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情報操作の意外なメリット

医療業界というのは、多くの利害関係が複雑に絡み合い、政治的に情報が動くことが多いです。

伝えるべきことを隠ぺいする
恣意的な統計操作

医療と金と政治は完全癒着しており、そこに患者さんはいません。
情報操作と聞くと、悪い面ばかり考えがちですが、案外そうとも言い切れない面があります。

万病は歯にあり

100年くらい前にアメリカで中心感染仮説(focal infection)が広がりました。中心感染仮説とは簡単に言うと、むし歯から全身に細菌が入って様々な病気を引き起こす、という考えです。
ちょうどコッホやパスツールが先陣を切って細菌を研究して、感染症が劇的に発展した時期でした。言ってみれば感染症がバズっていたんですね。

だから、ありとあらゆる病気の原因が「バイ菌のせいだ!」と言われていました。そんななか
「むし歯で死ぬぞ!だって心臓から口の中の細菌が出てきたんだ!やばい!」ってなったわけです。
それでアメリカの歯科医師は根管治療をしなくなり、積極的に抜歯するようになりました。もしかしたら、ドイツの根管治療の医療機器メーカーを潰すための陰謀だったり…。

ちょっとでもむし歯が深いと抜歯判定。これがその後50年くらい続いたアメリカの歯科治療です。今でも根強く中心感染仮説の信仰が残っているため、抜歯傾向が強いです。
だからペンシルバニアや西海岸の著名エンドドンティストは、みんな口をそろえて「無菌!」を強調します。

おばちゃん根治を救え

中心感染仮説は世界中に広がりましたが、なぜか日本では全く伝えられなかった。はっきりとした理由は不明なのですが、お偉い人たちが隠ぺいしたと勝手に思っています。
当時の日本はアメリカよりドイツでしたし。
おじいちゃん先生はみんなジッペラーとシーメンスが良いって言いますよね。
私の実家に眠っている資料を見ると、今から50年以上前の根の治療は歯医者の仕事ではなかったようです。おばちゃんがほじほじして、膿をとって、ホルマリン製剤を浸した綿をつめてストッピング仮封。
だからなかなか治らず、何カ月も通うことになる。
この歴史があるので、日本の根管治療の点数が異常なほど低く、何度も何度も通う羽目になります。でも、少なくとも抜歯を避けることができたのです。

ここに中心感染仮説が入ってきたら大変なことになります。
根の治療で通院させられなくなり、売り上げが下がります。
根の治療で給料をもらっていたスタッフが職を失います。
「仮封材を再使用できるテクニックをもったおばちゃん」の職を守るためにも、中心感染仮説を食い止めなければならなかった。だって貴重な一票です。当時は票を買う時代です。

結果的に多くの日本人の歯が助かりました。
アメリカンエンドが我が物顔で普及しており、日本の古典的歯内療法を揶揄する傾向がありますが、多くの歯を保存できたことは称賛に値します。

アメリカでは中心感染仮説が亡霊のようにくすぶり、
日本ではおばちゃん根治が現役で存在する。
医療技術が発達しても、歴史の遺恨は消えることが無い。
妄想は尽きません。


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