【おはなし】横笛の上手なタコ

横笛の上手なタコ


ある町に住んでいるタコは 横笛の名人でした。

タコが横笛を吹くと、町の人々が集まってきて、踊ったり、うっとりしたり、好き好きに歌ったりしました。


ある日、町の子どもたちがやってきて言いました。

「学校で 笛の発表会があるから、
上手な横笛の吹き方を 教えてほしいの」

タコは8本の足に一つずつ笛をもって、
一人一人 ていねいに教えてあげました。


息を はきすぎてはいけない。
どのゆびが どのあなを押さえるか きちんと決まっているので
そのとおりにしなきゃいけない。
だけど 一番大切なことは
楽しくて幸せだと 思うことだよ。


子どもたちの演奏は、どんどん上手になりました。

子どもたちが一生懸命練習して、そのうえとても素直なので、
タコは腕組みをして考えました。

そうだ、お菓子とジュースがいっぱいの お茶会を開こうじゃないか。


発表会の前の日。
タコは朝から、大量の小麦粉と砂糖をふるいにかけました。
それからバターを練って、たまごを割り、生地を冷蔵庫に入れて寝かしました。

それから一番目と二番目の足で 苺と生クリームのケーキを

三番目と四番目の足で 野菜とたまごのミニ・サンドイッチを

五番目と六番目の足で チョコレートチップがたっぷり入った
手作りのアイスクリームを作りました。


その間に、七番目と八番目の足を使って、部屋中を綺麗に飾り付けました。

飾りつけが終わったら、寝かしていた生地を取り出して、
八本の足で素早く 型抜きをします。

ほら、もうじき招待状をもった子どもたちがやってきますよ。


ピンポーン!


「タコの先生、お招きどうもありがとう」

ところが、子どもたちが部屋に入ると……

タコの八本の長い足が、もののみごとに絡まって、
まるでお団子のようになっているではありませんか!

「クッキーの型抜きをしていたら、からまってしまったんだ。
みんなで、足をほどいておくれ」

タコは力なく言いました。

「横笛を吹く時は、どんなに難しい曲だって、
からまったことないのにね」
子どもたちとタコは笑い合いながら、
12分と30秒かけて、ようやく足をほどきました。

クッキーが焼きあがったら、お茶会の始まりです。
紅茶とオレンジジュースを飲みながら、お菓子を食べて、
横笛と明日の発表会について語り合うのです。

「緊張して、指をまちがえてしまったら どうしよう?」
「うちで練習するように、楽しんで吹けばいいのさ」
「先生、見に来てくれるわね」
「もちろんだとも。必ず行くよ」


次の日、発表会の客席には、町で一番有名なタコの姿がありました。

子どもたちの演奏は、軽やかで、正確で、
そのうえ 聞いているだけで踊りたくなるような、なんとも楽しいものでした。

タコはこれ以上ないくらい、誇らしく、温かな気持ちになって
目頭をそっとおさえました。

演奏が終わると、観客は全員立ち上がり、大きな拍手を送りました。
子どもたちはおじぎをしてから タコに手を振り、
タコは四本の足を振って それにこたえました。


演奏会から数週間後。
タコは自分のうちで、三時のおやつつきの 横笛教室を始めました。





この記事は一度後悔したんですが間違って消してしまって……(泣)
即興でnote上で書いたうえ他に保存していなかったので一瞬心臓が止まりましたが、ヘルプを見たらダッシュボード上で内容を確認できるとのことだったので見てみたら復元できました。

ダッシュボードに表示されるのはビュー数1以上の記事のみということでしたので、見て下さった方本当にありがとうございます。
あなたにはいいことがあります(ピノの星型が当たるなど)。


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