心に手出しはできない
君が暴力を行使すれば、私の肉体は君の物になるだろうが、
私の心は師スティルポンのもとにとどまる。
~ゼノン~
アヴァロンは嬉々として声を張り上げた。
「9月最後は奇しくもストア哲学の始祖であるゼノンの言葉のようだね。
この月のテーマは【胆力と粘り強さ】だったのだが、
果たして我々はそれの一端にでも触れることができたのだろうか?
今日の言葉を受けて私が感じることは、
職場において上司は君に命令することができる。
君は従うことができるし、正当な理由をこしらえて断ることができる。
最も重要なのは、どんな気持ちで従うかもまた君の権内だと言うことだ。
私は思考停止して作業を行ったり、言われるがまま仕事をしろと言っているわけじゃないよ。
ただ、同じ実行する場合、君の心持次第で君自身に影響を及ぼすということさ。」
ルーピンは分厚い眼鏡の奥から瞳を輝かせながら言った。
「師の盲信することを良しとしないのはゼノン自身が示してくれるよ。
この言葉の背景はね、ゼノンの最初の師であるキュニコス派のクラテスに対して言い放った言葉なのさ。
ゼノンはクラテスに師事していた、しかしメガラ派のスティルポンのもとで学んでいたとき
クラテスがゼノンを連れ戻しに来たのがこの言葉の背景なのさ。
僕はねこの言葉で学ぶべきは、
『教養』を身に着けるのは、相手を論破してり自分の力を自慢するためじゃない。
自分自身を守るために『教養』が必要だということさ。」
トランブルはトレードマークとなったスコッチのソーダ割を片手にうなずきながら話す。
「逆に考えるならば、
人を動かすには肉体を強制しても意味がないと言うことさ。
何よりも相手の心に寄り添うことが大切だよ。」
「時には、世界そのものが君につらく当たっていると感じるかもしれない。
しかし、最後まで君を裏切らないものがある。君自身の心だ。
もし心が裏切ったと思うならば、それは違う。
君が心を裏切ったのだ。」
ドレイクは厳かに語りながら、煙草の煙を吐き出した。
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4日程アイザック・アシモフ著『黒後家蜘蛛の会』のメンバーにご登場いただきました。
個人的に「黒後家蜘蛛の会、待ち合い室の会話」ってタイトルをつけたかったのですが、
トランブルを登場させていることで断念。
トランブルは毎回ぎりぎりに登場するキャラクター、彼が来たのなら
ゴンザロとホルステッドも登場いただかなければ。
この形式の目的としては、
多面的な思考でストア哲学の言葉に触れたいからです。
いい言葉だなぁで済ませてはもったいない言葉の一方で、
自分ひとりで思案できる程器用でもなく。
そこでもともとタスクわけにも使っていた、
Life/Personal/Study/Work
それぞれにキャラクターをあてこんで代弁してもらう手法をとってみました。
いわゆる二次創作ですが、
個人的に楽しんでできているので10月も続けてやっていきたいと思います。
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