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ごく普通のサラリーマンが無人のレコード屋(&古本屋)をやってみた その3 〜オープンして一ヶ月経つのに人が来ねえ の巻〜

過去の記事はこちら。
ごく普通のサラリーマンが無人のレコード屋(&古本屋)をやってみた その1 〜開店準備にてんやわんやの巻〜

ごく普通のサラリーマンが無人のレコード屋(&古本屋)をやってみた その2 〜オープン前に課題は山積みの巻〜

お店のホームページはこちら。
https://www.mujinrecords.com/

毎日必死で更新しているインスタはこっち
https://www.instagram.com/mujinrecords/

【前回までのあらすじ】

 ごくごく普通のサラリーマンの僕は、本業の傍ら古本とレコードの無人販売店を経営することに。文京区千石の築60年の物件を借り、本とレコードを友人たちから譲り受け、無人販売のシステムを作った。プレオープン後に問題点を改善したのち、物件の契約から3ヶ月後にとうとう店のオープンに漕ぎ告げることができた。

【はじめに】

 このnoteの記事もこれで3回目。やっとオープンまでたどり着くことができた。オープンが2月19日なので約3ヶ月遅れ。1回目を書いていた時は、果たしてこんな駄文を読んでもらえるだろうか、とビクビクしながら書いていたのだけれど、奇特な方もいらっしゃるもので「スキ!」を沢山いただきまして有り難い限り。
 前回までは、防犯や無人の決済システムなど、「無人店舗運用構築」というどちらかというと地味で華がないテーマをメインに書いて来たのだけど、今回は集客面でのマーケティング施策の話になるのでちょっと面白くなるかも、と僭越ながら思っている。
 カタカナ言葉や所謂マーケティング用語は個人的に嫌いなので、なるべく自然な日本語で書く。「AIDMA」とか「ブランディング」とかドヤ顔で言う奴ってなんか小っ恥ずかしいし。
 今回も最後まで読んでもらえると嬉しいです!

【オープンから約1ヶ月の客数・売上】

 まず最初に、2/19から3月までの数字をドン。

2~3月の客数・売上

上記の項目の定義は
来店客  :店に入って来た人の数
購入客  :商品を購入した人の数 
購買率  :購入客/来店客
平均客単価:売上/購入客

目標: 1日平均 来店客4人    購入客2人    売上2,000円 に対し
2月  : 1日平均 来店客1.6人 購入客0.7人 売上2,060円
3月   :   1日平均 来店客1.1人 購入客0.3人 売上    657円

目標値の設定基準や、細かな施策内容はこの後書いていくのだけれど、ざっくりざくざくでオープンから1ヶ月の状況をまとめると

総じて良くない。悪い。大赤字。萎え。
✖︎来客数が圧倒的に足りていない。店が周囲に認知されていない
✖︎購買率低い。万人には受けない店になっている
○平均客単価高い。刺さる人には刺さる品揃えではある

今回は一つ目の来客数・集客の内容を主に書いて行く。購買率の話は次回以降に回す。

赤字を友人達に報告する僕

【目標値の設定】

 僕にとってのムジンレコーズはあくまで趣味の実験の場。本業のサラリーマンの収入が少ないながらもあるので、赤字が出なければ良い。細かな出費は無視するとして、一番大きなものは月6万円の家賃。そこで月間の売り上げ目標を60,000円とした。ここから客数を逆算する。
 ネットで調べると書店の平均客単価は1,300円ほど。ただし、この金額は新刊を扱う書店の数値のため、少し下げ客単価1,000円を一旦の目標に。売上目標60,000円/客単価 1,000円 で購入客数の目標は60人/月。購買率の参考値は探しても出なかったので一旦50%として来客者数目標は120人/月

 この目標値を設定した時、僕は根拠もなく結構余裕じゃん。と思っていた。「無人のレコード屋って珍しいし話題性もあるからじゃんじゃん人来るだろ」という認識。めっちゃ甘かった。

 今僕のfacebookの友達は約600人いて、全員にメッセージを送っても、30日かけてその5分の1をこのお店に集められるかと言うと絶対無理。知り合いでさえ集められないのに、見ず知らずのお客さんとなると言わずもがな。もっと客単価が高い商売(美容院、整体)とか生活必需品を扱うリピート率の高い商売(ドラッグストア、八百屋)とかならまた違ってくるけれど、古本&レコード屋ですし。

