営業コーチングの未来について考えてみた
こんにちは。Magic MomentでAccount Executiveをしています、渡邊(@Yusuke_W8)と申します。本日は、前職のコーチングカンパニーPabloの代表であり、リクルートの同期でもあるてつ(@itetsuya1)が、コーチングの書籍を出版した(8/30書店発売、Amazonは9/1より)ので、お祝いの意味も含めてnoteを書いてみました。実は営業コーチングは、今私がいるSales Engagement Platform領域とも密接に関係してくる部分もあるので、その内容も含めて考察していきます!
1年ちょっと前、みんなであーだこーだ言いながら、大量のコーチングの議事録とにらめっこして考えたことが、さらにたくさんのコーチとプレイヤーの皆さんのセッションを経て、こんなにもまとまって書籍化されるってことにすごいエモい気持ちになりました。特に、コーチングレディの概念をまとめていた時期に私は携わっていたのですが、特にこの7つの前提理解はコーチングや1on1をやる上でめちゃくちゃ重要です。ここの前提理解がないと、まったく状況にそぐわないコーチングをしてしまい、逆効果にもなりかねません。ぜひ読み込んで理解いただけたら嬉しいです。
たくさんの実際のセッションでの事例も掲載されているので、ぜひご自身のコーチングや1on1を見直す意味でも、ご一読をおすすめします。本来的には営業コーチングだけではなく、幅広い方へ適用できる内容なのですが、当時のお客さんが営業組織が多かったということもあり、より営業組織にいらっしゃる皆さんにとって共感できる内容となっていると思います。
てつ、Pabloの皆さん、関係者の皆さん、出版お疲れ様でした!
営業コーチングの3つの役割
コーチングという概念が日本に入ってきてから約20年。コーチングというワードは聞いたことがある方は増えてきていると思いますが、実際に受けたことがあったりする方はまだまだ少ないのかなと思っています。また、コーチングと一口に言っても、さまざまな領域が存在します。ビジネス系、フィジカル系(スポーツトレーナーなど)、キャリア系(キャリアアドバイザーなど)、学習系(英語コーチングなど)といった領域がざっくり存在しています。その中でも今回はコーチングの中でもビジネスコーチング、特に営業コーチングの領域について書いていこうと思います。
コーチング機関の一つであるNLPではビジネスコーチを下記のように定義しています。
営業であれば、営業ターゲットの達成はもちろん、その際に成し遂げたいさまざまな要素をサポートする、そんな立ち位置でしょうか。前職のPabloでは私自身がコーチングを行いながら、営業の皆さんの支援をさせていただく中で、大きく3つほどコーチングの要素があると思っていました。それが次の3つです。
営業組織のマネージャーの方であれば、1on1の中でこういった要素でコーチングされているのではないでしょうか。前職のPabloはここを経験豊富な外部コーチが代行するサービスでした。では、それぞれの要素について解説していきましょう。
プロセスコーチング
今私が所属しているMagic MomentでもPlaybookの機能でガッツリ支援できる領域になりますが、営業の生産性はプロセスによって大きく変わっていきます。いわゆるTheMODEL型と呼ばれる分業型の営業プロセスだと、組織としてプロセスマネジメントがしっかりしている場合は、個人のばらつきはあまり大きくないでしょう。一方で一気通貫型とよばれるリードジェネレーションからカスタマーサクセスまで1人の営業がカバーする営業プロセスの場合、ここのばらつきが非常に大きくなります。ここをいかに成果がでる構造に変えていくかというのがコーチングの論点になっていきます。
同じ営業組織の方を複数コーチングさせていただくとわかるのですが、同じエリアで、同じ商材を売っていても、それぞれの行動量や基準は本当にめちゃくちゃに差があります。まず、顧客とどういった内容まで合意できているかでフェーズを定義します。その上で、どこに目詰まりがあり、どこの行動が足りていないのか、成果につながるようにパスを通すようにコーチングしていくだけでも、相当結果は変わってきます。
Metrics(係数)の分解→注力ポイントの特定
いわゆるトップ営業の方はここの配分が非常に合理的ですので、コーチング時にヒアリングすると、それぞれの係数をするすると答えていただけます。一方で、成績が伸び悩んでいる方はこの辺りがふわっとしていたり、感覚的にやっていることが多いです。まずはここを一緒に見える化していき、注力するポイントにまず取り組んでいくという方向性で議論をしていきます。
