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Twitterでアカウント作ってカスタマーサクセスについて呟いてたら9ヶ月後に妻がカスタマーサクセスに転職してた話


カスタマーサクセス職に就いている方の悩みの1つに「カスタマーサクセスという職種を家族が理解してくれない」というものがあると思うのですが、私の場合、私から説明する前に家族である妻がカスタマーサクセスに転職するという珍しいことが発生してしまいました笑。

そこで今回は妻の体験をベースにあくまで私視点で、カスタマーサクセスへの転職ストーリーの一例、そして未経験から転向を考える方向けにカスタマーサクセスのキャリアや転職の注意点等について思ったことを書いておきたいと思います(1万2千字あります)。

この記事は下記3話構成で成り立っております。

第1話:私がSNSでカスタマーサクセスについて呟きまくってた話
第2話:妻がカスタマーサクセスに転職した話
第3話:2つの体験から見えるカスタマーサクセス転職の注意点とキャリアについて

それではどうぞ!

◆第1話:私がSNSでカスタマーサクセスについて呟きまくってた話

自身に突然起こったカスタマーサクセスへの転身

私は新卒から2018年の半ばまでコンサルティングやそれに関連する営業に携わっていたのですが、2018年の途中から急遽社内でカスタマーサクセスチームへと異動することになりました。会社としてSaaSに注力、またSaaSの中でも特にカスタマーサクセスに注力する意思決定がなされ、私含め複数の人間が当時立ち上げたばかりのカスタマーサクセスチームへと異動になりました。

当時の自分はカスタマーサクセスとカスタマーサポートの違いもわかっておらず何をするのかも殆ど分かっていなかったのですが、自分のキャリア的信条として

1.自身の貢献を最優先
2.新しい挑戦は躊躇しない
3.訪れた機会にはとりあえずYes

という3つを大切にしていたので、気づいたら異動してカスタマーサクセスの渦中で右も左もわからず実務に携わっていました。

調べれば調べるほど面白いカスタマーサクセス

それからというもの実務で日々お客様と接しまたそのサービスのレベルを上げるための組織的な取り組みを行う傍らで、サブスクリプションおよびカスタマーサクセスについて青本や関連記事を読み漁りました。その過程で「カスタマーサクセスって概念、これはかなり面白い!ってか深い!」と思うようになりました。特に面白いと感じたのが

・技術/サービスの変化により必然的に産まれた概念
・サブスクリプションビジネスにおける事業の根幹を支えている
・やるべきことの幅も期間も長く多様な機能と戦略性が求められる

という点です。つまり一時期的な流行やバズワードではなく、今後十数年にわたって企業活動において重要視されるべき概念がここに詰まっていると感じたのです。しかも日本ではまだあまり浸透していない。そういった点から自分がこの領域に取り組むことの面白さを見出したのでした。

情報収集のための情報発信

せっかくまだ日本で広まっていない概念なので、どうせやるならと思い「日本でカスタマーサクセスといえば」の何名かには自分も想起されるくらいになりたいなと思いました。となればまずは最新の情報に常に触れている必要があるなと思ったのですが、実は私は情報収集が大の苦手。

そんな自分でも勝手に情報が入ってくるような仕組みを構築せねばと思い、まず自分がカスタマーサクセスについての実務情報を発信することで、自然と自分の元に情報収集を行うことにしようと思い立ち新たに作ったのが今のTwitterアカウントでした。

ここで日々の自分のカスタマーサクセスの試行錯誤を呟きまくることで、イベントや書籍の情報などを仕入れることができるだろうと考え、自分の経験や試行錯誤を1日10ツイートすることを目標に運用を開始しました。開設から1年経った今では1000人以上の方にフォローいただき、結果的に当初の目論見通りカスタマーサクセスに関する知見が自然と入ってくるようになってきたのでした。

そこから色々な縁があり、カスタマーサクセス関連のLT大会に登壇したり天下一武闘会に出場したり、noteを書いたりと様々な広がりがあったでこの情報発信、またそれに付随する活動はやっていて本当によかったなと今振り返っても思います。インプットとアウトプットというビジネスで成長するための基礎中の基礎をたくさん実践できるのでとてもオススメです。

因みに天下一武闘会に出た話は下記。

◆第2話:妻がカスタマーサクセスに転職した話

妻が転職について考え始める

さてそれとは全く別軸の話として、私がアカウント開設して2ヶ月後くらいのタイミングで、同い年の妻が転職を考え始めて私自身も相談に乗るようになっていました。妻のそれまでの経歴をざっくり書くと

