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地道な行動の積み重ねによって仕上げきったこの身としばしの別れ。

この1年、徒歩10分の通勤路をほぼ毎日夫に車で送迎してもらってきた。

日本酒を水のように飲み、タコの唐揚げと炙りしめ鯖、子持ちししゃもの3品を5分で飲み下し、チェイサーとしてのハイボールも忘れなかった。

たとえ飲み会の日であっても、寝る前には、睡魔と戦いながらワンカップとホルモン、貝ヒモを貪った。

目的地を前に立ちはだかる階段は5段ごとに立ち止まり、カクカクと震える我が膝を叱咤激励しながら、3月にフルマラソンを完走した夫もこんな気持ちだったのだろうかと同じ空の下にいる夫に思いを馳せながら乗り越えた。

酒を飲んで油断すると必ず捻る左足首は半年もの間治らず、治り際にまた酒を飲んでは油断し、視界と記憶とともにクネンクネンとあらぬ方向に曲がっていった。

五十肩と診断された整形外科では、注射を打たれたものの何も起こらず、しかしながら数秒後に医師が放った
「あ、これ今効いてきてるね!きてるでしょ!」
という確信に満ちた言葉の前では抗う術もなく、痛む肩を軽やかにぶん回して
「そのようですね…!」
と感心したように呟いてみせた。

私はきっと好感のもてる人の前ならば、正気を保ったまま断腸の思いで催眠術にかかってみせるタイプだ。
そしてまた痛めた。

左足に左肩と、誰かとすれ違う際にはスゥッとした湿布の残り香を感じさせる女になった。

付け焼き刃なんかじゃない。
即効性を求めて短期集中で結果を出したわけじゃない。

ほとんどの人には気づかれないような、1年間という月日をかけた地道な行動の積み重ねによって、私はコンスタントに増量し、ここまで仕上げきったのだ。

最近では、私の仕上がりを注視し始めた方々に「キテるね!」と声をかけてもらう機会も増えてきた。

その都度「いやいや、やめてくださいよ、私なんてまだまだです」と答えてきた。

謙遜じゃない。本心だった。

まだまだだ。ここからだ。

そんな風に自分を過信することなく走り抜けていたところ(車で)、ずいぶん遠くまで来てしまった。

大事なものを見失ったように思う。

首、鎖骨、手首、胃袋の上限、飲んだ先で消えていくステンレスボトルやパーカー、イヤリング、左足首の強度、記憶、そして羞恥心。

虚無感を抱きながらXを開くとこんなポストがおすすめとして流れてきた。

⑤筋トレしろ。

⑤しか目に入ってこない。
しかも筋肉があれば人生は100倍うまくいくそうではないか。

本当ですか。信じていいですか。
こんな信頼できそうなアイコン、嘘なわけがない。
筋肉をつけたらどうなっちゃうのさ私の人生。

やります。
どうせ体を大きくするなら筋肉で。

ということで筋トレ始めます。
まずは2ヶ月。

人生が100倍うまくいくかどうかはさておき、今痛むこの五十肩には注射の100倍効きそうな予感はしている。あと左足首の強度にも。

ストイックにはなれないけれど、ハイボールは1日1杯(〜4杯)まで。
左足首の強度が上がったら、またしこたま飲むのだ。
ふふふん♪

おわり。

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