舞台付箋 ミュージカル『薄桜鬼 真改相馬主計篇』

2021/04/04、東京千秋楽。おめでとうございます。
そして2021/04/11、神戸大千秋楽、本当におめでとうございます。
この遅咲きの桜が、この春に劇場で狂い咲いてくれるのを一年、待っていました。

■公演概要

演出・脚本・作詞:西田大輔
原作:オトメイト(アイディアファクトリー・デザインファクトリー)
https://www.marv.jp/special/m-hakuoki/hp2021/index.html

公演期間
東京公演
2021年4月2日(金)~4月4日(日) 日本青年館ホール
関西公演
2021年4月8日(木)~4月11日(日) AiiA 2.5 Theater Kobe
https://www.marv.jp/special/m-hakuoki/
2020年公演(プロジェクト中止)
https://www.marv.jp/special/m-hakuoki/hp2020/index.html

・グッズは通販または一部店舗販売あり
通販 https://collection.rakuten.net/marv/hakuoki/
店舗販売 アニメイト(池袋本店、渋谷店、三宮店)、2.5次元ショップ
(販売日時:2021年3月26日(金)各店舗開店~4月18日(日)閉店まで)

・チケット
プレミアムチケット ¥11,000(税込)
(劇場にてプレミアムチケット限定グッズ(非売品)受取)
プレミアム特典:フォトブック(A5サイズ/フルカラー/30P)
一般 ¥8,000(税込)

・ライブ配信・アーカイブ配信
配信公演
東京公演:2021年4月4日(日) 17:00公演(千秋楽)
関西公演:2021年4月11日(日) 17:00公演(大千秋楽)
・販売価格
通常価格:3,700円(税込)/プレミアム会員:3,100円(税込)
・配信サイト:ニコニコ生放送
https://www.marv.jp/special/m-hakuoki/stream.html

演出・脚本・作詞:西田大輔
音楽:坂部剛
殺陣:六本木康弘
振付:MAMORU
舞台監督:久保健一郎
美術:秋山光洋
照明:鶴田美鈴
音響:ヨシモトシンヤ
衣裳:八重樫伸登
ヘアメイク:海野由香
歌唱指導:Yuko
音楽助手:戸部百合亜
演出助手:新早由季
トレーナー:伊藤洋
フォトグラファー:TOBI
宣伝・グッズデザイン:羽尾万里子
制作進行:杉田智彦
公式webより引用

■出演

相馬主計:梅津瑞樹
雪村千鶴:松崎莉沙

土方歳三:久保田秀敏
沖田総司:菊池修司
斎藤一:大海将一郎
藤堂平助:樋口裕太
原田左之助:川上将大
永倉新八:小池亮介
山南敬助:輝馬
山崎烝:椎名鯛造
三木三郎:砂川脩弥
野村利三郎:園村将司
近藤勇:井俣太良

天霧九寿:横山真史
不知火匡:末野卓磨
雪村綱道:川本裕之

風間千景:鈴木勝吾

アンサンブル:
佐藤佑樹 坂本和基 来夢 榮桃太郎 (多田滉) 徳留達也 工藤純一朗 伊藤智則 藤希宙(五十嵐胤人代役)
(敬称略)

■作品概要

シリーズ累計100万本を超える大人気ゲーム『薄桜鬼』を原作としたミュージカル。毛利亘宏氏による脚本・演出・作詞で、2012年に上演された第一弾ミュージカル『薄桜鬼 斎藤一篇』を始めとして2017年までに8作品、ライブ2作品を数えます。
2018年からはミュージカル『薄桜鬼 志譚』として脚本を毛利亘宏氏、演出に西田大輔氏を迎えて2018年に志譚 土方歳三篇、2019年に志譚 風間千景篇を上演。翌2020年春に脚本・演出ともに西田氏による『真改 相馬主計篇』が決定するもコロナ禍によりプロジェクト中止に陥ります。
そして今年2021年春、固く結ばれた蕾が解けるように、幕を上げました。本当に幕が上がって良かった。
しかしながらアンサンブル多田氏の出演見合わせ、コロナの影響により五十嵐氏の降板と藤希氏の代役が決定、当初予定していた4/1初日公演が中止に。東京と神戸の一部公演の上演開始時間も繰り上がることになりました。(が、これは恐らく上演時間3:25というのも要因なのでは思うんですがーーーどうですかね演出家氏ィ)

