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細かすぎて伝わらないインスタアカウント解説【北欧、暮らしの道具店】(112万フォロワー)

今回は、【北欧、暮らしの道具店】のインスタグラムアカウントの運用について細かすぎるぐらいに解説していきます。

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このアカウントは、2014年5月22日に開設したそうです。

運用開始から7年余りで、投稿数が驚異の1.2万件。
毎日、1日4〜5投稿している計算になります。この投稿数を維持し続けている企業アカウントは他にほとんどありません。

フォロワー数は112万。
2020年初には87万だったようなので、この1年半で+25万の成長。とどまるところを知らない成長率。

さて、本アカウントについて

・プロフィール
・フィード投稿
・ストーリーズ投稿
・リール投稿
・IGTV

という5つのトピックについて、順番に解説していきます。


プロフィール

まずはアカウントのトップ画面・プロフィールから確認していきましょう。

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アイコン画像はモノクロの線画でかなり地味です。
通常はストーリーズなどで目立つために視認性の高い色付きのアイコンが推奨されますが、【北欧、暮らしの道具店】の場合はブランドが確立されているので、これでも問題ないんでしょうね。

メディアのコンセプトを表す「日常にひとさじのワクワク」というコピーが美しい。その後に、公開を控えた映画の告知が続きます。

プロフィールURLをクリックすると、Instagramからのアクセスのためのページを閲覧することができます。

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この遷移先ページに関しては、少しUXデザインの改善余地を感じました。
バナーの文字が小さく、ぱっと見て何のためのページなのかが分かりづらいですね。その下は商品一覧ですが、「Instagramに登場した商品」が80ページも続くので、お目当ての商品を見つけづらくなっています。

意味のないバナーは削除する、ページ上部に検索窓を設置する、カテゴリ別ページにすぐに遷移できるようにする、特に購入して欲しい商品を固定バナーで宣伝する、などすると、よりInstagram経由の売上が伸びそうです。
もっとも、このプロフィールURL経由の売上は、投稿ごとのショッピングタグ経由の売上に比べると少なく、改善優先度が低いのかなと思います。それでも月に(少なくとも)10万アクセスぐらいはありそうですが...。

ハイライトの上位には映画の告知と、アプリの告知が並びます。注力している施策が非常に明確なのは【北欧、暮らしの道具店】の特徴だと感じています。

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僕はずっと【北欧、暮らしの道具店】のLINE@に登録しているのですが、そちらでもアプリダウンロードを毎日のように催促されます。ECサイトでもアプリへの導線が目立っているんですよね。
目先の売上も大事ですが、長期的な成功のためのKPIを愚直に追いかけている姿勢がうかがい知れます。

以上、プロフィールの考察でした。

「やるべきこと」と「やらなくてもいいこと」が、ブランドの世界観に基づいて綺麗に切り分けられており潔いです。


フィード投稿

「白」や「グレー」を基調とし、そこに鮮やかな挿し色が入るような色使いでまとめられており、非常に統一感があります。
商品、食べ物、人物、風景など、被写体が様々なのでリズムがあり見飽きません。ついついスクロールしたくなるようなグリッドです。

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直近の投稿のうち、投稿時間が確認できるものをチェックしてみました。

8時、9時、10時、11時、11時、13時、18時、18時、20時、22時、23時

バランスよく、ユーザーがアクティブになる時間帯に分散させて投稿をしていることが分かります。

時間帯ごとに投稿内容を切り替えていて

・家事がひと段落した午前中には「実用性の高い商品紹介」
・帰宅中や食事中には「じっくり見たくなるオリジナル動画」
・就寝前には「ライフスタイル提案型の商品紹介」

というふうに、ユーザーの生活時間に寄り添った投稿を意識しているようです。

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最近のフィード投稿をカテゴリ分けすると

・雑貨
・アパレル
・レシピ
・コラム

の4種類に分類できそうです。

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平均的なエンゲージメント率はフォロワー数に対して0.4%ぐらいだと推測します。フォロワー数が多すぎるので仕方がないですが、やや低い印象。

【レシピ】は安定して「いいね」が多く(おそらく「保存数」も多い)、「私も作ります!」といったコメントも付くようなスターコンテンツ。
一方、【アパレル】は波がなくあまり「いいね」がつかないコンテンツです。それでも2,000いいね前後は安定して獲得していますが。

【雑貨】は紹介されるアイテムによって大きなブレがあり、人気商品や便利さやおしゃれさが直感的に伝わりやすい商品だと10,000いいねを超えるようなものも。
そして【コラム】が非常に特徴的で、通常「スタッフのコラム」のようなコンテンツはエンゲージメントがあまり伸びないのですが、【北欧、暮らしの道具店】では10,000いいねを超えるような投稿もあります。ユーザーから愛されるスタッフがいる証。

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各フィード投稿のうち、ECサイトでの取扱商品を掲載している画像には必ずショッピングタグが付いています。

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ショッピングタグをクリックすると、ECサイトの各商品ページにリンクされていて、Instagramからシームレスに商品の詳細確認と購入ができるようになっています。お手本のような導線設計。

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【北欧、暮らしの道具店】の投稿の大きな特徴の一つが、キャプションのテキストです。
「メディアEC」のパイオニアらしく、Instagramの投稿にもしっかりと編集された文章が添えられています。

