。

あんなに細いスキマから入ってきたのに、帰るときは透明なガラスに何度もぶつかり四苦八苦。

器用なのか、不器用なのか。

近づいて窓を開けるが、思っている方向とは逆に飛び、なかなか外に出てくれない。

「いやいや、そこじゃない。」

「あと少し・・・。」

「あと少し、右に飛んでくれれば出れるのに。」

むしろ、「ここにいたいのか?」とさえ思えてくる。

ん?

こんなものなのかもしれない。

蜂は必死に出ようとしている。

あと少し・・・なのに・・・。

それに気づかず、また違う方へ。

自分にもあったかもしれない・・・。

あと少し頑張れば、突破できたこと。

正面突破して打ち破ることばかり・・・。

そして諦めてきたこと。

本当はもっと違う破り方もあったのかもしれない。

「もう少しだ。頑張れ。」

やっと外に出た蜂は果てしない空へ帰っていく。

それを見送りながら、自分に言い聞かせる。

もう少し、頑張ってみるか・・・。


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