1st(新卒):クッキングスクールの先生
(~結婚・上京~)
2nd:IT企業の総務・システム担当
3rd:金融ベンチャーの総務・システム・採用事務担当

という感じで、1stキャリアを除けば主にバックオフィスでの実務経験が長くなっています。そして会社の事業状況の変化などもあり当時勤めていた金融ベンチャーから別会社へと転職を考え始めたのがまさにこの時期のことでした。

妻からの相談

主に相談された内容、というか聞いた内容はこんな感じでした(その時勤めていた会社を辞めようと思った理由は様々かつ個別事情なのでそれは割愛し次どんな職業に転職するかという観点です)。

相談1:もう少し仕事のウェイトを上げたい
相談2:このままのバックオフィスのキャリアに一抹の不安がある
相談3:30歳も目前なので職種も含めた転職はラストチャンスかも

相談1:もう少し仕事のウェイトを上げたい
元々妻がバックオフィスの業務に就いていたのは本人として「定時で帰りたい」「料理や洗濯などを自分できちんとやりたい」という2つの希望があったからでした。仕事が忙しいために家が散らかっている、みいなことになるのが嫌だったそうで。

ただし、数年バックオフィスの仕事する中で夫婦2人分の家事ならそこまで時間を取られない、数々の文明の利器により家事負担もかなり抑えられるということに気づき、それだったらということでもう少し仕事のウェイトを上げて自分なりのキャリアを築いていきたいという思いが強くなったということでした。

余談ですが、妻の信条として「パートナーの身にはいつ何があるか分からないので、何かがあっても最低限1人で生きていける状態でありたい」が確固たるものとしてあると何度も聞いていました。相手に依存しないといけないから一緒に居るというのは嫌らしく、依存しなくてもいつでも独立出来る状態だからこそ安心して一緒に暮らしていけるとのこと。かっこいい。

相談2:このままのバックオフィスのキャリアに一抹の不安がある
この不安は当時の金融ベンチャーでの採用経験から来るものだったそうです。当時様々なポジションの採用をかけていたそうなのですが、営業やカスタマーサポートなど様々なポジションを募集していて、ベンチャーということもあり採用にはそれなりに苦戦していた中で、バックオフィスのポジション、特に管理職の求人に異様に応募が殺到したそうなのです。しかも候補者のどの方もバックオフィスの管理職経験が長い(20~30年以上の)方ばかり。この現象を目の当たりにして、当時妻が思い描いていたバックオフィス業務で管理職を目指すというキャリアパスに不安を覚えたそうです。

まずバックオフィス業務はそもそも事業会社として人を増やす傾向にないので1人か2人程度(役員+自分みたいな感じ)で回すことが多い。そうすると管理職も何も管理する人が居ないので万年プレイヤーになるケースが多い。

しかも仮にそういう管理職的なポジションがあったとしても世の中にはその辺を多数経験して、株主総会対応やグローバル対応も数々こなしている方がたくさんいらっしゃる(しかも求人に殺到するくらいなので供給過多気味)と考えると、その辺をこなしたことがない(そして当分こなすこともない)自分の経験値では太刀打ちできない。

何より、当時から労務総務系はどんどんシステム効率化が叫ばれていて、5~10年の中期で見ればシステムの移行も含めて重要性は高いものの、20~30年で考えた時に単純作業系の業務はどんどん機械化されていくと考えるとそもそもその時に総務や労務で管理職的なポジションがあるとは到底思えない。特に総務は小さい会社では社内で「何でも屋さん」になりがちなので、特定のスキルや強みも身につきづらい。こういった要因に3の年齢的要因が重なり転職を真剣に考え始めたとのことでした(あくまで妻個人の見解です)。

Twitterを妻にフォローされる

当たり前ですが私は妻のキャリアを一個人として尊重しているので、全力で応援するというスタンスのもと、一方でこれは妻が自力で挑戦したほうがよい(また本人も手助けされるのを好むタイプではない)と思い、転職活動そのものの推移は陰で見守るという距離感を保つことにしました(=具体的な会社の紹介とかはしないという意味)。

そんな矢先に転職活動中の妻から「あ、そういえばTwitterフォローしてみたよ」と聞いたので飲んでたお茶を思わず吹いてしまいました(これだけ書くと何だか怖く見えるセリフですw)。この時点では別に大した動機ではなく「普段1日10ツイートとか言ってるけど何呟いてんのかなって思ったんだよね」くらいの気持ちだったそうです。

