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恐竜の骨、死んだ蝉

夏休みらしいことがしたいという両親と共に何十年ぶりかで博物館に行った。
本当は孫と共に来たかったんだろうと思うと胸が痛いが、仕方ない。

三連休の中日だが、皆遠出をしているのか、激混みを覚悟していたが意外とそうでもない。

久々に数多の化石や、骨や標本を見ていると、
心が落ち着く。

彼らが生きていた時、同種族間でもちろん社会があり、個性があり、各自のドラマがあったのだろうが、どいつもこいつも死んでいて無個性である。

イケメンマッチョでモテにモテた恐竜もいただろう。
持病や奇形やイケてない顔やボディゆえに、のけものにされて、子孫を残せずひとりで死んでいったものもいただろう。
他の個体を過剰に虐める攻撃的なやつもいたろうし、
俺たちはいつまで種を残せるだろうって抜きん出た脳みそで憂いたやつもいたかもしれない。

化石になりゃバカもヤクザもブスも天才も努力家もみんな平等に抜け殻だ。
生前どんなやつだったかなんてどうでもいい話だし、知る由もない。

ホッとする。
私もいつかただの沈黙した骨になれる。

セミも好きだ。

地面に落ちているセミ。
頑張って鳴いてるセミ。

いけてるセミもいけてないセミもいるだろう。
あいつの声マジでダッセェよな、
とバカにされてるやつもいれば、
おれもあんな素晴らしい声に生まれてりゃ
いい女を抱けたのに、と涙をのんでいるやつもいるだろう。

私にはどれも同じに見える。
道端でへばっているカラカラの死体は、コピーアンドペーストでしかない。

私も、そんなふうに、なんの情報もないボディになりたい。

5世紀後くらいに、
荒廃した地球に降り立った異星人ファミリーが、
私の頭骨を発掘して、
へーこんな猿がいたんだねって夏休みの自由研究に持って帰ってくれたら、
嬉しいかも。

読んでくださってありがとうございました。

夕方、ほんのり涼しい風がふくようになりましたね。きっと暑さもあっという間に、冬になるでしょう。
頑張りましょうね。



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