■舞台付箋

(ネタバレ配慮なし)
・待っていた2021春!!
2020年の3月下旬といえば、日本でも2、3月頃の公演が次々に中止になる中で、4月はせめて……と宛のない望みを抱きながらプロジェクト中止の告知があった春。あれから丁度一年が経ちました。毛利亘宏氏の脚本演出作詞で上演された『薄ミュ』を、演出家西田氏を加えて志譚として2018年に受け継いで2年、いや3年の今年、毛利氏の手を離れて、初の西田氏の脚本演出作詞による薄ミュ真改の上演が叶いました。
毛利氏の薄ミュを少しだけ観劇した事があり、その楽しさも知っています。その上で、脚本毛利氏、演出西田氏の志譚を楽しんだ自分としては、いつか脚本演出が西田氏という薄ミュを観たいと思っていたのです。それも今作は前例の無い「薄桜鬼 真改」からのシナリオ。誰も見たことのない、けれどきっと地続きの「薄ミュ」があると信じていました。
もしかすると2017年までの薄ミュファンからすると”らしさ”が薄れた、あるいは失われたと思う所もあるかもしれません(音楽や振り付け等)。それでも、薄ミュ真改という別個の作品として楽しんで貰えたら良いなと思い、本記事がメモ程度でも何かのお役に立てたら良いと願って。

・今回は制作陣についても書きたい
・音楽の人が今回から変更=楽曲の雰囲気が少し違う
・音響のヨシモト氏は刀ステから梯子……!?

目立った変更といえば、本公演より脚本演出作詞が毛利氏に寄らない他に、音楽制作も変更しており、今回劇中歌の雰囲気が今までと違う雰囲気が感じられました。作り方として1つの場面に対して尺が長くメドレーのような楽曲が用意されているような、曲と曲の切れ目がほぼない雰囲気が結構ありました(パンフにも、そういう風に作っている部分もある事に言及あり)。
歌い始めから殺陣や会話(台詞)を交わしながら歌い、掛け合い、BGMとして流したりしつつ曲が終わって場面が変わる、そんな大きな川の流れのようなミュージカルになっている気がします。

それから音響の方のお名前を刀ステでよく見かけるヨシモトシンヤ氏、サクラサウンドとしては2014年の薄ミュライブから参加している模様。1/10~3/28までIHIステアラ東京で上演されていた刀ステ『天伝 蒼空の兵 -大坂冬の陣- Supported by くら寿司』にも参戦されているので、梯子ですな!?しかし音楽もSEも絶妙なタイミングで楽しめました。
東京公演で惜しいと思ったのは、演者のマイクと劇場の反響が合わないのか、今回の音楽の曲調と演者の声質によるものなのか、楽曲が流れている最中の台詞・歌詞が音楽と同一化して聞き取りにくい事が多々ありました。客席で受け取る反響の関係もあるかもしれないので、難しいところですが……(あとは筆者の聴覚の問題ですね、くそー!)

・プレミアム特典と今回も良い仕事をされた羽尾万里子氏GJ
志譚以前の特典は存じ上げないのですが、志譚以降の薄ミュのプレミアム席には特典として冊子が貰えるようになり、今回は横A5サイズのフルカラー写真冊子。グッズで言う全員セットブロマイドの色とりどりの傘とのショットと、一幕での新選組の隊服・鬼達の前半衣装のアナザーショットと思われ。いやー、全員セットでは縦方向のみでしたがこちらは横方向に寝そべるなどしているのが良き。傘背景は優しい色合いが華やかなのが目に優しい。

グッズ制作ではよく収益的な所からも手を出しやすく大量販売できる昨今の2.5次元舞台には必須となっているブロマイドですが、デザイン、グラフィックデザインで羽尾万里子氏のお名前を見つけたらその作品のファンは勝利を確信してください。外れません。(そのグッズの個別セット・ランダムなど販売方法については主催の企業によるので難しいところですが)
直近のお仕事を見ると宝塚『ポーの一族』ですとか演劇の毛利さん『星の飛行士』、舞台賭博黙示録『カイジ』ですとか。