実は当時、妻には自分の社内異動については「カスタマーサクセスとか言っても100%伝わらないだろうなと」と思い「コンサルティングじゃなくてソフトウェアの方に携わることになった」くらいにしか伝えていませんでした。なので最初は多分「カスタマーサクセスっていうんだ、ふーん」位にしか捉えてなかったんじゃないかと思います。多分アカウントを見ても何のこっちゃという感じだったんじゃないかと。

転職活動の進捗を聞いてみた

しかしそれから数ヶ月経ち、妻に「転職活動は最近どう?」と聞いてみると「今3つくらいの職種で迷ってんだよね。①バックオフィス系リーダーか②営業か③カスタマーサクセスなんだよね」とのこと。なんとその候補にカスタマーサクセスが入っていたのが個人的にはびっくりでした。

というのも普通に転職エージェントに相談していると、オススメの職種としてカスタマーサクセスを推されるとのとこでした。もちろんバックオフィス畑が強かったのでバックオフィス関連の求人紹介が多いものの、それ以外でとなると営業、そしてカスタマーサクセスの紹介が多いらしい。勝手に「妻と自分の仕事は領域としては被らない」という思い込みがあったので、そこに見慣れた名前があったことに驚きを隠せないという感触でした。

加えて普通に転職活動をしていても紹介や求人がある程度にはスタンダードになりつつあるんだなというのがもう1つの発見点でした。いずれそうなるとは思っていたものの予想より早いなと。

因みに当時の迷ってるポイントを聞いてみると「総務系リーダーはそもそも総務が微妙と思って転職活動始めたのに…感があるんだよね。リーダー的なことやれないと転職する意味はないからそれは最低限なんだけど、この領域で本当に良いのかなって。営業はたくさんの人と会って悩みを色々と聞いたりしないといけないのが大変そう。うだうだ悩んでる人見てるとスパっと決めろよって思っちゃうタイプだから耐えられないかもw。カスタマーサクセスは今後伸びていくから良さそうだなと思うけど、それはそれで人に会う事多いし、長く人と付き合うのとか得意じゃないから不安…」みたいな感じでした。

バックオフィス歴が長かったせいか、顧客の前に立つ、いわゆるフロント業務そのものへの転向に不安を感じているようでした。

急に「青本と赤本って持ってる??貸して!」

それからまたしばらく経って、妻から夕飯の時に急に「カスタマーサクセスの青本と赤本って知ってる?来週の面接までに読んどいたほうがいいです、って言われたんだけどもし持ってたらと思って」と言われて(まじか?割と真剣に進んでるやん…)と更に驚きました。もちろん2冊とも持っていたのでその場で渡しました(その後しばらく返ってきませんでしたw)が、意外な展開に内心ドキドキでした。

その頃から、急にカスタマーサクセスに関する質問が増えたり、私の同僚でカスタマーサクセスに携わっている人にも色々と質問したりということが増えました。どうやら真剣にそのキャリアを考えている模様。どんな仕事なのか、具体的に何をやっているのか、大変なことは…そういった質問を繰り返していました。

というのも当時は選考を色々受けていても、ステップが先に進むのがカスタマーサクセス系の職種が多かったそうです。やはり総務に対して思い入れを失っていることや、営業の場合は経験者が多いがゆえに、未経験で受け入れてくれる企業があまり多くなかったこと、そして何よりカスタマーサクセスの募集が伸びていることなどが背景にあったそうです。

まさかのカスタマーサクセス職に内定

そんなこんなを経て最終的に内定したという知らせを聞いたのが12月。内定先は人事・労務系SaaSのカスタマーサクセス職でした(しかも私の所属する会社で導入しているSaaSという)。

とても身近なサービスのカスタマーサクセスになるというのは驚きがある反面、一定の納得感もありました。というのはSaaSでカスタマーサクセスとして欲しいタイプの人材って2パターンあって、

パターン1:カスタマーサクセス経験者
パターン2:提供SaaS領域の実務経験者

なんですよね。例えば弊社のUSERGRAMでもCS経験者はもちろん大歓迎ですが、カスタマーサクセスに携わっていなくてもデジタルマーケティングの実務をやっていましたという人はカスタマーサクセスの経験者並みかそれ以上に歓迎だったりします。