コミュニケーションコーチング
営業は、商談時はもちろん、商談以外の時間も顧客にメールやメッセージを送ったり、資料をみてもらったりして商談を進めます。そうしたコミュニケーションは属人性がいまだに多く残る領域であり、営業によってのばらつき、新人とベテランで大きく差が出るポイントです。
顧客の現状を正しく理解し、不快感なく伝わること
いわゆる営業トークを磨きこむ取り組みですが、ここって意外と客観性を持つのが難しい領域だったりします。ロープレをしても、それはロープレをお願いする”先輩の型”との差分の修正にとどまってしまい、真に顧客目線でフィードバックをするのは難しいと思っています。その点、外部コーチは専門の知識を持っていない、いわば顧客ペルソナに近い状態。リアリティをもって、説明のわかりづらさや、顧客の理解度を測る質問がきちんと構造的になっているかという点をチェックすることが可能です。
専門知識の説明やトーク磨き込み→社内のロープレ
知識のない顧客に正しく理解してもらうための磨き込み→外部コーチング
上記のように目的を分けて磨き込んでいくと、コミュニケーションが効果的に磨かれ、目に見えて顧客との対話の手応えを掴んでいけるでしょう。すべての発言に対して、その時顧客として感じた感情を教えてもらえるというのは、かなり学びが大きいです。「ここ、まだ信頼感がないのに急に深めの質問をされて身構えました」「ここ、私の理解度が追いつかないのにどんどん進んでしまい置いてけぼりになりました」「ここ、わかっているのに何度も説明されて早く次に進んでほしいと思いました」「ちなみに、が口癖になっていますね」など、指摘された細かい点を全て矯正していくだけでも、相当コミュニケーションが滑らかになっていきます。
営業が目指す商談のゴールを事前にすり合わせ、そこに向けたコミュニケーションになっているかどうか、アドバイスしていきましょう。
効果的なメッセージ内容とタイミング
また、メッセージの内容やタイミングも同様。マーケティングに詳しい方であれば、件名や、内容の長さ、顧客に伝わりやすい文面と、開封されやすい時間にメールを送るなどは当たり前のことだったりしますが、一気通貫営業をしていると、それぞれのプロセスの効率性について細かく考える時間は取れなかったりします。
いくつかのメールを確認しフィードバックするだけで、このあたりもたくさん気づきを渡すことができるでしょう。
おそらく、どんな営業組織であっても、メールのテンプレートはいくつかは持っているものがあると思います。ですが、展開されている内容はおそらく社内でトップ営業と言われている方のものが多いです。あくまで作成したトップ営業の高い知識レベルと、顧客への理解に基づいたアクションだから成功しているという可能性も多分にあるわけです。この辺り基礎的なメールマーケティングの知識をコーチングしていくだけでも、成功確率はあがっていくでしょう。
モメンタムコーチング
最後が本書のタイトルにもなっている「部下のやる気はいらない」というところにも関わってくる核心です。何も結果が出ていないタイミングでモチベーションを上げていくというのは至難の業です。そんなことができるマネジメント層の方や1on1ができる方はいつも超すごいなって思うのですが、なかなかできませんよね。大切なことは、成功体験がやる気と改善と次の結果を導くという、歯車を回し始めるところなんです。キープレイヤーズ高野さんのtweetが、めっちゃその通りだと思うわけです。
コーチングの問いの技術で、営業の方がいまこう着状態になってしまっていたり、もう一歩先に進むための状況整理をしてあげたり、Out of boxな気づき(ジョハリの窓でいう”盲点の窓”を開ける言葉)を与えることで、背中を押してあげる、それがコーチングの一番の役割だと思っています。
例えば、新人時代なかなか成果が出ない時に、まずはとにかく量をこなす!と決めてやり切ることで、顧客の理解が一気に深まり、次の突破口が見えたことはありませんか?そういった最初の一歩を踏み出せない理由を対話の中で一緒に気づき、小さなことでもいいので行動に移し成功体験を積む。これが大きな成果への第一歩になるわけです。
ここの具体的な構造理解の仕方や、後押しの仕方はPabloで持っているコーチングメソッドの中心の概念になりますので、なぜ外部コーチである彼らがそれを実現できるのか?は、ぜひ本書を手に取っていただいたり、ご興味ある方はお問合せしてみてください。
プロセスとコミュニケーションはテクノロジーで精度があがっていく
