<はじめての手帳スケッチ>その8. 色の塗り方について。
はじめに
手帳スケッチでは、使う紙が必ずしも水彩紙とは限らないので、彩色は透明水彩絵具以外に色鉛筆、マーカーなど様々な彩色画材が使用可能です。
それぞれ、長所と欠点があるので、どれが一番よいとは決められません。ある場合には、色を塗らない方がよいこともあります。TPOや作者の気持ちを大事にして適宜選んで塗ってください。
この記事では、それぞれの画材の良いところ、悪いところ、塗り方で注意する点について述べたいと思います。
彩色画材の図
手帳スケッチの彩色の基本
画材別の説明に移るまえに手帳スケッチにおける彩色の基本を説明します。
何色を塗ったらよいか:色の選び方
ペンで線描した絵を彩色するときには目的に沿って色を選びましょう。絵日記のように記録を重視する場合は、現実の色に沿って塗ることになります。一方創作絵画として楽しみたいなら、現実とはまったく違う色を使うのもよいでしょう。
大事なことは「現実の色を正確に再現しようとしない」ことです。おなじ葉っぱの緑を塗るにしても「自分の感性に従って好きと思う色(この場合は緑)を選んで塗る」ように心がけてください。現実とは全く違う色を塗って遊ぶのもよいと思います。
紙面に活き活きとした線で物が描かれていれば、色がなくても絵になります。また色を塗るときはその線を引き立つように塗ればよいからです。
自分の好みの色を塗ることで、それを見た人はその絵を描いた人ならではの絵だと感じることでしょう。
反射、陰影のつけ方
すでにペンによる線描だけで立体を表すことについては前の記事で詳しく述べましたが、色を塗る際に、光と陰影を付けて立体を表現することも重要です。
とはいえ、欧米の絵画のように、描いたものすべてに光と陰をつける必要はありません。
江戸時代の浮世絵のように陰影や反射を描かなくてもよいですし、例えば、人物の影は描かないとか、陰もすべて付けずに部分的に付けるという方法もあります。
手帳スケッチの場合、塗り絵のように色を付ける程度にして、微妙な質感を出そうとして複雑に塗らないほうが良いこともあります。例えば絵日記などは色を付ける程度でよいと思います。一方、B5程度のサイズであれば、陰影を付けたり、質感を出すとぐっと見栄えがよくなるケースもありますので、場合場合に応じて微妙な質感や反射、陰影を付けるようにしてください。
透明水彩絵具
良いところと悪いところ
次に、手帳スケッチの観点で良いところをまとめます。
透明水彩絵具の長所(明るさ、鮮やかさ、透明感、みずみずしさなど)は、黒い線を際立たせる画材として適していると思います。
紙が水彩紙であれば、透明水彩絵の具の長所をすべて活かせますが、水彩紙でなくても、他の彩色画材に比べて明るさや、柔らかな色合いが心地よいので、私自身はおすすめしたいと思います。
水彩筆を使うと、一度に広い面積を塗ることが出来るので、早く塗ることができる。
良くないところは以下の点です。
水を使うので、普通の紙の手帳では、乾くと紙がよれよれになってしまう。
旅行など移動するときには、パレット、筆洗器、筆など、必要な道具を持ち歩かなくてはならない。
実際に透明水彩絵の具で彩色したスケッチを参考までに示します。
アルコールマーカー
良いところと悪いところ
以下にアルコールマーカーの良いところをまとめます。
速乾性なので乾かす必要がない。
発色がよい。(ただし鮮やかすぎると感じる人がいるかもしれません。)
透明水彩と同じく広い面積を塗ることが出来る
紙がよれよれにならない。
一方、良くないところは次の点です。
コスト・パフォーマンスが悪い(コピックに代表されるメーカー品を使う場合は特に。ただし、最近はohuhuのように大量購入で安くなる製品や、各社の100円ショップから販売されるようになったので状況は変わりつつある)
混色(重ね塗り)で色を作りにくいので多数の色をそろえる必要がある。
実際にアルコールマーカーで彩色した実例を下に示します。
色鉛筆
良いところと悪いところ
以下に色鉛筆の良いところをまとめます。
色鉛筆さえあれば、そのまま彩色できる。
色数も多くセットがあるが、少ない色数でも混色(重ね塗り)で色を作ることができる。
悪いところは次の点です。
先が尖っているので、強く押して塗ると線の跡が付いてしまう。
力を入れずに優しく塗りを繰り返すことで均一に塗ることが可能だが、好みの濃さの色にするまで時間がかかる。
水彩筆の穂先やマーカーの先と違って、鉛筆の先は細いので、大面積を塗ることが出来ない。B5程度の大きさでも時間がかかる。
色鉛筆による彩色の、私の実例を以下に示します。
左から2番目のソメイヨシノの幹の彩色事例を除いて、通常の色鉛筆画の塗り方ではなく、色鉛筆を強く紙に押し付けて塗った作品です。
通常の色鉛筆の塗り方では濃い色になるまでに時間がかかったからです。鉛筆の線跡が残るものやむを得ないと判断して塗ってみました。
いわゆる額装して飾る絵ではないので、線跡が残っても十分楽しめるのではないでしょうか。
中央のソメイヨシノの幹の作品は、マイブック(文庫本サイズ)の1ページ分に描いたものです。
最初に、通常の色鉛筆画の方法に習って、茶色の色鉛筆を線跡が残らないように、筆圧を弱くして前後左右四方八方に鉛筆を動かして塗りました。
陰になるところを更に塗り重ねて濃くしてグラデーションを付けて幹の丸みを表しました。
次に、ソメイヨシノの幹の独特な黒っぽい色を出すために、茶色を塗った上から、赤紫の色鉛筆で重ね塗りを行いました。この場合も、筆圧を弱く四方八方に動かして、一様に塗り重ねました。陰になるところは、何回も塗って濃くしています。
以上から、たった二つの色を使うだけでも、時間がかかることが分かります。
最後に
以上、手帳スケッチに向く代表的な彩色画材を紹介しました。
それぞれ、一長一短があるので、これでなくてはいけない画材というのはありません。
私個人的には、透明水彩絵具を中心に、目的に応じてアルコールマーカーも使い分けていこうと考えています。
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