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ごく普通のサラリーマンが無人のレコード屋(&古本屋)をやってみた その1 〜開店準備にてんやわんやの巻〜

【はじめに】

 僕は超普通だ。30歳独身、都内のとある中小企業の営業職。収入も平均。どこにでもいるサラリーマン。すごい特技や秘密があるわけでもない。そんな僕に一ヶ月前ちょっと異色な肩書きがついた。「古本・中古レコードの無人販売店 店主」。

 東京都文京区千石。都営三田線「千石」駅から徒歩2分、築70年のボロ屋に「古本と音楽 ムジンレコーズ」はある。営業時間の毎日10:00~20:00は常時無人で販売を行っており、(わずかながら)売上が発生している。まだまだ赤字を垂れ流してはいるものの(詳細は後述)、なんとか継続できそう。

 去年の12月ごろから準備を進めて今年の2月19日にオープン。これまでのことや、これからのことを文章にして整理しないとなあ、と思いつつも時間がなくてできなかった。この3連休で少し余裕ができたので改めてnoteにまとめてみようと思う。

 ここに書く内容は、多分、店舗運営の実務に関わる部分(マーケ・業務設計とか)がメインになる。地域の方々とのハートウォーミングなやりとり、や、友人たちと一緒に理想のお店を作っていく爽やかな青春譚、や、お店に偶然立ち寄った清楚な美少女とのラブコメなどをご期待されている方のご期待には残念ながら沿えそうにないので、あらかじめご了承ください。
(そういうのがあったらインスタやツイッターに書くのでそちらをフォローしてね)

 そして、この文章は主に以下の三つの層に向けたものになっています。
1.お店をやってみたいと思っている人
 Twitterやインスタを見ていると、「会社を辞めて自分でお店をやりたい」とか「こんなお店があったらいいのになあ」などの投稿がちょいちょいある。僕はいつもそれを見て「じゃあやればいいのに」と思っている。僕のお店の事例(成功例も失敗例も合わせて)がそういう人たちの参考になれば嬉しい
2.お店をやっている人
 僕の先輩にあたる方々になる。僕はこれまでお店をやった経験がないので、アドバイスをもらえることをちょっと期待している。また、ここに書いていることを、何らかの形で使ってもらえると望外の喜びになります。
3.本と音楽が好きな人
 この文章はお店「ムジンレコーズ」のプロモーションの一環でもある。もしこれを読んで興味を持ってくれたらお店に来て、買ってくれ!!頼む!!お金がないんだ!!

 とりあえず前置きとしてはこんな感じ。早速はじめていきましょう。

【自己紹介】

 僕の名前は渡辺一行といいます。あまり自分のことをくどくどと語ってもつまらないしそんな魅力のある人間でもないので、仕事と趣味についてさらっと触れておきます。

仕事
 先に述べたように都内の中小企業のサラリーマン。営業職です。仕事内容をざっくり言うと、「店舗の運営支援。主にマーケと業務改善」。お客さんが特殊な業種メインなのであまり掘り下げないですが、イメージとしては街のお店屋さんに「アプリ作ってリピートのお客さん増やしません?」とか「店舗のスタッフさんのコミュニケーション円滑にするシステム入れません?」とか言って回る感じです。実際はもっとちゃんとやってるつもりだけど、、、。後述するけど、この仕事がお店をやるきっかけになっています。

趣味
音楽が好きで、学生時代から音楽イベントをやったりDJしたりしてました。これまでやったKOMAMO、ENSOKUというイベントは「知る人ぞ知る」。くらいの知名度はあるのではないか、とこっそり自負してます。こっそり。DJは遊び程度だけど、アナログレコードは大好きでちょっとずつ集めていました。今のお店の在庫のほとんどは僕のレコード。(少ないけどね)
 あと本を読むのも好き。ビジネス書と自己啓発本以外は!

