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この週末見るべき トライベッカ国際映画祭 VR作品レビュー

世界的映画祭がオンラインでVR映画無償公開、4月17日からニューヨークで開催を予定していたトライベッカ映画祭は、新型コロナウイルスの流行により無期限の延期を決めました。映画祭の“代替”として、従来の開催期間に合わせ、VRショートフィルム15作品等を無料で公開します。
(MoguraVRより)https://www.moguravr.com/tribeca-online/

現地時間の26日(日)まで公開されています。
今回、「VRならではの映像ってなんだ?」というVRの映像表現を考察する会のメンバーで3時間に渡り15作品のレビュー会を行いました。特におすすめの4作品と全作品レビュー(MoguraVRにて掲載予定)を紹介します。

現在、見られるプラットフォームは2通りあります、OculusQuestではそのまま、OculusTVにアクセスすることで見ることができます。
OculusGOの場合は、PCでトライベッカ国際フィルムフェスティバルのサイトにアクセスして、各作品からOculusのサイトにアクセスし、アカウントでログインした状態で、「SAVE TO VR」ボタンを押してください。5分くらいすると、OculusGO内の、OculusVideoにリストとして出てくるようになります。

https://tribecafilm.com/festival/immersive/cinema360

今回作品を考察するメンバーはこちらです。

スクリーンショット 2020-04-24 10.54.40

VR映画プロデューサー
Supership株式会社VR戦略企画室所属
待場勝利(右下)

VR映像クリエイター渡邊課(Concent,Inc.)
課長
渡邊徹(左上)

360VR写真/映像化クリエイター
Panoramania代表
二宮章(左下)

カディンチェ株式会社
実写360°動画/フォトグラメトリ制作担当
高松倫芳(上中央)

このメンバーでレビュー会をzoomを使って4/19(日)行いました。その時の様子はこちらにアップしておきます。3時間半にわたり15作品のレビューと、4作品を深掘りしてVRの映像論法について考察をしました。

途中youtubeの利用規約違反ワード(作品名)を連発したため配信が止まる。


今回VR映画として、各部門で見るべき作品として選出したのは以下の作品です。

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Cinema360: Dreams to Remember
・Rain Fruits 世界初 韓国
渡邊4 待場3.5 二宮3 高松4

移民労働者の視点で見知らぬ土地にやってきた若者の心の揺れ動きを表現している作品。ポイントクラウド的なCGで描かれているが、語りや音の使い方でリアリティを持たせており非常に見応えのある作品でした。

「ストーリーが非常にシビアな内容なので、CGで描くことで生々しくなりすぎずに、360度空間の間を考えてうまく作られていたと思います。描かれていない箇所があることによって私自身の想像力がさらに掻き立てられよりイメージが強くなった気がします。(待場)」

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Cinema360: Kinfolk
・Home 世界初 台湾
渡邊4 待場4 二宮3.5 高松4.5

夏の午後に古い家に集まった家族の物語で、おばあちゃんを囲んでいますが、彼女はもはや移動したり、反応したり、はっきりとものを聞くことができません。人々が出入りするにつれ、日は長くなり、この集いの終わりを告げます。
おばあちゃん視点で撮影も非常に高度でこの近距離でほとんど破綻もなく立体視の360度で、かつ空間音声のワンカットの15分。冒頭にもあったように高齢なのか、徐々にはっきりしてくる視界、いつも見ているであろう台湾オペラからはっきり見えてきます、認知症であろうことを想起させます。耳も遠く補聴器を合わせてもらってようやく聞こえてくる会話、そして奥にある介護ベッド、全てのものがそのおばあちゃんの状態を想起させ、周りの人の会話を通じてその当人や親族間の関係性を絶妙に描いている。いつかくる将来に自分を重ねる人もいれば、こうありたいと胸に刻む気持ちもありと様々な感情を呼び起こす作品です。

「今までみたワンショット、POV作品の最高峰作品です。
私自身、ずっと目指していたVR映像の形を見事にやってくれました。
監督に会ったら感謝を伝えたいです。シンプルで何気ない360動画ですが、出てくる家族や親戚の設定の細かさ、体験するおばあさんのディテールも本当に細かく考えられています。
今後ワンショット、POV作品のお手本にしたい作品です。(待場)」

「今大会でほぼ唯一と言って良い、魂が揺さぶられる作品。ワンカット長回しで、淡々と物語が進む様は、まるで小津作品を観てるよう。群像劇を360°全方位で展開しても違和感が無い、非常に素晴らしい完成度で、とても優美な『映画』でした。日本の全国民に見て欲しいな。販売されたら1000円でも購入します。(二宮)」

「夏の日の祖母の家の空気感が映像の色に表れて感じました。また、誰視点というのが説明なくわかるし、どんな状態の自分なのかも自然にわりと正確に推測できる工夫がしてありました。是非、日本でたくさんの人に見てほしい作品。特に私は自分の親族に観てもらいたい共感を分かち合いたい。観る人によって色んな思いがあるだろう作品であることは間違いなしだし、私は親族で観た後、写真撮影をするでしょう。(高松)」

「この作品は映像ながらもインタラクション性の高い自然な状況で気がついたら引き込まれているという完成度の非常に高い作品でした。淀みなく違和感を感じさせない群集劇。(渡邊)」