 ECサイトで販売すれば、話は全然変わってきて売上6万円くらいすぐなんだろうけど、このムジンレコーズ運営の目的が「リアル店舗がどこまでできるかの実験」なのでそれはナシ。あと、最近レコード屋勤務の友達からヤバい客のクレームの愚痴を聞いたのだけど、僕には絶対対応できない。宇多田ヒカルのハウスミックスのブート盤を注文して「原曲が一曲も入ってないんですけど」はイカれすぎている。

【集客施策】

基本方針

最初の1ヶ月はインスタグラムのみで集客を行うことにしていた。徐々に集客チャネルを増やしていくことによって(チラシ配ったり、ポスティングしたり)効果が高いものを選別する予定だったのと、インスタグラムだけで十分に集客が可能だと思っていたため。毎日本や、レコードの紹介をすることにした。
googlemapへのビジネス登録は一応行ったが、名前と住所、写真だけを入れたのみ。説明文は適当。口コミもなし。
 ターゲットとして設定していたのは徒歩15分圏内に居住する25~50歳の男女。(もっと細かく絞ったけれど、説明すると長くなるのでざっくりこの理解でお願いします)遠くから来る一見さんより、地元のリピーターを多く確保することに力を注いだ。

立地

 具体的な施策について書く前にムジンレコーズの立地条件を確認しておく。「都営三田線千石駅徒歩2分」と良さそうに聞こえるけれど、私道に面しているため店の前の人通りは全くない
 住所で言うと東京都文京区千石4-46-2。徒歩15分圏内には、文京区千石、白山、小石川(一部)エリア。豊島区巣鴨、駒込エリア。25~50歳の男女はここに約25,000人居住している。インスタの利用率は25~50歳だとざっくり45%ほどなので、約11,000人に対してアプローチが可能な計算になる。毎月この1%強にきてもらえれば来客目標は達成できる。
 所在する文京区の世帯年収平均は611万円。東京都の平均530万円を上回っていることから、生活必需品でない古本・レコードを購入する余裕がある人がほとんどである。と推測できる。

 店の周囲は住宅地だが、出版社2社(株式会社産業編集センター、株式会社コロナ社の社屋)がすぐそばにある。徒歩10秒。あとはご飯屋さんとか飲み屋が少々。

 同業の店舗は徒歩5分圏内に超イケてる古本屋「青いカバ」、オシャレレコ屋「WOO EEE WOO STORE」  どちらも素敵なお店。ただし、当店の競合にはなり得ない。こちらが商品ラインナップ・数・ブランド力全てにおいて弱すぎるため。こちらの強みは「無人でちょっと面白そう」しかない。戦わず(戦えず、だけど)、おこぼれ預かりハイエナスタイルでやっていくと決めた。コンビニのレジ前のガムのように、この二つのお店の帰りにちょっと寄ってもらうイメージ。

具体的な施策

インスタを用いて行ったことは、以下の3つ
①他の店・企業のフォロワーを根こそぎフォローする。
②ハッシュタグ沢山つける
③インスタ広告を出す

①他店舗・企業のフォロワーを根こそぎフォロー
 インスタグラムで「千石」と検索してもユーザーはほとんど見つけることができない。誰も自分が住んでいるところを知られたくないから当たり前。そこで、近隣の店舗・企業アカウントのフォロワーを狙うことに。

 上記の青いカバ、WOO EEE WOO STOREから初め、歯医者・整体・飲食店のフォロワーを片っ端から、できる限りフォロー。引き続き、近隣の出版社の企業アカウントのフォロワーも。おそらく社員がほとんどだろうから(失礼!)昼休みとか来てくれたら最高だなと思いつつ。バーや飲み屋、ラーメン屋のフォロワーはあえて無視。酔っ払いと学生(中高生)を積極的に取り込むことは無人店にとってリスクが高いという判断。

