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8mm版、劇場版、ふたつの『19』はどう撮られたか?

今回、『19』Blu-rayに収録される、学生時代に撮った8mm版『19』。8mm版は1995年に撮影され、劇場版は1999年に撮影された。撮影当時の僕は、8mm版は19歳、劇場版は23歳だった。

8mm版は50分なのに対し、劇場版は82分。劇場版は8mm版をもとに、キャラクターや展開を肉づけして、よりシャープな雰囲気に仕上げた。

8mm版は当時、暮らしていた地元の名古屋を中心に、スタッフ、キャスト合わせても5、6人というフットワークの軽さを活かして撮影を行った。大学やアルバイトの予定を調整しつつ、だいたい期間は3ヶ月ほど、かかった予算は30万円くらいで、ほとんどフィルム代と現像代だった。

編集、アフレコなどの仕上げに3ヶ月ほどかけ、できあがったフィルムを、締切日ギリギリで、ぴあフィルムフェスティバルに応募した。数ヶ月後に、入選したと連絡があり、授賞式のために東京へ行った。結果は準グランプリで、生意気にもグランプリではなく非常に悔しかったのを覚えている。

劇場版は、大学を休学し東京で暮らしながら、書き上げた脚本をGAGAに持ち込み、2000万円の予算がつき映画化された。僕以外は、父親くらい歳の離れたベテランのスタッフが中心の少数精鋭で15人くらい、劇場映画としてはコンパクトな体制のチームだった。

また、できるだけ予算をおさえるため、ホテルではなく、茨城県の廃業した民宿に水道、ガス、電気を通して借り、スタッフ全員で合宿しながら3週間ほど撮影を行った。

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8mm版と劇場版は、同じプロットでつくられたものだが、劇場版には19歳から23歳までの4年間の中で経験したこと、感じたことが内容やキャラクターに大きく反映されている。

見た目に如実にわかるのは、19歳のときの僕は少し背伸びして「横浜」というキャラクターを演じているが、23歳のときは年齢的にも精神的にも「横浜」と重なっていて、肩の力が抜けた状態で演じている。おそらく、監督としても同じだったのだろう。劇場版ではより丁寧に、キャラクターを掘り下げることができた。

だから、ふたつの作品を見比べると、同じシーンでも描き方や解釈がちがっていたりするので、ぜひ両方見てほしい。

『19』(Blu-ray版 2020年1月9日発売)
監督・脚本/渡辺一志
出演/川岡大次郎、渡辺一志、野呂武夫、新名涼、遠藤雅、野沢那智
サラエヴォ映画祭新人監督特別賞/トロント国際映画祭/トリノ国際映画祭/シンガポール国際映画祭/台北金馬映画祭 …etc 正式出品