復讐はこらえるのが賢明~マルクス・アウレリウス『自省録』~

『最高の復讐の方法は、相手のようにならないことだ』
~マルクス・アウレリウス『自省録』~

トランブルはスコッチのソーダ割を片手に訪ねた。
「Dr.ルーピン、前回の締め切りは間に合ったのかい?」

ルーピンは分厚い眼鏡の奥からトランブルを睨め付けながら言った。
「ふん、締め切りが間に合ったかだって?
そんなのは間に合ったに決まっているさ。
むしろ早めに出してやったのにあの編集は・・・
あれよこれよといい気になって注文してくる始末だ。」

ドレイクは微笑を携えながら言った。
「今の君にこそ、今日の言葉は必要そうだね。
日常の些細な事の中でも、復讐の火種はある。
例えば、自分が知らない人に舌打ちされたから、別の人に舌打ちしてしまうとか。
君に舌打ちされた人は、君のことをどう感じるか?
君が最初にされた相手に対して感じたことを感じるだろうよ。」

アヴァロンはうなずきながら重ねた。
「上司にいやなことをされたからって、自分の部下に同じことをするのはなんて愚かなんだろうか。
必要なことは向上心と思考することさ。
より良いあり方を考え続ければ、やるべきことと改善すべきことが見えてくるだろうよ。」

ルーピンは言った。
「劣等感と劣等コンプレックスは違うんだよ。
劣等感はプラスに作用するが、
劣等コンプレックスはマイナスに作用する。
勝負に負けて、次こそ勝つぞと奮起して練習に励むのは素晴らしいことさ。
一方で、相手は運が良かっただの、自分の調子が悪かっただのをこじらせるのは
劣等コンプレックス、マイナスに働いている。」

「善く生きるのは何のためか?
世界のためでも、社会のためでも、相手のためでもない、
自分のためさ。
ルーピンの言う通りさ。
マイナスの復讐に時間や労力を使って何が返ってくる?
一時の感情のみで自分に残るものは何もない。
ましてや、復讐は連鎖する。
相手から復讐の復讐をされる恐れを抱いて過ごさなければいけない。」
トランブルはスコッチのソーダ割を飲み干しながら締めくくった。

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