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神牛と大社の祝凧(島根県・出雲市)_20200817

お盆が明けて暦的には秋へと向かう季節ですが、連日日本のどこかで40度を超すような気候で本当に本当に暑いですね。この暑さはいつまで続くのやら。。

無理をしなくてもいいところはなるべくマイペースでいたいものです。そんなわけでゆっくり続けている47都道府県の郷土玩具模造シリーズ『てのひらのしわざ』も久々の更新です。

本州・中国地方のラストを飾るのは、島根県は出雲市の「神牛(しんぎゅう)」と「祝凧(いわいだこ)」です。出雲といえば「出雲大社」。過去の記事にも度々出てくる『古事記』と所縁の深い場所で、大国主命(オオクニヌシノミコト/大黒様)を祀っている神社です。あとは巨大なしめ縄だったり、10月を「神無月(かんなづき)」と呼ぶのは全国の神様が出雲大社に集まると考えられたから(逆に出雲では「神在月(かみありづき)」)、などなど、興味深いトピックが多いです。「出雲」について調べてみると、古事記の描いてきた世界や大陸文化(農耕や製鉄など)が流入してきて以降の日本についてのヒントがあったりと本当に面白いです。

なお大国主命(オオクニヌシノミコト)に関しては、お隣の鳥取県でつくられる「因幡の白兎」で詳しく書いています。

ちなみに僕も「因幡の白兎」や「大黒様」を題材にした創作張子をつくってます。

今回つくったのは「神牛」と呼ばれる張子の首振り牛と、「鶴亀」という文字が書かれた「大社の祝い凧」と呼ばれるふたつの郷土玩具です。

神牛って?

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神社と牛の組み合わせで思い出すのは「天神様」で親しまれる菅原道真です。のちに「学問の神様」とも呼ばれるほど賢かった菅原道真は、平安時代に学者系の家に生まれ、5歳で和歌を詠むほどの才覚を持ち、さらには弓の名手で文武両道。疲弊する地方を立て直し人望も篤く、ついには天皇の信頼を得て政治の中枢まで入っていきます。しかし実力で地位を得てきた道真公を妬み恐れる有力貴族の上司による謀略で、京都から離れた九州へと左遷されてしまいます。

その際に死を悟った道真公は「車を牛に引かせて、牛の行くままに任せ、牛の止まった所に葬ってくれ」という遺言を残し、現在の太宰府天満宮がある場所でその人生を終えます。

このように菅原道真に大切にされた牛は、現在も「神牛」として全国各地の「天神」「天満宮」に祀られ人々に撫でられています。

そんな「神牛」「菅原道真」と出雲大社にどんな関係があるのかと言えば、道真公の祖先は出雲大社の宮司(正確には「出雲国造(いずものくにのみやつこ)と呼びます)をつとめる千家家の流れを汲んでいるそうです。

ちなみに道真公の祖先の一人である野見宿禰(のみのすくね)は、相撲の始祖だそうです。さらにその子孫には毛利元就がいたり、埴輪や土器をつくる土師氏(はじし)がいたり。ほぇー。

出雲の「神牛張子」をつくった張子職人

僕のつくった上の写真の「神牛」ですが、島根県の郷土玩具で何か面白いものないかなと思ってネット検索して出てきたものなのですが、調べてみると出雲市内にある高橋張子虎本舗というところで高橋孝市さんという方がつくられたもののようです。

こちらは「張子虎本舗」という名前なだけあって、虎の張子が有名です。年賀切手でよく十二支の郷土玩具がモチーフになっているものがありますが、こちらの張子の虎も1961年に発行された年賀切手に採用されています。

出雲の虎張子が切手に採用されるまでの詳しい経緯はこちらのブログに書かれていますが、絵柄の地域バランスや自治体の陳情など絵柄が決まるまでにいろいろあるものだなと。すごく面白かったです。

大社の祝凧とは

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神牛の上にある赤字で「鶴」、黒字で「亀」と書かれたこの凧は張子ではないのですが、串を骨組みにして和紙に文字を書いてつくりました。島根の郷土玩具を取り上げる際に、出雲大社に所縁のある菅原道真の神牛をあつかうのであれば、こちらの祝凧(いわいだこ)も重要かと思いつくりました。

「大社の祝凧」とは、出雲大社宮司の千家、北島両家に伝えられた凧で、大社背後の亀山(北島家)、鶴山(千家家)を現したもので、両家に関係する家に祝い事(男児出生?)があった際には、それぞれが所属する家の文字の凧を掲げて祝ったそうです。

明治後半頃にこの行事は見られなくなったそうですが、かつては半畳から五畳ほどの大きさで、中には十六畳もの大型の凧もあったようです。

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赤い凧「鶴」は、左側に羽根を広げた鶴が木に止まる姿を表し、右側は「つる」や、穀物や家宝を連想する「くら」と読めます。また亀は上側に大黒様の打ち出の小づちや袋、左下に福が多く来るように「多」の字、右下に米俵を表しているとのことです。

現在は凧揚げの行事自体は行われていませんが、戦後に高橋好氏により復活した飾り用の祝凧が、いまも三代目・高橋日出美氏の手で一つ一つていねいにつくられています。あれ、こちらも神牛張子の職人さんも高橋さんですね。高橋さんという姓が多いのでしょうか?

【張子制作MAP】

35/47。ようやく中国地方が終わりました。振り返ってみると中国地方は、出雲大社や桃太郎に平家物語と新旧交代ドラマがたくさんある地方ですね。これまでほとんど行けたことがないのですが、今後必ず巡りたい地方となりました。それにしても昨年夏から一年以上かかってしまった。。

次回は四国編です。
以下、中国地方編の記事まとめとGoogleマップです。


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