驚くべきは、ECサイトの商品ページと、テキストがまったく異なること。
商品ページでは軽妙かつ読み応えのある文章で商品の魅力をじっくり丁寧に伝えていますが、Instagramはキャプション内に画像が入れられないこともあり、より簡潔に商品の特徴を伝える努力をされています。

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Instagramのためだけの細かい編集努力に脱帽...。

ハッシュタグも細かく設定されています。
直近10投稿の平均設定個数は23個でした。上限が30個ですから、常に上限まで付けることはないものの、積極的に活用されていることが分かります。

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左側の表は、直近10投稿の使用回数ごとのハッシュタグ種数です。
どの投稿にも付けているハッシュタグは8種類で、それ以外のハッシュタグは投稿ごとに使い分けています。1度しか使っていないハッシュタグも多く、投稿ごとにしっかりハッシュタグの設定を吟味されていると言えます。

右側の表は、直近10投稿すべてに付いていたハッシュタグ一覧です。
「北欧」「暮らし」「シンプル」といったキーワードが【北欧、暮らしの道具店】の投稿コンセプトであることがうかがえます。

コメント対応はすべてのInstagramアカウントが参考にしたいぐらいに素晴らしい。商品数が多く、担当者も複数いるかと思うのですが、質問者が知りたいであろう情報を詳細に返答しています。

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ここまでがフィード投稿についての考察でした。

何か特別なテクニックを使っているようなことはなく、ひたすら真面目に、丁寧に、やるべきことを毎日しっかりとやっているだけのようです。
この運用を実現するための体制と仕組みこそが、【北欧、暮らしの道具店】の一番の強みでしょう。


ストーリーズ投稿

ストーリーズ投稿も普段は積極的にしているようですが、今日(日曜日)はお休みのようで、1投稿もありませんでした。

ハイライトを見てみましょう。

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先述の通り、トップは映画『青葉家のテーブル』の告知でした。
次いでアプリの告知。「WEBサイトにはない『お気に入り機能』付き!」という、既存のサイトユーザー向けの分かりやすい訴求がいいですね。

次が「本日の新商品」。ここの最終更新が13週間前なのが気になります。上スワイプすると、この13週間前の新商品「アルネ・ヤコブセンの置き時計」の商品ページに飛びますので、単純に最新情報に更新されていないようです。
ここを毎日見に来て新商品情報にアクセスする人は少ないと思いますので、このハイライトは削除してしまっても良さそう。

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つづいて、Webメディア業界に衝撃を与えた、【北欧、暮らしの道具店】セレクトの音楽プレイリスト。これも16週間前の最終更新で「春ももうすぐ目の前」という季節外れ感が気になってしまいます。
プレイリストは毎月1度ほど更新されているようですが、それをハイライトに反映するスキームが整っていないのかな。もったいないですね。

次の「本日の再入荷」も33週間前で更新が止まっています。
その次の「読みもの」も同様ですね。

ここまで見てきても分かる通り、ハイライトは過去のまとめがプロフィール上部に固定で残ってしまう関係で、定期的なメンテナンスが必須の施策です。
特に「再入荷」「プレイリスト」などの情報は、ここからアクセスできれば利便性を感じてくれるユーザーが多そうなので、更新する仕組みを運用の中にしっかりと取り入れられると良いですね。


リール投稿

リール投稿はこれまでに29投稿ありました。どれも30万再生前後で安定していて、良くも悪くも波がありません。
そこまで積極的に活用しているわけではなさそうですね。

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全体的に「リールでバズらせるために作りました!」というコンテンツは少なく、あくまで【北欧、暮らしの道具店】の世界観の中で、(一部は過去のコンテンツを流用して)制作しているものが多かったです。
リールは最初の2秒でアテンションを取れるかどうかが非常に重要ですが、それを意識したコンテンツはまったくなかったです。

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リールにもショッピングタグが付けられるようになりましたが、それはしっかりと活用されています。どちらかというと(珍しいケースですが)既存のフォロワー向けの施策なのかな?

【北欧、暮らしの道具店】は自社内に動画制作チームを持っているほど、動画制作に力を入れていることで有名ですが、リールのような短尺動画フォーマットは世界観に合わないと判断しているのか、切り捨てているのかもしれません。


IGTV

一方、短尺動画ではないIGTVにはかなり力を入れているようです。
僕が確認した限りだと、2018年6月からこれまでの約2年間で170本ほどの動画をアップロードされていました。月に7本ペースとかなり多いです。

ただし、これらはInstagram用のオリジナルコンテンツというよりは、YouTubeで配信しているコンテンツの流用のようでした。リールよりもIGTVとの相性が良いので、IGTVで積極的に投稿しているんですね。
IGTVはYouTubeに比べると視聴サポート機能が弱いので、あえてIGTVで見るメリットは少ないですが、Instagramの投稿が過去のYouTube動画を見るきっかけになるのはありがたいかも。

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「シリーズ」もしっかりとまとめられており、過去のアーカイブを一気見することも可能。

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もともとYouTube用に作られたコンテンツなので、横長形式ですね。10分以内のライトな動画が多いです。



細かすぎる解説を読んでくださり、ありがとうございました。

以上、【北欧、暮らしの道具店】のInstagramアカウント解説でした。

驚異的なフィード投稿数と安定したクオリティ、そして丁寧なコメント対応など、体制と仕組みの強さが際立っている一方で、ハイライトやリールの活用などには伸びしろのあるアカウントでした。

今後も細かすぎるInstagramアカウント解説をしていきますので、もしよろしければフォローをお願いします。

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