 結果、3月末にはフォロワー数が500人をこえた。古本屋とレコ屋のフォロワーはフォローバック率が50%くらい行ったが、その他は10%未満。特に企業アカウントフォロワーのフォローバック率はほぼゼロ。おそらく、フォロワーはほぼ従業員なのだが「会社から自社のアカウントをフォローするように言われる」⇨「いつも使っているアカウントを会社にバレたくないので捨てアカウントでフォローする」 という流れなのだと思われる。これは勝手な推測だけど、僕はそうしている。多分みんなもそうでしょ。

②ハッシュタグ沢山つける
 ビジネスアカウントではインスタのハッシュタグをどう使いこなすか、が重要とされる(らしい)。友人から聞いていたのは、投稿の本文にハッシュタグをつけるのは長くなってしまうのでイケてなくて、コメント欄にハッシュタグを埋め込むのが良い。ということ。

コメントでハッシュタグつけたよ の図

 ハッシュタグの選定でお手本にしたのはFACE RECORDS。

上記のリンクのハッシュタグの構成は

1.店名 2.エリア 3.業態 4.音楽ジャンル 
となっている。4の音楽ジャンルは海外からの検索数を増やし、通販での販売につなげるためだと思われるので、ムジンレコーズでは使わないで、1~3の内容をパクらせてもらった。なんか僕いろんなとこからパクってばっかりだな。ただ、これは現時点でフォロワー獲得には繋がっていない。#千石 #巣鴨 #レコード屋それぞれで検索しても、うちの店はトップに上がって来ないためだ。(おそらくフォロワーやいいねがまだ少ないため)

③インスタ広告を出す
インスタでは自分のフォロワーに近い傾向のユーザーを自動で検知し広告を出すことができる。(自分の投稿を一つ選び、フォロワーでない人に表示してもらう)試しに、このnoteの第一回目の記事の告知の投稿を広告として出してみた。お金がないのでまずは1,000円分だけ

 結果は2,379ユーザーに表示され、クリック数は220回。クリック率約10%でかなり高い。(ちなみにインスタ広告全体の平均クリック率は1.61%)これで増えたフォロワーは20人程度。効果は高いが投資が少ないのでインパクトも弱い。また、このフォロワー20人は来店につながっていないように見えたので、更なる投資はしなかった。

【来たのはどんなお客さんか】

 オープン時にはインスタのフォロワーは200人、1ヶ月後には500人。2/19~3/31の来店者数は48人。その時はほぼ全てインスタ経由で来てくれていると考えていた。(告知をしている場所がインスタしかなかったため)ただ、再度googlemapの検索履歴やお客様の様子を見直してみると以下のような構成が正しかった。そして、上記の施策は上手くいっていないことが分かった。

a.インスタからの来店 15人
b.ご近所さん       8人
c.グーグルマップから  23人
d.僕の知り合い      2人

a.のインスタからの来店は、幸運にも近所のレコ屋WOO EEE WOO STOREさんがお店を紹介してくれたことがほぼ全て。(ありがとうございます!)30代半ば以降の少し年配のDJの方々がレコードを見に来てくださった。最初に爆安で山下達郎を出してしまったけれど、買ってくれた人がお店を広めてくれて、5月までに10人以上の来店に繋がっているので、広告費としては元が取れている。
 ただこれは全てWOO WEE WOOさんのブランド力・発信力によるもので、僕が頑張った結果とは言えない気がする。

b.ご近所さん。はご近所さん。店が見えるほど近くに住んでいる方。余談だが隣の家の犬は超可愛い

c. グーグルマップからの来客。これが一番多かった。散歩している時にグーグルマップで「レコード屋」とか「古本屋」と検索する人は結構いるらしい。1ヶ月間で直接お話した人からも「散歩しててこの辺に古本屋ないかなと思ってグーグルマップで検索しました」とか「引っ越したばっかりでレコード屋を検索しようと思って」などの声を聞いた。やっぱりグーグルはすごい。

d.全然友達は来ない。僕の人望のなさが浮き彫りになった。

というわけでインスタグラムを中心に行ってきた集客施策は、的外れだった。というのが一旦の僕の結論だ。500人のフォロワーのうち、僕と店の発信力で来てくれた人はほぼゼロだった。