【無人店開店の経緯】

 さっきの仕事の話とも繋がる話。僕は街のお店に「こうすれば売り上げ上がりますよ!」とか「こうすれば手間が減りますよ」と言って回っているわけで、そこにはしっかりと論理と根拠がある。でもなかなか仕事が取れることはない。これは当然で、訳わかんない営業マンがそんなこと言っても信じられない。お客さんの「そんなに効果あるなら自分でやれよ」とか、「自分で店やったこともない奴が何言ってやがる」とか心の声が聞こえて来る。(ちょっと被害妄想気味か・・・)

 これを解決するのはめっちゃ簡単。自分で店やってうまくいけばいい。というわけでずっと、「サラリーマンをやりつつ自分でお店をやるタイミング」を狙っていたわけです。
 古本と中古レコードのお店にしたのは、好きだから。本当に好きだから。それだけ。

【物件を探す】

 お店をやる機会を狙って、昨年の秋頃から暇さえあれば業務用物件のサイトを閲覧する毎日。ざっくり要件として出していたのは
1.家賃は6万円以下  (薄給なもんで)
2.自宅からチャリで行ける (遠いのはめんどい)
3.物件として独立している (間借りはちょっとなあ。人間関係とか面倒くさそう)

 なかなか見つからなかったのだけど、遂に11月中旬最高の物件が出現した。最寄駅の隣駅から徒歩2分。家賃6万。小さいし築70年、長屋だけど2階建ての一軒家(マジかよ!?)。即不動産屋に連絡を入れて内見を申し込んだ。 

実際に見てみると、「2Fは床が抜けそうなので危険。(荷物おくくらいなら大丈夫)」というデメリットはありつつも、「1Fはリフォームされており綺麗」「トイレは洋式&便座暖め機能付き」「水道問題なく出る」といいことづくし。即入居決定。初期費用40万お支払い。チャリーン。めでたく2021年12月4日から契約開始となりました。

ちなみに2Fの床はその後しっかり抜けた。死んだかと思った。

綺麗な一階
床がぬけそうな二階

【商品を仕入れる】

 無事に物件を契約したので、商品(古本とレコード)を仕入れることにした。自分のものだけでも良かったのだけど、ちょうど引越ししたばっかりで色々処分してしまったところだったので心許なかった。仕入れルートとして考えられるのは以下の5つ
1.自分の所有物
2.寄付してもらう
3.せどり
4.色んな人から買い取る
5.業者のセリに参加する

 まずは手取り早いところで1.と2.を行うことに。イケてるものを持ってそうな友人・先輩に片っ端から声をかける。
「古本とレコードの店やるのであったらくれませんか?なんかでお礼するので」
 我ながらずうずうしすぎる。そして先輩のツイッターにも『何やその厚かましいお願いは....と苦笑してたんだけど』としっかり記されていた。(その後素敵な本たくさんくれた。)
 結果的に15人からイケてる本とレコードを貰うことに成功。意外に僕人望あるのではと勘違いしそうに。(皆様ありがとうございます!!)ちなみにまだお礼はできていない。鋭意準備中が3か月を超えているのでそろそろ怒られるのではないかとヒヤヒヤしている。一応準備はしている。準備は。

 3.と4.の買取を行うためには、警察署から古物商許可を得ないといけないのでこちらも一応申請を出して難なく取得。全部で3万円弱。今の所ほとんど買取はしていないけど、警察署からのお墨付きがあるというだけで心の安寧がある。前科がなければ大体取れるっぽいけど。
 ちなみに、販売するのに許可はいらない。許可が必要なのはあくまで買取。盗品をさばいたりするのを防ぐためみたい。

 5.の業者のセリに参加する。は憧れはあるものの実現できていないし、今後も無理だろうと思う。セリに参加するには各地方の組合に入らなければいけないのだけれど、入会費用が数十万とバカ高い。「セリに参加」は言葉の響きとしてはかっこいいけど、響きにそんな大金払えるわけがない。