結局サクセスするために伴走する顧客がデジタルマーケティングの実務担当者だったりするので、その方の環境、悩み、あるある等を理解できる人だと圧倒的にサクセスする確率が高まる。そういう背景もあってSaaSのカスタマーサクセスで実務領域の経験者を求める気持ちは痛いほどわかるので、妻がこれまで実務経験者としてやってきた労務や総務領域のSaaSのカスタマーサクセスに転向するというのは、私としては想像だにしていなかったのですが、言われてみればとてもフィットするし妻のこれまでの経験も活かしつつさらにキャリアアップの可能性が開ける道だったので、素晴らしい選択だなと傍観者ながら感じたのでした(余計なアドバイスとかしなくてよかったと心の底から思いましたw)。

この「労務総務プレイヤー職」→「人事労務SaaSのカスタマーサクセス」という妻の転職に、私のTwitterでの発信とかがどれくらい影響していたかは知る由もありませんし別にそういう意図は全く無かったのですが、多少なりとも影響はあったのだろうと思っています。何よりこうやって発信し続けることで直接的であれ間接的であれ身近な人にも興味を持ってもらったり、関心を持つ人が増えることは幸せだし嬉しいことだなと一連の体験を通じて感じたのでした。

バックオフィスからカスタマーサクセスに転職してどうだったか

今、転職して数ヶ月以上経っているので、改めて転職してどうだったかを妻に聞いてみたのですが、それも興味深い内容でした。

感想1:数字や改善が好きという強みが活きる
妻は元から数字周りや改善すること、効率化することが得意だったそうなのですが、総務時代はそういうことを活かせなかったそうです。総務の場合、経営指標という意味で明確なKPIを持てなかったりするので、結果的にいかに効率よく仕事を終わらせるか、くらいしか仕事のモチベーションや目標を持てなかったが、カスタマーサクセスの場合は明確な数値やKPIが設定されているので、やればやるだけ評価されるのが転職してよかったと感じる点だそうです。

また改善や効率化が好きという強みについてもより活きるようになったそうです。総務時代は、改善や効率化の提案をしても短期的にコストを掛けられなかったりという理由で実施されなかったりしたことが多かったそうです。やはり会社としてもそこを変えようという意識を割ききれなかったりするため、どうしても後手後手に回ることが多い。一方でカスタマーサクセスは顧客が変わっていくことにどんどん対応していかないといけないので、変化が当たり前。その中で改善や効率化をすればするほど成果が数字となって現れるしそれが評価に直結する。

総務職だと数字や効率化と言った話があまりなかったのが、カスタマーサクセス職でとても重宝されるようになったのが、転職してよかったと感じることの1つだそうです。

感想2:人が増加傾向なのでマネジメント関連のチャンスが多い
30代以降の転職だとマネジメント経験を問われることが多くなってきますが、カスタマーサクセス組織が短期間に拡大しているところも、良かった点の1つとのこと。

前述の通り、総務はそもそも人が増えないみたいな話があるので、5年間働いてみたけどマネジメントのマの字もなかった。一方でカスタマーサクセスの場合、組織が拡大していくのでそういったチャンスがどんどんと降ってくる。そういった経験をいきなり直接的にではないにしても関わっていくことができるのは、ポジティブな側面の1つみたいですね。

感想3:世話焼き係になりがちな総務から明確なスキルを付けられるように
総務時代は、役員の秘書でもないのに秘書的なことをさせられたり、社内の不具合を何でも対応させられたりと何でも屋、世話焼き係になりがちだったそうです。しかもそういう仕事を引き受ければ引き受けるほど、評価に繋がらない雑務がどんどんと自分のところに舞い込んできて積み重なってくるというジレンマがあったため、いかに引き受けるかではなくいかに断るかが業務の主軸だったそう。結果的にスキルとしても特定のものが伸びるということがなく、便利屋的なポジションになってしまうのが悩みだったそうです。

ただカスタマーサクセスに転職してからは、仕事をやった分だけ顧客の価値や成果につながるし、それが評価につながるという正の循環がある。またその中で、顧客対応や知識、また社内管理といった特定のスキルを身につけられるので、何でも屋だったあの頃に比べると、とてもやりがいを感じるとのことでした。

◆第3話:2つの体験から見えるカスタマーサクセス転職の注意点とキャリアについて

カスタマーサクセス転職の注意点

さて、最後に妻のカスタマーサクセス転職話を聞いていて感じた、カスタマーサクセス転職における注意点みたいなものを忘れないうちに書いておこうと思います。

注意点1:マネジャーはマネジャーじゃない
カスタマーサクセスってSalesforce発祥なのですが、そこで「Customer Success Manager」という呼び名だったがために、求人でもそのままのポジション名で募集されていることがよくあります(略してCSMともよく言いますよね)。で、これ紛らわしいと個人的には思うのですが、Managerという呼称でも、管理職を意味するところのManagerではないことが多いのでご注意ください。

