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甲冑と騎士道について

こんにちわ。皆さんは甲冑、と聞いて何を思い浮かべますか?いわゆる西洋の鎧、中学二年生くらいの男子心をくすぐるキラーアイテム、というのが私のイメージです。今日はその甲冑について感じる所を記しておこうと思います。

 昔、私はオランダに住んでいた時代があり、近隣諸国によく旅行に出かけたものでした。中でも印象深い場所の一つにチェコのプラハ城があります。チェコという国は最近まで共産圏だったせいか、他のヨーロッパ諸国とはなんとなく違う雰囲気あり、そんな雰囲気の中に山ごとそびえ立つ大変綺麗な城でした。

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 かの昔チェコを支配したルドルフ2世という王様が大変ファンキーな方だったようで、自ら錬金術にハマり世界中の珍しいものをコレクションするのが趣味、加えて芸術家、科学者、錬金術師、発明家、そして流浪の騎士などなど、おもしろ人間のコレクターでもあったようです。

 16世期くらいの事らしいですが、この当時、世界の中心といえばプラハだよね、というくらいの繁栄を誇っていたようです。という事で、そんなファンキーな王様が建てたプラハ城には今でも何かただならぬ雰囲気が漂っている、という訳です。

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 この辺を色々語り始めると長くなるのでそこは割愛して、プラハ城で私が大変面白く思ったのがその甲冑コレクションでした。もしかしたらレプリカも混じっているかもしれないのですが、量、質ともにこんな大量の甲冑を見たのは初めての経験でした。

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 見ているうちに甲冑って戦うために色々な工夫がされていたのだなあ、という事に気がつきます。当時は白兵戦ではなく、まずは名乗りを上げての一対一タイマン勝負ですから、多分にハッタリ臭い要素も必要になってくる訳です。ここでいう工夫、とはそういった意味合いのものです。

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 基本は攻撃に対して身を守るものですから、シンプルかつ機能的にすぐれているものがよいのでしょうが、あんまりシンプルだと「弱そう」という弱点が出てきます。そこでいかに相手を威嚇するかという要素がデザインに深く関わっているのではないかと感じました。

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 威嚇して、相手が怯んだ隙にこんな武器でぶん殴る、というのが主な戦法だったのではないかと思います。鉄板で覆われている訳ですからこのくらい凶悪なものじゃないと効き目もないし、相手を転がしてしまえば立ち上がるのも大変なくらい鎧が重いものですから、とにかく威嚇して最初の一撃をどうキメるか、と言う所に工夫がされていたのではないかと思います。

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 初歩的な威嚇のやり方として、「偉そうに見せる」というのがあるでしょう。これは騎士道的な考え方にもかなってますし、男前がこんなヘルメットをかぶっていれば、気の弱い人なら戦う前に気持ちが負けてしまうかもしれません。しかし顔が剥き出しになっている、という致命的な弱点は残ります。

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 同じコンセプトの改良版で、側頭の翼というかヒレだかのパーツがより大きくなり相手を威嚇、顔の部分も男前をアピールできるよう、顔中心をカバーする鉄棒が最低限の守りと、顔剥き出しを両立させる工夫がなされています。しかしかなり重そうで男前をアピールするのも楽じゃないな、と思わされます。

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 やがて顔全体を覆ってしまう、というニューウェーブが登場します。先ほどの男前コンセプトに比べ若干の卑怯感が否めないですが、騎士とはいえ命あっての物種です。この甲冑は鳥をモチーフに作られていますが、多分、鳥が家柄に関係するような背景があり、そんなイメージを上手く使って格好をつけながらも安全性を高めた、という工夫でしょう。

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 これは、顔を覆ってしまうのならば、地顔より怖い仮面で威嚇すりゃいいじゃん!というアイデアなのだろうと思います。この眉間にシワ寄せてる感じといい、隙歯の造形感といい、工夫している感じがしますが、まだ「コワイ」と感じるところまで至っていないようにも思います。

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 前のものに比べ、これはかなりコワさをうまく演出できているのではないかと思いました。材料は鉄板で技術的にも色々制約のあった時代でうまいこと「威嚇する」という目的を果たしているように思います。こんなのが先ほどの棍棒持って出てきたら、勝てる気持ちになどなれないでしょう。結局センスの問題なのかもしれません。

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 これはどうでしょうか?私的にはこれが優勝だと思います。今までは「どう威嚇するか」という所に工夫が払われていた訳ですが、これは完全に笑わせにきています。真剣勝負の場でこんな奴が出てきたら、笑っちゃうか、舐めとんのか!と怒り出すかのどちらかです。

 笑っちゃったり、怒ったりする、というのは隙ができる訳で、威嚇されて警戒している状態よりも遥かに脆いと言えます。勝つ工夫としては大変テクニカルで理にかなっていますが、卑怯そのもので、もはや騎士道も地に堕ちたと言えます。でも命あっての物種ですから勝ちゃいいんでしょう。

 とまあ、色々考えた訳ですが、この与太話は時代考証とか背景検証とか関係ない、私の全くの妄想である事は申し添えておきます。本当はそれぞれにもっと深い背景があるのかもしれません。

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 これはオマケですが、プラハ城敷地内一角の窓にいた人形、私的にはこれが一番怖かったです。こういったほんのり漂う狂気風味がよその観光地と違う妙味、という場所でした。

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 プラハ市内広場にある宇宙時計、我々が日常的に使っている時計とは別次元の天体運行を知るための機械式時計です。読み方すらサッパリわからないものが未だに公共の場で動いている、なんだか夢のような街ではありました。

 とまあ、くだらないことを長々と書き連ねてしまいましたが、ここまでお付き合いいただきましてありがとうございました。

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