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スーダンの混沌、「欧米的民主化」の限界(前)


スーダンがとんでもない混沌に陥っている。

軍と、その傘下に属する準軍事組織
(即応支援部隊、以下RSF)の対立から始まった混沌は、双方が全く関係ない外国人も含めて
無差別に攻撃し合う、というおよそ近代の紛争では
なかなか聞かないレベルの無秩序状態に陥った。

今回、前編では事実を要約してお伝えし、
後編で僕の私見をお伝えすることが出来ればと思う。


そもそもこの2つの組織の対立は
どこから始まったのか。


スーダンにはバシール大統領という独裁者がいた。
しかし2019年、物価高騰等をきっかけとして起こった
市民デモが発端となってクーデターが発生。
バシール大統領が失脚する。

軍は民主化勢力との共同統治に合意するも、
対立は深まり、2021年10月に再びクーデターが発生。

この後国連の仲介も得ながら民主化への道を
歩んでいく中で、軍とRSFが対立した。

その対立が、ここ数日制御不可能に
なっているというわけである。

そもそもRSFは、ダルフール紛争という、
世界最大の人道危機と呼ばれた紛争をきっかけに
生まれた民兵組織に端を発している。
(この紛争で30万の命が奪われた。)

この紛争が西部で起こったことから、
元々は西部にある一民兵組織だったが、
今や10万人が所属し、各地に基地を持っているという。

民主化への道のりの中で、軍とRSFの統一を進める
過程において、権力闘争が発生、
双方が市街地で暴れ回る事態になっているわけである。

ここまで見れば、軍におけるトップのポストを
得るための闘争という、よくありがちな話に見える。

しかし実態はそうシンプルな話では無い。
こうして互いが争うことで、共通の利益が生じる。

民主化の動きを止めることができる、ということ。
長期的にこの状態が続けば、民主化の流れは
完全にストップする。
暗黙のうちに、互いがこの共通利益を
見出しているようだ。

そう考えると、互いが誰彼構わずに
襲撃している理由も理解ができる。

結局は、長年にわたって民主化を望み続けている、
スーダン国民達が最も不利益を被る。

これが長期的に見た時の1番の懸念点と言える。

そして短期的に見た時の懸念点は、人道支援の停止。

在留外国人が続々と退避をしていることから
分かるように、海外の人間が人道支援の為に入国する事すらままならない状態になっている。

また、RSFの拠点であるダルフールから、民間人が
大量に難民として流出する可能性も考えられる。

当然周辺国も難民を受け入れるような余裕は無い。
人道支援の方法の再考慮は急務と言える。

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