【無人販売システム構築】

 物件も商品も抑えたので、肝の部分。どうやってサラリーマンをしながら店を回すかの部分を考えることに。世の中の無人古本屋の例を色々見つつ、三鷹のBOOKROADさんの例をベースにすることにした。

 BOOKROADさんでは、ガチャガチャを使って販売を行っている。上のガチャガチャは500円。下のガチャガチャは300円でカプセルが出てくる。カプセルの中にはビニール袋が入っていて、300円の本は300円のカプセルの中に入っている袋で持ち帰れ、500円の本は500円のカプセルの中の袋で持って帰ることができる。

 ただ、これをムジンレコーズにそのまま移行することは難しそうだった。BOOKROADさんでは全ての商品(古本)が300円か500円なので成り立っているが、レコードを500円以内で販売するのは無理だ。2,000円程度までは対応できるようにする必要がある。

 そこで、ガチャガチャでは300円と500円のシールを販売し、値札にシールを貼り付けることで高額の商品に対応できるようにした。
(例:800円の商品なら300円のシール1枚と500円のシール1枚を値札に貼れば会計が完了する)。
 早速ガチャ8万と両替機4万 計12万をお買い上げ。金ばっかりかかる。とりあえずはこの運用で走ってみることにした。

幻のガチャガチャ決済

 注:ちなみにこのガチャガチャを利用した決済システム。運用テスト時に問題が勃発しまくり。現在はスマホ決済に移行している。12万かかったガチャガチャと両替機はマジで邪魔になっている。どうにかしないとなあ。

もはや使っていない

【防犯対策】

 無人店の一番のリスクは万引き。有人の通常の書店でも万引きが後を絶たないのだから、無人店は言わずもがな。
 ムジンレコーズは駅近でありながら前が私道のため、ほとんど人通りがない。なので来店するだろうお客様は「感度が高く」「それなりの常識がある」「立派な大人」だろうと予想していたので、あまり万引きについては脅威に感じていなかったのだけれど、それでも対策を講じる必要はある。

 具体的な施策は以下の2つ
1.防犯カメラを設置し、店主が見張る
 amazonで1万円で買える防犯カメラにもAIが付いている。人物の動きを探知するとスマートフォンに通知を出してくれる。僕は通知が来たらスマホで店内の映像を確認。怪しげな動きや決済が出来ていない人がいたら、店内のマイクから声を出してアラートを発する形にした。
 忙しくてリアルタイムで見れない時も録画を確認。何かあれば警察に届けるようにした。
 ただし、AIがおバカすぎて、お客さんがちょっと動いただけですぐ通知を送ってくるので僕の携帯が震えっぱなしになる。という問題がある。

2.YOUTUBEで店内の様子を中継し、万引きを抑制する
youtubeで店内の様子をリアルタイム配信し、そのことをお客様に周知することにより自制心が働くようにした。全世界に自分の悪事が配信されると知ったらさすがにやらないだろう、という考え。今の所は作用している、、、のか、、、。

 上記の施策がうまくハマった、のかどうかわからないけれど、オープンからの1ヶ月は万引きは発生していない。とりあえず一安心しています。

【開店準備完了 そのあとは・・・】

 こうしてなんやかんやでオープン準備がととのいました。ちょうど年末年始でサラリーマンとしても爆裂忙しく、準備ができるまでに2か月ほどかかってしまたけれど。家賃12万が飛んで行ったけれど。
 ただ、決済方法がうまくいくか自信がなかったため、運用テストを兼ねて内輪だけでオープニングパーティーを開催することに。

 お客様の不満が爆発し、罵詈雑言が飛び交ったオープニングパーティーの様子はまた次回の記事で書くことにします。長くなってしまいましたが今回の記事はここまで。

 読んでくれた皆様、ぜひムジンレコーズに遊びに来てくださいね。頼むぜ!!

それでは。


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古本と音楽 ムジンレコーズ
営業日:毎日 10:00~20:00
場所 :東京都文京区千石4-46-2

instagram:@mujinrecords 
twitter      :@mujinrecords

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