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遺産になった道具たち その4-イチョウ


今はほとんど使われなくなってしまった「道具」達が、ウチの工具棚にひっそりと横たわっています。
今回、その中から取り出してみましたのが、この写真の道具です。
勿論、製本道具ですが、みなさん、何に使うための物かお分りになりますか? 


これは、「イチョウ」(イチョウの刃とかイチョウのコテ)という道具です。漢字で書きますと「銀杏」になります。イチョウの葉に形が似ていますでしょう?
現在のように機械化されていなかった時代、多分、昭和20年代までのことだと思いますが、この「イチョウ」をヒーターで熱して、上製本の表紙のノドに先端を押し付けてこすり込み、溝を付けていました。ミゾというのは、上製本の背中のわきについているくぼみのことです。この作業によって、中身(本体)と表紙が圧着されるのです。
今でも、機械で加工する際に、表紙に溝を入れることを「イチョウをつける(入れる)」と言っているのは、この名残でしょうね。

使い方は、下の写真みたいなイメージです

これを、表側と裏側の2面の作業を1冊ずつしていくのです。ただし、私も実際にこの道具で溝入れをしたことはありません。この後の時代の「足踏み式溝入れ機」(単に足で踏んで上の刃を降ろすだけの物で、機といえるかどうか?)も大事に残してあるので、見本を作る時もそちらを使っています。

現在はもっと進化していて「フォーミングマシン」という、プレスと溝入れの工程が同時に自動で出来てしまう機械があることを考えますと、昔は、やはり人海戦術で製品をつくっていたんだと思いを馳せてしまいます。

我が社に残っている「古い道具達」「古い機械達」を見ますと、昭和30年代くらいまでのモノクロの世界がよみがえるようです。この後も、それらを引き続き皆さんに紹介していきたいと思っています。
(記事担当:社長)

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