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インプロライブで「ペーパーズ」をやっている理由

ロクディムでもヒトリワタリでもメインコンテンツに置いている「ペーパーズ」というものがある。

《ペーパーズとは?》
本番前にお客さんに小さな紙を渡し、そこに書いてある質問にたいしての答えを書いてもらう。
質問は「あなたの大切な人に言いたいひと言」「小中学生の頃の自分に今だから言えるアドバイス」「先輩や上司に言いたいこと」などなど。書いてもらったらその言葉が見えないように2つに折って返してもらう。
本番時。
書いた紙をステージに撒き、即興で芝居している最中、紙に書いてあるセリフを自分のセリフとして使用していく。


当然、いま立ち上がっている物語とは全く関係のない言葉が書かれている可能性が高いがそれをなんとかつじつまを合わせていくもの。(※合うのも合わないのも楽しんでもらえるコンテンツ)

このペーパーズ、長年ライブに取り入れております。ロクディムではもう必須のものとしてやっております。

このペーパーズ、いったいどういう流れで取り入れたのか?またなんで今もやっているのか?などワタリ的に考えていこうと思います。


もともとは俳優のトレーニング

「良いセリフを言わなきゃ!展開しなきゃ!」って頭で考えてしまう俳優へのサポートとして「困ったらここに書いてあるセリフを読んでね」という安全装置としての役割だったと認識している。

それをライブでやるようになったのはずいぶん前。ロクディムの母体である東京コメディストアジェイからだと思う。なのでロクディムとして動くようになったときには当たり前のようにライブに取り入れていた。

昔は「なんでも良いのでひと言書いてください」という感じでやっていた気がする。
でも、それだとその時流行っているギャグだったりお客さんからの「このセリフ果たしてどう使うよ!?」っていうイジリのような言葉が出てきた。
当然、演者は困る。その困ったプレイヤーを観て笑う、楽しんでもらうというスタイルの即興も、ある。

しかし、ワタリたちはそういうものをやりたくはなかった。
たぶんそういうのが得意じゃなかったんだと思う。
そしてその領域ではお笑い芸人さんには敵わない。
だからワタリたちがやらなくても良い。

そもそも「お客さんが書いた言葉を上手に即興で取り入れてます!」とドヤ顔したいわけじゃないし、慌ててる様子で笑いを取りたいわけでもない。

で、じゃあ何でペーパーズをやっているのか?なんのために?

コミュニケーションが取りたい。繋がりを持ちたい

まず大きい目的としては

ライブの中で使う言葉が欲しいっていうのもあるけど、なによりも来てくれた皆さまに関わりにいきたいという気持ちがあった。

コミュニケーションを取りたい。繋がりをもちたい。

これから即興するワタリたちと観に来てくれた人たちの境をできるだけ薄いものにしたかった。

ここらへんの観に来てくれた人への関わりへの模索は2011年、ロクディムがジャパンツアープロジェクトとして日本全国にライブを届けます!という企画からはじまった。
このツアーは福島からはじまった。
震災の影響がまだまだとつてもなく大きい場所で即興でコメディをすること。
その意味や意義を頭でなく肌で感じて考える時間だった。
そこでこのペーパーズを書いてもらうために直接関わりにいくことが、ワタリたちにとってとっても大事なことになっていった。

そしてここで「なんでも良いのでひと言!」でなく「大切な人へ伝えたいひと言」や「3年前の自分へのアドバイス」などの質問を考えていったんだと思う。

僕たちのライブのためでもあるけれど、それを超えて自分の人生に関わりのある「誰か」や「自分自身」について想いを馳せる時間を提供したかった。

そういう時間が積み重なっていまのペーパーズがある。

数あるインプロゲームの1つだったものが、積み重ねによって想いのある大きなコンテンツへとなっていきました。
だから、できるだけ書いてくださった言葉を大切にしたい。
適当に処理したりするような即興にはしたくない。してはいけない。

観に来てくれた人のパーソナルな言葉、奇をてらったものでなく誰かに対しての想いのある言葉を知りたいし、手書きで書かれたその文字は、その人の人生においての「なにか」が少し紙に記される。

その言葉を感じて即興する。

その言葉があったから生まれた即興の、その日でしか作り得ない物語。
そういうのがロクディムもワタリも好きなんだと思う。

ペーパーズをやっているのには、そんな理由がある。

またヒトリワタリの歴史の中では「ペーパーズに頼ってるんじゃないか?」という疑問が自分の中に生まれた時あえて「ペーパーズ禁止」という状況にしてライブを開催していた時期もある。(※それくらいペーパーズって魔力がある)

それを経た後、ペーパーズがあってもなくても自分の中では何も変わらないような軸ができた。

それは選択肢の1つになった。

そうすると自分についての課題めいたものでペーパーズをやる・やらないというよりかは観に来てくれたお客さんにとってあったほうが良いかどうか?という視点に、今はなっている。

あと、真逆なコンテンツでもう一つ、サイレントというものもある。言葉を使用しないもの。これもまた面白いんだ。

これについてもまたいつか書きたい。

シアターは変化する場所。
ペーパーズもサイレントも磨いていって変化、進化させていきたいなって思う。

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