さて、ここまでが営業コーチングの3つの役割についての解説。ここからは未来の話になります。米国Sales Engagement Platformでは”Gong””Outreach”"Salesloft"が有力なプレイヤーですが、その一角、”Salesloft”が先週、コーチング関連サービスのローンチを発表しました。
私の所属するMagic Momentで提供しているMagic Moment Playbookでもそうですが、営業のプロセスとコミュニケーションのインテグレートはもっとも重要な要素であり、こうしたデータがプラットフォーム上に蓄積されていきます。こうした定量情報をもとにコーチングをしていくことで、さらに精度が高いコーチングが可能になっていくわけです。
例えば、プロセスマネジメントについては、オンライン上の活動を全て定量的に、営業や組織ごとで比較できる時代になっていきます。
そして、それぞれのトークの傾向(Short talk/Long talkやDuration)までもが、動画履歴と共に蓄積されていくようになり、コミュニケーションコーチングも進んでいきます。
言語処理が難しい日本語では少し時間はかかりますが、この領域は5-10年で確実に進んでいくでしょう。
またこちらはOutreachのレポート。シーケンスのような一連のコミュニケーションについても開封がされやすいもの、転換しやすいもの、送るべき曜日や時間までもがレポートされていきます。コミュニケーションも、単一のメールではなく、複数のコミュニケーションプランとしての改善ができるようになっていくわけですね。
テクノロジーの進化による影響
こうしたテクノロジーの発展は、コーチにとって仕事を奪われるようなことになっていくでしょうか?答えは否だと思っています。
コーチはこれまで、問いのスキルを使って、この辺りの定量化されていない営業の振る舞いをヒアリングしながら、構造把握することからコーチングを始めていました。実はここって本当に時間がかかるんですね。営業と一口に言っても、新規営業と既存営業、エンタープライズ営業とSMB営業、モノ売りからコト売り、売り切り型ビジネスからSaaSまで、多岐にわたる営業のスタイルが存在します。それぞれの状況や勘所も違う上に、ある程度ここはコーチの得意不得意にも左右される部分があったわけです。
ですがテクノロジーの発展により、ここが正確に捉えられるようになっていくことで、今までと次元の違う的確なコーチングが可能になっていくわけです。内部での1on1や外部のコーチングに関わらず、こういったテクノロジーを使いこなしてコーチングを行うこと、また、セールスイネーブルメント領域の中でも、営業がテクノロジーをまず使える状態に導く”ツールイネーブルメント”みたいな領域がより重要になっていくと考えています。
定量データをもとに、より短い時間でプロセスやコミュニケーションが改善できるようになっていきます。なお、この辺りのテクノロジー×コーチングの世界感をより理解されたい方は、ぜひアクセルという本を読んでみることをおすすめします。私がMagic Momentにはいったきっかけの一つとなった本でもあります。
では、コーチングに残された役割として、どこに時間を注げるようになるのでしょうか?
モメンタムコーチングは人にしかできない領域として残される
モメンタムをつくること。最初の一歩を踏み出してもらうための後押しは、コーチングにしかできない領域として最後まで残されると思っています。テクノロジーが進めば進むほど、営業Tipsみたいなものの価値が減っていくでしょう。何をすればいいかの情報は溢れ、自分の状況は明確になり、あとはすればいいだけなのですから。でも、状況が明白であっても、そうでなくても、一歩踏み出すことができないというのはどの時代も変わらず、誰しも経験することではないでしょうか。その時に、そっと背中を押してくれる、信頼できるコーチの一言はこれまで以上に価値が高くなっていくでしょう。
営業を主とした販売関連職は、この先従事者の人口が減っていくと言われています。営業は人の力で顧客との未来を紡ぐ存在。よりテクノロジーによる支援が増える中で、最後に人に残された領域はハイレベルなものになっていくでしょう。その大きな一歩を後押ししていく、営業コーチングの未来に今後も注目していきたいと思います。
社内で議論好きと呼ばれて話が長くなりそうと敬遠される私ですが笑、元来人と議論することが好きだったりします。営業とか、営業推進とか、コーチングとか、ざっくばらんに私とお話しいただける方、meetyを開設しましたのでぜひお話ししませんか?もちろんMagic Momentのこともお話しできますよ!
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