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<府中・カフェ葡萄>どのように彩色したか解説します

はじめに

 「線スケッチ」における基本の塗り方について、別途記事をまとめています。初めてこの記事を読む方は、先に下記の記事をおよみいただければ、より理解しやすいかと思います。

お急ぎの方は、基本の塗り方の要点を以下にまとめましたので、念頭に置いてお読みください。
 ・線スケッチでは、あくまで線描が主体で、色は線の表情をを活かすよう
  に塗ります。
 ・滲みやぼかしといった一般の透明水彩で使われている様々な技法は使い
  ません。
 ・透明水彩絵の具の「明るさ」「鮮やかさ」「透明感」を保つために、原
  則として混色はせず、薄く溶いた絵の具を塗っては乾かす工程を繰り返
  す「塗り重ね」を用います。

 なお、解説の中で説明する色の名前は、ウィンザー&ニュートン社製の固形透明水彩絵の具の名前を使用しています。あくまで私が使った絵の具の色です。この絵の具を使わなければいけないという意味ではなく、参考例としてお読みください。

 また、彩色前の線描作品について、その線描過程についてお知りになりたい方は下記の記事をご覧ください。

 以下に、彩色後の完成作品を示します。

カフェ葡萄

 下記の図で、使用した絵の具の名前と、その名前の先頭につけた数字を用いて、彩色した場所を示します。左端の段階から真ん中、右端の順に説明します。

スライド1

1)机、壁、天井、ランチの料理他

 左端の絵は、すでにかなりの部分を彩色した段階です。最初に広い面積を占める天井と奥の壁をペインズグレーで、ランチが載っている机をイエローオーカーで彩色しました。

 ペインズグレーで正面の椅子の背もたれ部分および、オーナーの給仕服、男性の客の服を塗ります。イエローオーカーで、正面椅子に置いた上着、右側のカウンターの天板、その上部にある戸棚の木部を塗りました。

 次にカドミウムイエローで、女性のお客の服、サラダの緑の葉の下地、スープを彩色します。サラダの緑の葉は、下地のカドミウムイエローの上に、フーカーズグリーンを重ね塗りし鮮やかな緑にします。

 次に薄めたカドミウムオレンジですべての人物の顔と、給仕するマスターの手を塗ります。さらにカドミウムオレンジで、パスタのソース部分を彩色します。

 バーントシェンナで夫婦が座っている椅子の木部、カウンターに並んでいる椅子の脚部を塗り、左端の絵の彩色の段階になります。

2)サラダ、スプーン、スープカップおよびスープ、食器棚の扉、前面黒板

 次に、真ん中の段階を説明します。ここでは、料理の部分を完成させます。サラダでは、緑の葉、タマネギの紫、そしてペインズグレーで陰をつけます。またスープの色をイエローオーカーで深めます。

 スプーンカップの場合、はっきりと反射と陰影をつけて陶器の表面を表します。スプーンは同じく白い反射と、青とグレーで陰をつけて金属光沢を表現します。

 次に奥の食器棚の扉、前面の黒板をペインズグレーで暗く塗ります。机の上の値段表など紙の下の陰も塗ります。

3)服の陰、カウンター上の食器棚の扉、暖簾、カウンター下のカラータイル、前面黒板、椅子の脚、タバスコの瓶

 右端の絵の塗りの状態を説明します。

 給仕服の白に対しては、グレーでもよいのですが、いつも使っている青系(セルリアンブルー)で陰を塗りました。同じ青でカウンター上の食器やのれん、カラータイルを塗ります。カラータイルについては、イエローオーカーで茶色のタイルを塗りました。

 さらに、食器棚の扉と黒板を緑(フーカースグリーン)で塗り、全体を黒緑にします。
 カウンター椅子の脚の焦げ茶色をローアンバーで塗り、タバスコの瓶の蓋とラベルを赤(カドミウムレッドディープ)と緑で塗りました。

以降の彩色は、下記の図に示します。

スライド2

4)食器の影、カウンター下のタイル、床、食器棚の扉と前面黒板、タバスコの瓶の液体

 左端の絵の段階では、ペインズグレーで、食器(皿とカップ)の影を塗っています。カウンター下および前面のカラータイルも引き続き塗り重ねます。

 食器棚の扉と黒板の黒緑をさらに塗り重ねます。床をカドミウムオレンジで薄めに塗ります。タバスコの中の液体をカドミウムレッドディープで赤に塗ります。

5)床の物入れかご、前面の壁の明暗、照明、カウンターの陰影、食器棚の扉と前面黒板

 中段の絵の段階を説明します。

 このカフェは、照明は天井からのスポットライト、棚に置いたランプなどを用い、手元の机以外は暗めの設定になっています。したがって、前面の壁面は、微妙な照明の当たり方になっていて、この絵でもその微妙な明暗を彩色で表すことにします。

 すなわち、照明近くは明るく、遠くになるにつれて光の当たる壁面と暗くなる壁面が現れる様子を、紙の白色、ペインズグレーや薄めのカドミウムイエローを使って表現します。

 左端の段階では、試すために薄めに彩色し、中段の絵の段階で、実際の明暗に近づけました。

 引き続き、カウンター下壁面のカラータイルの彩色と食器棚の扉、黒板に緑(フーカースグリーン)を塗り重ねます。

 最後にローアンバーで床に置いてある物入れかごを塗りました。

6)床の物入れかごの陰影、食器棚の扉と前面黒板

 最後の右端の絵では、床の物入れの陰影をペインズグレーでつけ、黒板と食器棚の扉の白文字を、不透明な白絵の具、ここではペイントマーカー(白)で文字入れをして彩色尾完成です。

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