好みなのは今年の刀ステ冬夏のダブルビジュアルですとか、


刀ステ慈伝の円環とか狡いですよな。しかもこれで間を割って開くとか……

2019年舞台血界戦線(第二弾も同じく)もいいですね。

薄ミュ志譚2作品では、デザインが対称になっているのがめっちゃ好きです。羽尾さんいつもありがとうございます。


是非羽尾さんのTwitterアカウントのメディア欄を覗いてみてくださいませ。楽しいです。


・真改未プレイでも大丈夫=忙しい人の為の薄桜鬼真改相馬篇
筆者はゲームを少々嗜みはしますが、薄桜鬼はPSPポータブルに移植されたものをちょろっとやって以来、続々と発売されるFD、続編、攻略キャラ追加に追いつけず終いで離れていたので、真改(シンカイ)なる読み方もわからないぺーぺーでありました。しかし、本公演は相馬主計(そうまかずえ・演:梅津瑞樹)を始めとした真改からの新登場人物もわかりやすく、元々の薄桜鬼のシナリオを追いかけながら相馬との出会い、他の人物との関係性もすんなり入って助かりました。
まあしかし新選組最後の局長の物語ですので、物語が濃くなるのは後半から……ということで一幕は大分駆け足の池田屋からスタート。回想のような形で雪村千鶴(演:松崎莉沙)が如何にして新選組と関わることになったのか、その理由等が明示されつつ、相馬との関係性も描かれていきます。未プレイでも充分楽しめます。またゲームプレイ済の知人によると端折る所は大分端折りつつ、相馬√にない他√の見せ場も取り込みつつの脚本の模様。いいぞ脚本家もっとやれー!
終盤は見せ場に次ぐ見せ場で盛り盛りでしたので、確かになとわかります。それぞれの命の使い方とか、鬼の名はとか。

・真改という物語、相馬篇という星を探す物語
※ゲーム真改未プレイの為、薄ミュ真改を観ての感想となります。
相馬篇というのは所属していた隊士それぞれの「志」を描くものであったた今までの薄桜鬼とも、(誰とも恋愛フラグを建てないまま進めると現れた)隊士の背中を見届ける風間篇とも異なる、”新選組”という組織の中でその誠を追い続け、志を受け継ぐ者・相馬主計という物語でありました。作中でも千鶴が抱き続ける「自分の誠とは何か」という問いかけに重ねるように「約束と誇りと誓いとは、誠という言葉のその根幹に生まれたものは何か」を問い続ける物語のように思えます。
相馬という青年は実直で頭の回転も早く思いやりもありますが、実直過ぎるが故に悪を許せぬための衝突もしばしば起こします。起こる、見舞われるとも言えますが。そしてまた、己の力不足も充分に認識している所謂新選組各隊の組長とは異なる初めから「力なき者・悩める者」としての立ち位置にある。だからこそ同様に(女性であるが故に)力も権力もなく、常に自分が出来ることは何かを探している雪村千鶴の隣に立てる存在でもある訳です。

薄ミュ真改相馬篇とは、共に並び、星を、己の誠を探す物語でした。この辺り、隊士達が歌う「志譚 水鏡」では描けなかったのでしょう。だから「雪風華」という楽曲が生まれた。誠を貫き時代の鬼となれ、とそこまで叫べない人間たちの、道標を探す歌。耳に残る歌詞と、そこに重なるように数多に輝く星空の中で一つ輝く極北の星を探す人生なんだよなあ、と。一幕OPの辺りや、二幕冒頭の演出が、この「星」を使った描き方なのも心を踊らせます。こういう演出好きです。
それは相馬主計だけの物語ではなく、そこに歩幅を合わせるように、ずっと隊士の背を見送るばかりだった雪村千鶴の歩みが重なるのが面白い。手と手を、指と指を重ねる子供のような約束が、ずっと続く誓いになるのが二人の関係性がどうなっていくのか観ながら想像を掻き立てるのも楽しい。
雪村千鶴役の松崎莉沙さんの歌唱力が凄いのも惹き込まれる一端です。一幕冒頭の透き通るような第一声、OPの悲壮な叫びのようなコーラス、二幕冒頭の相馬と二人の場面、彼女が歌うどの場面も、彼女のか弱さと心の強さを併せ持つ星の輝きのような歌声なのがとても素敵です。どんな時も外さない音程の取り方、声の張り、耳心地、本当にぱーふぇくつ。

脚本としては、忙しい人のための薄桜鬼真改なんですが、その中でも異なる志を掲げて散っていくもの、命をかけた人間たちも語られ、観終えて満足感がありました。

余談としては、薄ミュを観るとどうしても”鬼の一族”とは何ぞ?の方に意識が取られてしまうのでスピンオフ作品の『十鬼の絆』に触れたくなるんですがPSアーカイブに入ってないもので、PSP中古ソフトを探すしかないという茨の道……せめて舞台ナイズドされた舞台十鬼の絆を探すしか……