【反省と次のアクション】

 というわけで、最初の一ヶ月は全然上手くいかなかった。ここから学んで改善しなくてはならない。

反省1 顧客への価値が不明瞭だった

 当初、「無人のレコ屋って面白そうだから人くんだろー」と思っていたけど、そもそもこれが間違っていた。店をやっている側は面白い、と思っているけど、お客さんからしてみれば「だからどうしたの?行ってなんかいいことあるの?」という。仕事では滅茶苦茶意識していることなんだけど、自分のこととなるとつい忘れてしまう。(あるある)

 例えば飲食店で「当店は国産野菜を使用しています」と掲示しているのをたまに見かけることがあるのだが、ほとんどのお客さんは「だから何?」と思うのではないだろうか。国産野菜を使っているから「ヤバい薬品で死ぬことはないですよ」なのか「とっても美味しいですよ」なのか「日本の経済を回しているという喜びに浸れますよ」なのか。お客さんがどうハッピーになれるのか、価値を明確にして初めて魅力を感じることができる。

 そこで「顧客への価値」を以下に定めることにした。

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ムジンレコーズ最高の現実逃避ができる場所
誰からも邪魔されず立ち読み、レコードを聴いて嫌なことから逃げられる隠れ家。
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無人であること=煩わされない自由な場 と読み換えて価値を設定してみた。なんかちょっとだけ行きたくなる気がしません?

 最高な現実逃避と銘打ったからには店の居心地を改善する必要が出てくる。その時はまだレコードプレイヤーもクッションもクーラーもなかったので購入することに。金かかる〜。

店に飾る絵を描いてもらった

反省2 インスタは集客にベストな方法ではない

 来客者の比率を見てわかるように、インスタよりグーグルマップ経由の来客の方が全然多い。グーグルマップはほとんど何もしていないのに。
 繰り返しになってしまうが、来てくれたお客さんの話を聞いてみると、
「散歩行こうかな」→「近くに本屋さん(orレコ屋)あるかな」→「グーグルで調べよう」という流れが多い。「出掛ける」という行動と「グーグルマップをみる」という行動がセットになっている。一方で「インスタをみる」は「出掛ける」と離れてしまっているため、リアルな店舗への集客力という面で弱い、のだと思われる。(女子高生はハッシュタグを使い"映え"スポットを外出先で探している、らしいが女子高生はターゲットではない)

 これを受けて、グーグルでの検索に引っかかりやすくするため、サイトを作り、リスティング広告を掲載することにした。広告費a.k.a グーグル様へのお布施 である。

反省3 アプローチする的を絞れていなかった

 よくマーケティングの教科書に書いているのが、「ターゲットを細かく絞り、彼らを魅了するコンテンツを発信せよ」ということ。僕は「近所の本屋やレコード屋をフォローする本・音楽好き」という的を狙っていたのだが、的が大きすぎて、彼らの興味をしっかりと引くことができていなかった。「インスタでなぜかフォローされていて、近所にお店ができていたことは知っていたけど、わざわざ足を運ぶことはなかった」というお客さんの言葉がそれを顕著に示している。沢山の人に弱いジャブを沢山出していた結果、どれも来客に繋がっていなかった。

 一方でWOO EEE WOO STOREという影響力・口コミ力のあるアカウント(インフルエンサー)の紹介を見てくれた人は、少し遠いところからでも来てくれている。(再度ありがとうございます!)

 今からムジンレコーズがそこまでの影響力を持ち、人を引き寄せる力をつけることはとっても難しいし時間もかかる。はっきり言って無理だ。そこでインフルエンサーやメディアだけを集中的に狙っていき、その力を拝借する。虎の威を借る狐作戦を行うことにした。

【さあ、気を取り直して頑張るぞ】

 以上がオープンして一ヶ月の状況と反省。最初から上手く行くとは思っていなかったし、むしろ反省や発見があったことによってまだまだ心に余裕があった。次回はオープンして2ヶ月目までのお話を書いて行く。ラジオに出演させてもらったことによる広告効果の話がメインになると思われます。
最初にネタバレしとくと2ヶ月目も大赤字!

 今回はここまで。ありがとうございました。

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古本と音楽 ムジンレコーズ
営業日:毎日 10:00~20:00
場所 :東京都文京区千石4-46-2

https://www.mujinrecords.com/
instagram:@mujinrecords 
twitter :@mujinrecords





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