因幡の白兎(鳥取県・倉吉市)_20190711
倉吉張子
鳥取県の倉吉市で受け継がれる「倉吉張子」は、江戸時代天明年間に絣(かすり)の行商人であった備後屋治兵衛がこの地に定住して創案したものだそうです。
幕末から明治期までが最盛期だったそうですが今でも古い型を使用して受け継がれています。
定住した倉吉張子の創案者である備後屋治兵衛が、倉吉の娘に惹かれてつくったと言われる「はこた人形」は、こけしのような風情の張子人形で、倉吉の伝統的なモチーフです。
倉吉市内でこのはこた人形をつくる「はこた人形工房」では、張子人形の販売や絵付け体験ができるようです。
さて今回は、倉吉でつくられる張子の中で「因幡の白兎」をつくりました。
因幡の白兎って?
少し前まで、毎日読んでいた本が、今年はじめに亡くなられてしまった橋本治さんの『橋本治の古事記』なのですが、古事記の世界って展開がめちゃくちゃで面白いんですよ。現在の論理で読んでも意味がわからないことも多いんですけど、意味じゃなくて出来事をいったん受け入れるのが必要というか、神様のやることなんだから人間世界の論理で「意味わからん」と怒っても仕方ないというか。
海で穢れを祓ったらたくさんの神様が生まれたとか、母親が恋しくて泣いたせいで天変地異とか、岩屋に隠れた神様に出てきてもらうためにどんちゃん騒ぎしたりとか、いちいち面白いんです。
「因幡の白兎」もそんな『古事記』に出てくるエピソードの一つです。ちょっと長くなりますが紹介したいと思います。出雲大社のHPにもイラスト付きで載っていますのでこちらもどうぞ。
意地悪な兄神たちと嫌われ者の弟神
いまの島根県にあたる出雲の国には後に大国主大神(オオクニヌシノカミ)と名乗り、出雲大社の祭神となり、また大黒様としても知られる神様であるオオアナムヂノカミがいました。
その出雲から東、因幡の地には(いまの鳥取県あたりを指す)、八上比売(ヤカミヒメ)という美しい姫がいました。
オオアナムヂノカミには80人の兄たちがおり、彼らは八上比売(ヤカミヒメ)に求婚するために因幡へ出かける際に、オオアナムヂノカミに荷物を持たせてーああ、これが大黒様の背負う袋なのかーさっさと姫の元にでかけてしまいます。
体皮がむけて泣く兎との遭遇
たくさんの荷物を持たされたオオアナムヂノカミは当然、兄たちから遅れてしまいます。先に行く兄たちは、その道中の気多(けた)の岬で、体の皮がむけて泣いている兎に出会います。兄たちは意地悪をして、皮がむけて痛い体を治すためには海水を浴びると良いと嘘をつきました。
だまされたことも知らない兎は、言われるまま海に飛び込んでしまい、傷がさらにひどくなってしまいました。そんな苦しむ兎に、あとからやって来たがオオアナムヂノカミ出会います。
兎のひどい傷の訳は、、
訳を聞けば、その兎は海の向こうの隠岐の島に住んでおり、一度この国に来てみたいと、近くに来たワニ(サメ)を利用して海を渡ろうとしました。兎は自分の仲間とどちらが多いか、ワニと比べようと話をもちかけ、ワニたちは兎の言う通りに海に並び、兎は数を数えるふりをしながら、海を渡って行きました。しかし、あともう少しというところで、嬉しくなった兎は「だましていた」ことを口を滑らせてしまい、怒ったワニに皮をむかれてしまったのです。
オオアナムヂノカミの助言と兎の託宣
そこで通りかかったのが、オオアナムヂノカミの兄たちで、兎がだまされてひどい目に遭ったところを、オオアナムヂノカミが通りがかったというわけです。
かわいそうに思ったオオアナムヂノカミは、「すぐに真水で体を洗い、それから蒲(がま)の花を摘んできて、その上に寝転ぶといい。」と伝えました。兎がその通りにすると無事に元の白兎に戻り、兎はオオアナムヂノカミに「先に行った兄たちは八上比売(ヤカミヒメ)を得られません。八上比売(やかみひめ)と結婚するのはあなたです」と伝え、因幡にたどり着いたオオアナムヂノカミは八上比売(ヤカミヒメ)と結婚することができた、という話です。
その後、八上比売(ヤカミヒメ)を奪われて怒った兄たちの迫害がまたヤバいエピソードが満載だったり、オオアナムヂノカミが様々な試練を乗り越えて大国主大神(オオクニヌシノカミ)になる辺りとかもかなりメチャクチャで面白いです。
とまあ、そもそもワニたちに嘘をついて痛い目にあったら、オオアナムヂノカミの兄たちによるさらなる嘘でより痛い目に合う白兎が、何の根拠もない上に結婚の意思すらあやしかったオオアナムヂノカミが美しい姫を得る、という託宣を授けるという変な話なのですが、兎に角(あ、兎が出てきた)、お騒がせだけど憎めないこの兎、全国各地で祀られています。
大国主大神(オオクニヌシノカミ)、つまり大黒様を祀る神社にはこの「因幡の白兎」がモチーフの彫刻や授与品がありがち、ということです。以下に良いまとめがありました。全国に興味深い神社がたくさんあるようです。
【張子制作MAP】
31/47。中国地方は既に制作と撮影が終わっているので、しばらくはコンスタントにアップできそうです。