これ実際妻に聞かれました。「これポジション、カスタマーサクセスマネジャーってあるけど管理職ってことなの?」と。上記の話をして会社に確認してみたほうが良いよと伝えたら「まじか。助かった。」と感謝されました。

海外では~~Managerという呼び名で、その仕事を行う人というニュアンスになります。Customer Success Managerだと「顧客のサクセスを管理・創出する人」という意味合いでしょうか(あまりニュアンスに自信はありませんが)。他にもAccount Manager、Sales Managerといった呼び名があったりしますよね。それと同じです。

もちろん実態として給与評価・採用権限のあるマネジャーを指すこともあると思いますが、そうでないケースもそれ以上にありますので、求人ポジションについてはよく確認しましょう。

注意点2:名ばかりカスタマーサクセスにご注意
別にダメだという意味合いではないのですが、昨今カスタマーサクセスという概念が流行したことで、企業の中でも既存の組織をとりあえず名前だけカスタマーサクセスに変えるという動きがあったりします。この場合はカスタマーサクセスという名前ではあるものの、実態としては旧来のルートセールスやカスタマーサポート部門と実業務は変わらないというケースが非常に多いので、ご注意ください。

もちろんカスタマーサクセスとカスタマーサポートやルート営業の違いを熟知した上で、本当はカスタマーサクセス的な動きを組織としていきたいけどいきなりは変えられないのでまずは名前だけ変更した、今後数年かけて変わっていきたいといった事情の企業もたくさんあります。なので、まずはそういう事情もあるよということを踏まえ、一概にカスタマーサクセスという名称だからといって青本や赤本にあるようなことを実践できている企業ばかりではないことを考慮し、業務内容やKPIについては個別の会社毎に確認されるのがよいかと思います(別にカスタマーサクセスに限ったことでははありませんが)。

注意点3:人数規模とフェーズ、ビジネスモデルによって全然違う
実際にカスタマーサクセスをやっていたとしても、どんなサービスを扱っているのか(BtoCかBtoBか、業務効率系か業務創造系か、SMB中心かエンタープライズ中心か)によって全くやることは変わってきます。

また立ち上げフェーズで1人で何でもやらなきゃというフェーズもあれば、一定組織が立ち上がってその中の定まった部分だけをやるというケースもあり、この辺は一口にカスタマーサクセスと言っても業務の幅が広かったりするので、その企業が今どのフェーズで今後何に注力したいのか、ということもきちんと確認されるのがよいかと思います。

実際にカスタマーサクセスに携わっていると、絵に描いたようなことばかりではまったくなく、顧客との根気強い対話、メールの読解、サポートドキュメントの整備など地道で泥臭い作業が大量に待ち受けていたりします。そういう事も踏まえ、どんな実務に携わることが多くなりそうか、きちんと確認した上で職を選ぶのが良いかと思います。

カスタマーサクセスの魅力とは?

色々注意点は書きましたが、個人的にはカスタマーサクセスは職種としても今後伸びていくと確信しております。最後にそう思っている理由・魅力について書いて本記事は終わりにしようと思います。

魅力1:今後絶対的に需要が高まる
世の中には抗えない流れというものがあります。それは「便利になる」ということです。自動車の発明により馬車はほぼなくなりました。インターネットの出現で新聞やラジオは淘汰されつつあります。手元でインターネットを楽しめるスマホは爆発的に普及しました。人間は便利になるということには長期的には抗えない生き物です。

今訪れている便利化の流れの1つがサブスクリプション、そしてクラウド化です。初期費用を抑え、止めたい時にいつでも解約できるというサブスクリプションの形態は、莫大なシステム初期投資をするオンプレミス型よりも圧倒的に便利です。便利なものは確実に広がっていきます。SaaSは人手不足を解消する1つのソリューションとしても注目されているので、日本での流行スピードは更に早いのではないかと考えられます。

そしてこのビジネスモデルが普及すると、確実に事業の論点は新規獲得から既存のLTV向上へと移ります。人口減少が叫ばれる日本では特に顕著になるはず。そう考えると、既存顧客への活用を促進するカスタマーサクセスの役割の重要性は否が応でも高まらざるを得ません。これがカスタマーサクセスが職種として伸びていくと感じる大きな理由です。

