『黒部の太陽』と父の思い出


【2009年の記録】
マイミクのさんが告知して下さった「黒部の太陽」の上映。
さっそく建設会社に勤める父に電話しました。

「黒部の太陽が黒部市で上映されることになったんかね。あーそれはすごいわ。「黒部の太陽」はね、映画館でしか上映しちゃいけない、映画は映画館で見るものと石原軍団だか三船敏郎が言ったんだわ。だから今までTVでもやっていないし、DVD化どころかビデオにもなっていないんだわ。お父さんも一回しか観たことがない。まあ幻の映画だわな。映画館で内緒で録った人の映像が少し出回ったくらいで(笑)。

俳優さんが演じたモデルになった人、知っとるよ。黒部の建設をしている人が仲間におった。佐藤工業のヤマダくんとか……あ、名前は言っちゃいかんのか(笑)。間(はざま)組の人とかね。石原裕次郎がやった役のモデルの人は、そのあと重役になった。熊谷の下請けの会社。トンネル屋さんだね。そこの社長の息子。「俺、裕次郎の役だぞ!」と喜んでいてね。あの頃はみんな若かったから。

お父さんが富山の出張所の所長をやっていた頃に、ちょうど映画が作られて。その頃は仲間はみんな所長で、まだ役はついていなくて、でも仕事としては重要なポストにいた人たちで。「僕がどこそこ工業の社員の役をやっとった!」とか、よく話していたよ。とにかくあの頃はみんな、若かったんだわ。

黒部も今となっては楽しいことばかりだけれども、その当時はつらかった。つらいばっかだった。

……そうか、「黒部」が上映されるのか。お父さんも応募してみるわ。今は旅行で全国の「土木遺産」を回ってるけど、当選したら富山にも行ってくるわ。どうもありがと。」(電話切る)

♯さっきもう一回電話が鳴りました。「由美子が言ってた告知のブログ、全然たどりつけへん!」と言っていたので、URLをメールしておきました。

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『黒部の太陽』の富山の抽選に落ちた父は、このあと、2014年に亡くなりました。

最後まで観る事ができなかった"自分たちの映画"。

そんなことも知っていただけると、ありがたいというか、気が楽になります。

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