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第4話 新たなチャレンジに向けて      (時代の潮目 なぜDAOなのか)

 退職を部門内に伝え、社外の取引先へ挨拶周りを初めた。誰もが私は転職先を決めた上で退職するのもだと思って、どこに行くのか訊いて来る。 決まっていないということは、受け入れない雰囲気さえある。いわゆる常識から外れているのだろう。しかし、普通とか他人の想定通りとなることに抵抗感が強い私は、実際に決めていなかった。 先に触れた通り、人生における新たなチャレンジに向かうタイミングだっただけだ。

<社内でできなければ社外でチャレンジ>

 大手企業を通じて、民間外交の端くれのようなことは出来たし、気になっていた若手の育成も一定の区切りが付けられた。次のチャレンジの機会を社外に求め飛び立つ。 私が所属していた航空宇宙業界は、良くも悪くも色んなことに縛られて身動きが取りにくい環境にあった。業界は第二次大戦後から続く欧米中心の構造で、機体・エンジンの認証制度、安全基準、情報セキュリティ、サプライチェーンの全てを握られている。仮に日本の企業が新たな技術を見出したとしてもそれを評価するのが、米国や英国企業。技術の内容、安全性を証明する責任を負うためすべて吸い上げられてしまう。もしくは開発の途中段階で共同開発に切り替えられてしまうなど、牛耳られたままである。民間エンジンも日本国内の航空会社だけでは開発費も回収できないことから、欧米をはじめとする航空会社に採用される飛行機メーカーに採用されなければならないため、主導権を取れない構造なのだ。防衛に至っても、日米の入り組んだ協定の中で、様々な買い物を強いられている。しかも
技術の核心部分がブラックボックスとなったままの購入品も存在する。斯様な業界構造に長くいると思考が硬直化しかねない。ゼロベースで物事を考える風土が醸成されないからである。私は、既定路線を敢えて別の思考法で観察し、抜本的な改革が出来ないか妄想することをいつも心掛けてきた。組織というものは今までの継続が一番居心地が良いものである。特に大きな組織の中間管理職にとってはなおさらである。大きく変更することは前向きなチャレンジというよりリスクであったり、計画外の予算発生と看做される。更に、中間管理職は経営陣への説明責任が新たに発生することから、器のある人間でないと否定的な対応になる。トップダウンには強いがボトムアップには弱い中央集権型の組織構造が大半であり、旧態依然とした大量生産大量消費の産物だ。

時代の潮目が来た

資本主義経済がもたらした環境破壊や格差拡大などの弊害に対する疑問の声が叫ばれて久しいが、非中央集権型の運用を可能とならしめるPublic Blockchain(分散型台帳管理)を活用し、本来のデータ保有者であるべき個々のユーザーが管理できる技術の展開と、お互いに多様性を認め合い共に協力・支援していく社会の実現を示すweb3という概念が急速に市民権を得つつある。 中央集権に依存せずに、各ステークホルダー全員の参加の下に全体に好循環をもたらす新たな組織(分散型自律組織=DAO)への移行を試みる取組みや法改正が検討されるようになっている。 理想論を語るだけではなく、周辺技術が共創型の社会の実現を可能にし得るほどに成熟してきたことから、こうしたweb3社会への動きを見過ごすことは出来ないと感じた。 
 具体的にどのように貢献できるのかは解らなくとも、行動を起こしながら消化していくしかない。
 最近のアンラーニングという言葉がメディアで踊っているが、私は企業人生をずっとアンラーニングを繰り返しながら歩んできたと言える。JOB型のスペシャリストではないが、アンラーニングの専門家かもしれない。ChatGPT等のAI技術の進展で、例え専門性があるJOB型であっても多くのホワイトカラーの仕事の定義は大きく変わるであろう。 さまざまな不測の事態が派生する現場において総合的な観点から臨機応変かつ的確に判断し行動できる倫理観と想像力を兼ね備えた人間力が必要だと感じている。そこにこそ我々が人間らしくもA技術と共存できる道筋があると考えている。

前号 ↓
https://note.com/wataridori_btc/n/ne57950e63c82

次号:「web3へ参加する」を近日中に掲載します。
https://note.com/preview/n031910c2a681?prev_access_key=2c21c6dd1ccf3f396c56b097f174f0fc


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