余談の追記:
https://eigeki.jp/stage/otomelive/toki
映劇株式会社さんの所で在庫あったので買えました。そうだよなあ舞台円盤と言ったらまだまだDVDが現役だよな……
https://eigeki.thebase.in/

・梅津瑞樹という俳優
梅津さんという俳優とは刀ステ慈伝の山姥切長義役でお名前を知り、(且つ梅津氏を激推ししている友人のお陰でちょくちょく話題を見かけるようになり、)そこから気になるようになった方です。科白劇刀ステ/灯で同役を観た最後のカテコで「これが演劇の力だ」というコメントを聞いた時にその演劇にかける熱量の大きさを受け取った気持ちになりました。
以来、西田氏ファンとしてはずっと、この俳優と演出家西田氏が何処かで出会ったらどんな演劇が観られるのだろうと想像していました。殺陣は、あるだろう。苦悩も、あるだろう。それを抱えながら乗り越えて届く先が観てみたい、と。そうして決まり、そして中止し、プロジェクト再始動となった本公演・薄ミュ真改相馬主計篇は、そういった意味でもとても楽しみにしていたのでした。

・鈴木勝吾という俳優
鈴木さんという俳優は、別のマーベラス主催の公演、少年社中やdisgoonieなどでここ何年かそのお芝居を追いかけて観ている方でしたが、鈴木氏の演じる薄ミュ風間千景を目にするのは六年振りでした。といっても当時は俳優としてよりも登場人物の一人としての認識でしかなかったので、注視したのは今回が初めてとなります。
鈴木氏の風間千景というのは、もうひと目見てラスボスですね。開幕一発目からわかる安定した音程と声量、そしてその堂々たる様は彼がラスボスでない訳がない。紅白なら多分一番最後にでてきそうな演歌歌手のイメージです。薄ミュでもキャスト変更が何度かあり、風間役を鈴木氏が演じるのは数年振りでしたが、ミュージカルという舞台作品への力をつけて戻ってきた風間千景だったように思います。プロジェクト再始動によるキャスト変更での出演でしたが、このような出会い方もあるのだなと、この時勢の中の不思議な巡り合わせを感じました。

・西田大輔という脚本演出家
西田大輔氏が本公演で薄ミュに関わったのは三作目であり、毛利氏の脚本から離れて初めての一作目となります。毛利脚本だった志譚二作品も、それはすでに西田氏の見/魅せたい薄ミュであったと思っています。
元々西田氏は自身が主催するAND ENDLESSで新選組を扱った『堕天・神殿・遅咲きの蒼』や、『もののふ白き虎』を始めとするもののふシリーズを手掛けており新選組に対する解釈というのは元々持っていると考えられます。そして今回の薄ミュ真改はそういった解釈を通して雪村千鶴と鬼がいる『薄桜鬼』という世界をつくりたかったのではないかと感じています。故に薄桜鬼が元来持っていた鬼と羅刹についてのファンタジー部分は薄口で、薄桜鬼の世界観の中での”新選組”を描きたかったのではないか、と。
この辺り、薄桜鬼のゲームファンからは、羅刹化や鬼という異物が存在することによる焦りや葛藤という場面が薄れてしまったと感じられる事もあると思います。ただそれを、あの薄桜鬼の世界で後世残るのは、恐らくは羅刹という鬼の模倣も、本来歴史の影に在る筈の鬼の一族も伝わらない。その中で志を持った"新選組"という存在がいたことが語り伝えられたなら……と考えるのも面白いのではないでしょうか。

志譚で西田さんの演出が決まった時、いつか脚本と演出、両方で薄ミュが作られる機会が来るのではないかと、この春をずっと待っていました。その夢が叶い、自分としては大変満足しています。
血飛沫の代わりに花弁が散り、その人の覚悟を背負うように逆光を浴び、あるいは順光で照らし、いなくなってしまった人たちが影のように光のように思い出のように現れては消え、旗と共に志が受け継がれていく。照明演出がめっちゃ好きです。冒頭のOPから、一際強く光る星と共に雪村千鶴が歌い出し、数多に輝く星の中で、悩める一人の青年が顔を上げる。刀を掲げる。誠とは志とは問いかけながら道標を探して受け継いだものを抜いていく。覚悟を決める。人が一人、或いはそれぞれの人が、生きていく。出逢い、関わり、別れて生きていく。
またこれから巡りゆく季節の中で、毛利さんの、西田さんの、そして或いはまだ見ぬ誰かの手による薄ミュが、俳優とスタッフと携わる人々の中で作り上げられて・また花が咲くように、出逢えることを願っています。


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