魅力2:複雑性と長期性が織りなす難しさ
カスタマーサクセスはただ単に1顧客だけサクセスさせせればよいわけではなく、それらの知見を展開して他の顧客のサクセスにも貢献することが求められます。またそういった顧客群を管理しながらチャーンやアップセルといった経営指標をコントロールする役割を求められるので、非常に難易度が高いです。関連する社内要素も多いし、顧客も多い。

さらにカスタマーサクセスが他の職種と違うのは、圧倒的な長期戦であるということです。例えば新規営業であれば、言葉を選ばずに言えば売って終わりなわけですが、カスタマーサクセスは売ってからが始まり。長期間の顧客との関係性をどのように築くかというのは複雑ですが、それ故に仕事として取り組む上では非常に面白いトピックだと思います。

魅力3:顧客の成功を最優先に考えられる
カスタマーサクセスの魅力はなんと言っても「顧客の貢献を最優先に考えることが許される」ことだと思います。転職動機でもこれを上げる人が圧倒的に多い気がしています。

もちろん全ての職種で貢献の要素はありますが、営業職の場合は同時に売上を見たり、カスタマーサポートは同時に応答率を見たりと、それ以外の要素が大きい、また実務レベルでコンフリクトするケースもあります。

カスタマーサクセスでそういうコンフリクトが無いかと言われるともちろん無いとは言い切れませんが、チャーンやアップセルをマネジメントするにもまずは何より顧客の成功やロイヤルティが無い限り発生し得ないので、大部分の思考やリソースを顧客の貢献に向けて使えるというのはカスタマーサクセスの特徴だと思います。

魅力4:様々な職能・企画~運用を幅広く体験できる
カスタマーサクセスというとフロントの業務のイメージが多いかもしれませんが、顧客と相対する業務ばかりではありません。顧客に広く機能を知って頂くセミナー開催の機能が必要だったり、いつでもお困り毎を解決するためにウェブサイトやチャットの運用が必要だったりします。それ以外にも顧客の動きを察知するデータ関連の分析や整備(いわゆるOps、オプス、オペレーションと呼ばれる領域)もあるし、顧客同士のコミュニティを構築するコミュニティマネジャーのような職能もあります。

顧客と相対する業務も、スペシャリストとしてテクニカルなサポートをすることもあれば、顧客の業務を幅広く理解し業務提案することもあるしと、その幅はかなり広いです。

加えて今カスタマーサクセスは立ち上がったばかりで未成熟な企業も多いので、運用するだけということはおそらく少なく、新しい企画を立ち上げたりということが多いのもその特徴の1つです。自分で新たに企画を考えて顧客への価値提供を行いたいと思っている人にはぴったりだと思います。

もちろん1人で上記すべての職能に関われるわけではありません。最初は自分の経歴やスキルも踏まえて、特定の部分でキャリアをスタートすることが多いと思います。しかし、全ては顧客のサクセスのためのジャーニーのための行為であり、そのどこをどう担当するかでしかないので、1つでの部分で得た知見や経験は他のカスタマーサクセスの領域で応用が効くものになっています。もし仕事を進める上でもっとこういう仕事に携わりたいと思った時にカスタマーサクセス内なら融通が効くことも多いので、それらはカスタマーサクセスという領域の大きなメリットだと思っています。

魅力5:比較的育児しながらでも働きやすい
上記の通り、カスタマーサクセスは顧客と相対する業務ばかりではなく、サイトの運営やデータの管理といった機能も非常に重要な役割を果たしています。こういった部分は、個別の顧客の対応の影響を受けづらく自らのペースや計画に沿って進行しやすかったりするので、育児しながらでもバリューを発揮しやすい領域なのかなと思っています。

例えばコンサルだと、どうしても報告会前日は徹夜作業になったり、インタビューのある日は夜まで稼働が続いたりと育児と両立するのは難しいと思います。またフロントに立つ営業とかも「明日までに至急◯◯が欲しいのですが」などと言われると、どうしても対応が必要になってきたりするケースは現実的にはあり、育児しながら価値を出しやすい業務とはあまり言いづらいかなと思います(他の職種とあまり比較できておらず申し訳ないですが)。

その点でもカスタマーサクセスは、育児ならではの「決まった時間、特に昼が稼働の中心になる」「子供が熱を出したなどの緊急対応もある」という状況でも安定して価値を発揮しやすい領域の1つなのかなと思っています(そして育児中でもそういった部分で価値を出している人は復帰した後にめちゃくちゃ強い)。

以上、妻の転職経験を元に考えたカスタマーサクセスのキャリアと転職についてでした。

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