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世界最大のスラム街「キベラ」の話①『旅がなければ死んでいた』坂田ミギー著

キベラスラムとは

私はケニアの湊町(ヴィクトリア湖畔)に住むが、その首都ナイロビの一画に、トタン屋根と土壁でできた住宅が一面に広がる地域がある。殺人、強盗、レイプ、虐待が横行、多くのHIV患者が住み、ギャングの巣窟とまことしやかに語られている「キベラ」地区だ。

皇居とその外苑を含めた面積とほぼ同じ2.3平方kmのエリアに住む住人の数は、100万人とも200万人とも言われるが正確にはわかっていない。
一方、今年実施された国勢調査の結果として、18.5万人がこのエリアの人口であるとオフィシャルに発表された。実態と調査のあまりにもの乖離が、キベラの実態を掴むことの難しさを語っていると共に、不謹慎ながら世紀末救世主伝説感を5割増しにしている。

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青年海外協力隊としてのキベラスラム

JICA関係者は、安全管理上の問題からこのキベラスラムに足を踏み入れることはできない。よって、私自身はこの地を訪れたことはないが、色々な噂は耳にする。本当のキベラの実態はどんなものなのか、気になったので書籍や訪問経験者をあたってみた。
今回は、1冊の書籍を紹介する。


『旅がなければ死んでいた』坂田ミギー著

身体の不調を契機に、自らの社畜根性を気づかされた著者が、

「どうやらこのままじゃ自分は幸せになれないらしい。
だったら、価値観を変えるしかなくない?
でも、どうやって?(中略)
答えはどこにも見つからない。

だから旅にでることにした。」

と一念発起し世界中を旅にでる。
本書は、その旅の様子を綴った旅行記だ。

その一節

「わたしが好きになった、キベラスラムの話をちょこっとだけ。(ケニア、ナイロビ)」
「『20年後はなにしていたい?』に返ってきた意外な答え。(ケニア、ナイロビ)」

という表題で、キベラスラムでの経験が語られる。

最凶スラムと言われるキベラの中で、どの様な生活が行われているのか。住民が何を見て、何を食べ、どんな匂いを嗅いでいるかを、キベラの中でも特に劣悪な環境で暮らす子供たちのために設立された学校「マゴソスクール」を中心に著者の目線で語られる。

スラムには高い建物がないので、空が広い。ピーカンの青空に、どこからか聞こえてくる陽気な音楽、大きな笑い声。
 子供たちは外国人がめずらしいのか、ひたすら「ハロー」を繰り返してついてくる。歩いているうちに、いつのまにか人数が増えて「ハロー」の大合唱が始まる。
 道は舗装されておらず、土がむき出しになっていて、どこかしこもビニール袋が大量に落ちている。
 これは「フライング・トイレット」と呼ばれるものだ。スラムなので、家にトイレはない。有料のトイレはあるが、圧倒的に数が足りていないし、用を足すたびにお金がかかるのはつらい。なので、スラム住民はビニール袋のなかに用を足して、その袋を家の外に投げる。だから、フライング・トイレット。
 道行く人に踏まれて復路が破けるので、道は汚物だらけ。それでも覚悟していたほどの悪臭はない。そりゃ少しは臭うけれど。
 キベラは人が多いせいもあるが、とにかく賑やかだった。

私の任地において、人糞入りビニールが宙を舞うことはないが、そこら中で野糞や野小便をしている子供は見かける。同じ街に住む先輩隊員によると、全裸で小便する成人男性がいたそうだ。
つまり、ケニアの他の場所とは変わらない、子供が多くて住人の活気に満ち溢れた光景がそこにはあるのだと思う。


さらに本書では、マゴソスクール設立者のビッグママ「リリアン」、日本人運営者「千晶さん」、マサイの絵描き「アシフ」との会話が、キベラに住む人々の言葉を代弁していく。


「わたしが幸せなとき、世界の誰もが幸せな様に。わたしがつらいとき、つらいのはわたしだけじゃないのよ。だからわたしは独りじゃない。だから、わたしは大丈夫。だって世界はつながっているんだもの。私は大丈夫。」

「あれ?わたしのときは粉をすりつぶして調合してくれたわよ。ドクターが酔っ払ってたから適当なものを出したのかしら、あはは」

「だってさ、希望を生み出せなかったら、生きていけないじゃない。生まれや育ちは選べないんだから、自分の場所でがんばるしかないでしょ。」

特に、最後のアシフの言葉はスヌーピーの有名な漫画を思い出させる。

漫画


章の最後、彼との別れの話は、ケニアをはじめ新興国に滞在経験のある人なら誰もが一度は経験する、ある感情を抱かせてくれます。



なお、この「千晶さん」こと早川千晶さんはケニアでは有名な方で、マゴソスクールも含めたキベラのツアーを定期的に実施している。



また、本書のレビュー・感想を投稿すると、「投稿1件につき、給食20食分にあたる500円をマゴソスクールに寄付」されるそうです。


かく言う私もこの寄付プロジェクトに参加するため、こうして感想を書いているのですが…。


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