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Cinema360: Pure Imagination
・Attack on Daddy 北米初 韓国
渡邊3 待場3 二宮3 高松4

実写の合成など拙いながらにコメディVR作品として優秀。ドールハウスに引き込まれて、その中で囚われの身になる父、それを救い出す娘の冒険譚。冒頭ドールハウスの中からの視点で始まるところとか、囚われの父親の視点の時の横にある鏡など非常に計算された視点作りをしており見応えがある。ただ、後半のカットバックが続くあたりは視聴者を混乱させる一因になっており、360度活かせるカメラの置き位置などを工夫できたのでは?となってしまったところが惜しい。チープなセットの作り込みがちゃんとチープなところは評価できる。

「韓国コメディシネマらしいクスっとするシーンを詰め込んでる作品。典型的な現代家族の設定と休日の様子は視聴者に状況把握を容易にし、人形の部屋に入っちゃうというストーリー展開もVRベタベタな設定は良い意味で分かりやすく楽しい。エンディングのカメラ位置ではそれまではなかった目(魔女の目?)が現れるなどセットの細かなつくりや、裏設定を感じさせる装飾があり2回目以降視点を変えてみてみたいなと思えた。(高松)」

「夢落ちというのがありきたりだったかな。あと映像の中でカットバックをするのがどうも好きになれません。体験しているとカットバックされた瞬間にどこにいるのか?分からなくなってしまいます。夢落ちでは無く、もう少しミニチュアサイズになる意味を考えると思います。(待場)」

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Cinema360: Seventeen Plus
・Black Bag 北米初 中国
渡邊3 待場2.5 二宮2.5 高松3

銀行強盗計画、裏切りをしてしまったという後悔に苛まれる男の視点を体感するもの。。。と今回全ての人が思っていたら。もっと変な設定があったのですが。。そちらは文末にペーストしておきます。
映画Sincityのような光の世界観の中で物語は進んでいき、描写される世界観やセット、出てくるキャラクターなどは非常にVRの中でも効果的でした。例えば、重力を無視したようなカメラワークや、CG空間設計。ワンカットワンカットはじっくり長く見せておりキャラクターの動きもその方向を向かせる必然性もあり非常に見応えがあります。ただ、カメラワークはちょっと過多であり見る人によっては酔いにつながってしまうかなと思いました。
「冒頭から洞窟のようなところを進んでいく途中までは。5。空間の使い方や間の取り方など非常に空間に没入させる仕掛けを感じた。美術の作り方も思わず覗き込みたくなったり目で追いたくなるような仕掛けがあったので終始VRとして楽しい。お気に入りのシーンは。頭がテレビになって裏切りを追求するシーン。カメラのワークが動かしすぎてしまっている印象で。酔いやすいのが残念。カメラワークをもっとミニマムにし、カメラを置く位置にもっと意味を持たせていくことが必要な気がした。(渡邊)」
「疾走感あるはじまりと、迷走シーンの夢の中のような神視点が面白い。カメラワークのタイプは酔いやすいが、身体を動かして積極的に没入に合わせる作品は少ないのでチャレンジングだと思う。(高松)」
「手書き風な描写の新鮮さ。コンセプトやビジュアルがカッコ良かった。VRをよく考えた上での内容だった。セリフ無しなので全世界的に見られる作品としては良かったが、内容がきちんと理解できなかった。見る中で色々な受け取り方をして良い作品なら良いが、この作品はきちんと内容が分かった上で見せるべき作品だと思いました。(待場)」

作品の説明文はこちら>
元軍隊所属の警備員Sさんは銀行で働いており、いたって普通の労働者階級の生活を送っています。彼はたとえば強盗のことを想像すると、それが現実になるという特技を持っていました。このVR作品は抽象的なメタファーと独特の手書きのアートを合わせ強烈なスリラーアクションを描く。

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次点
Cinema360: Kinfolk
・The Inhabited House 北米初 アルゼンチン
渡邊3.5 待場4 二宮3.5 高松3.5

祖父母の家の思い出をよみがえらせる独創的なノンフィクション作品。過去を生き返らせるために、実際の家の映像で360度映像を作った。360度の映像に過去のホームビデオを載せるという斬新な手法で過去の記憶を現在に呼び起こし、ただの記録ではない郷愁を表現している作品です。その投影された映像をみていると、過去のカメラを持っていたであろう当人の視点を没入した中で体感させることに成功している。ただ雷雨というシチュエーションがちょっとみている側には理解しにくい部分があった。

「現在の空間アーカイブに古いフィルム映像を空間マッピングさせることで、今は亡き家族の思い出を紐解く映像を構築する技法が、とても斬新でした。(二宮)」

「単純に思い出を復活させただけで、物語的な進展や作者の伝えたいことが薄い気がしました。演出は非常に良かったのですが、その部分が薄いとただの記録映像になってしまうので、その辺もう1歩考えて欲しかったです。(待場)」

「映像を記録している人というのは、たぶんどこかにきっと、後で(自分かもしれないし知らない誰かかもしれないし)観る、ために撮る価値を感じてるんだろうと思っていて、(おそらく)1980年代のホームビデオ映像を、2020年のVR空間で活かすという点で、その気持ちが報われたようで全撮影者を代表して嬉しかった。(高松)」


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15作品全レビューはMoguraVRで読むことができるようになる予定です。
https://www.moguravr.com/


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