読んだことのない本が部屋から消えた

読んだことのない本が部屋から消えた。

実家にいた頃の読書事情を思い出す。
常にリビングに本があった。
うちは基本的に寝る時以外は全員が一階のリビングで過ごすスタイルだったのだが、個々の部屋は2階だったためいちいち本を片付けに行くのがめんどくさかっただけだ。ただ誰かの読みさしが置いてあっただけ。

落ちているのは父の本が多かったように思う。
そして父は読み終わった本もしばらくリビングに放置する。こうしてときどき読んだことのない本がリビングに落ちている。
自分の好みかどうかとかは考えず、なんとなくそれらを読んでいた。


他にも、部屋から消えたものはたくさんある。

長い一本の黒ゴムを切って結んだだけの髪留め
メーカーのわからないボールペン(会社の名前とかが入っている)
何かのオマケでもらったスケスケのエコバッグ

なくて困ることはないけれど、あって生活に彩りが生まれるわけでもない。具体的に「○○があったらよかったのに」と思うところまでいかず、ンー…とまとまる前の思考が鼻あたりから逃げていく程度。それでもゼロだとやっぱり少し精神が窮屈になる。
一人暮らしの部屋にあるのはバケツ塗りの赤で、実家には絵の具で描いた滲んだ赤だった。

一人暮らしをしていると、部屋に遊びがなくなるなあと思う。



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