鮨屋で実感するおもてなしの定義【わたちゃんの、まったりビジネスコラム】

いつもの鮨屋に行き、カウンターに座って「今日はどうしようかな」と思っていたら、隣に座った家族連れの子供が、

「おかーさん、ここの店、言うすしや?!言うやつね!!」

と喜んでいるのを見かけて、「なるほど」と思った、わたちゃんです。自分の娘が幼い頃は、「回るやつ」しか行けなかったことを思い出してしまいました。

「おもてなし」という言葉は、東京オリンピック招致の成功が拍車をかけて、今や世界的に広まっています。東京オリンピックが順調に開催できていれば「おもてなし」をキーワードにした商品やサービスが日本中に氾濫していていたことでしょう。

ところで、この「おもてなし」の定義とは何でしょうか。一般的には「心のこもった待遇や歓待やサービス」と受け止められていますが、「心のこもった」というのは、単に「品質の高いサービス」を指しているのでしょうか。サービスサイエンスの観点から「おもてなしの条件」について考えてみました。

まず、①お客様の個別的事前期待に対応していることです。
お客様のサービスに対する事前期待は大きく分けると2種類あります。
誰もがもつ期待である、共通的事前期待とお客様固有の個別的事前期待です。鮨屋でたとえると、共通的事前期待は、店が清潔であることや、単純に美味しいことです。個別的事前期待は、自分の好みのネタが準備されてたりお気に入りの席を確保してくれること、等です。
個別的事前期待は、さらに状況で変化する事前期待や潜在的事前期待にも分かれます。状況で変化する事前期待とは、気温やお客様の顔色をうかがっていつもは日本酒のところを先に冷たいビールを出すといった気配りです。潜在的事前期待とは、お客様の好みに合わせて今まで食べたことが無いネタをお薦めするといった対応です。「おもてなし」は、共通的事前期待だけでなく、状況による変化や潜在的な事前期待も含めた個別的事前期待に対応していることです。

次に、②貴方だけにしているサービスであることです。
「おもてなし」では、お客様をセグメント化して個別的事前期待を予想して質の高い標準化されたサービスを提供するだけでなく、1対1のカスタマイズされたサービスが求められます。

最後に、③お客様の先回りをしたサービスであることです。
お客様から要望を受けて対応するのではなく、事前にお客様の要望や潜在期待を察知したうえで、先回りして対応することです。お客様の個別的要望を受けてから1対1のサービスを提供する、という後追いの対応だけでは「おもてなし」とは言えません。

20210316 おもてなし

こうしてみると、好みや体調、腹ぐあい、懐ぐあいを加味して、こちらから言わなくとも“その日のネタ”を選び、最適な組み合わせでつまみを出してくれる鮨屋の大将は、最高の「おもてなし」を提供してくれているのだと思います。鮨屋の「おもてなし」サービスとは、


「回るやつ」から「言うやつ」を経て、「言わなくてもいいやつ」になると「おもてなし」を実現できるというわけです。

ということで、早速、幼いころは「回るやつ」にしか連れていけなかった成人した娘を鮨屋に連れて行き、大将からの最高のおもてなしを受けました。
「今度はお母さんも連れて来よう」と提案したところ、


「それは止めた方がいい」とのアドバイス。

「なんで?」と聞くと、


「お母さんがこんなおもてなし受けたら、『あんたは変わった。こんな贅沢な人間になってしまって!!』と怒られるよ」だって。

カミサンへの「おもてなし」はもう少し様子をみてからにします。

#おもてなし #サービスサイエンス #わたちゃん

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