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高気密・高断熱の意外な欠点

開業から1年が経ちました。
忙しくて大変でしたが、なんとか落ち着きつつある状況です。
環境配慮に疎い医療界で先陣を切って最高レベルの高気密・高断熱のクリニックで開業したわけですが、
良い点もあり、難点もあり、未だに試行錯誤を重ねております。

熱源が足りない

 高気密・高断熱の住宅と決定的に異なる点が
人がいない時間が長いことです。
高気密・高断熱を知らない人からは「だからなに?」って思われるでしょうが、人間からはいっぱい熱が出ています。体温って36度くらいあるので、気温で考えたらけっこう温かいんです。
そして、呼吸しているので温室効果ガスである二酸化炭素も出ています。
高気密・高断熱は、人間から出る放熱と二酸化炭素も使って室温をコントロールします。

 問題となるのが、住宅ではないため夜間に人が寝ていません。
そのため、冬場に必要な夜間の熱源の確保が難しい。医療機器や家電も動いていないため熱源になりません。
さらに連休を挟むと熱源が圧倒的に不足してしまいます。その不足分をエアコンが頑張るので、冬場の暖房費が想定以上に高くなってしまいました。
事前の予想では、暖房はほとんど使わないはずだったのに。
それでも電気代は12月―3月の平均が1万円を下回る金額なので、おそらく日本一の低電気代クリニックです。

 日射だけでも取ろうと思い、厳冬期に断熱シェードを開けっ放しにして休診日をまたいでみました。「Low-Eトリプル樹脂サッシだからハニカムシェード無しでも大丈夫なのでは」と考えたのです。
これは大失敗で、夜間のエアコン負荷がかなり大きくなってしまいました。
Low-Eトリプル樹脂サッシであっても断熱シェードは重要です。
ちなみに、Low-Eトリプル樹脂サッシはまったく結露しません。水滴の痕跡すらありません!

冬の2階が暑い

 当医院のエアコンは2階の天吊り1台で全館空調しています。熱は上へと上昇するため、夏場は上に溜まった熱を冷やせばクリニック全体の室温が一定になります。そのため猛暑日であってもカラッとして快適でした。電気代も7千円前後で異次元の低環境負荷です。

 ところが楽勝だと思っていた冬が難しかった。
事前の予測データでは、夏よりもエアコンの負荷が少ない計算でした。ですが予想に反して夏よりも電気代が高くなってしまいました。
理由は1階の診察室に空調が届きにくいからです。
熱は上へと上昇するため、2階のエアコンで1階を温めるのが難しい。1階を十分に温めようとすると、2階が暑くなりすぎてしまう。日射もとっているため、2階の診察室は30度くらいの室温になっていました。夏みたいに暑かったです。

 換気システムをいろいろ操作してみたり、サーキュレーターを使ってみたりしましたが、上昇気流には抗うことができず断念。
結局、2階で診察する時は暑すぎるので窓を開けていました。
蓄熱がもったいないけど、どうすることもできず…。
予算の都合から、床断熱と基礎断熱の一部を省いたことも原因だと思います。1階にエアコンを設置したほうがいいのか悩んでいます。

高気密・高断熱の1年を振り返ってみて

 高気密・高断熱の環境で1年間診察してみての感想は
不快感が全くないことです。
ずっと半袖スクラブの同じ格好で過ごせました。
途中でエアコンの設定ミスで不快な思いもしましたが、
寒さに耐えることなく、暑苦しくもなく
一定の環境で快適に診察できました。

 そして余計な刺激が無いので、施術に収集できます。
おそらく人生で初めて超集中状態のゾーンに入りました
時間の感覚が無くなり、雑念が消失して、瞑想に近い状態になりました。
自分の指のようにタービンが動き、歯の感覚というか、神経の感覚のようなものが自分に入ってくる不思議な体験をするようになりました。

すると、治療の精度が圧倒的に上昇し、速度も早くなっている。
時間をかけてゆっくり丁寧に治療しているのですが、保険診療のときよりも段違いで早くなっている。
自画自賛するなって怒られそうですが、診療環境を整えるだけで治療の精度と速度が向上するなんて思ってもみなかったことです。
集中することは、とても大切ですね。

思い返せば、
暑くてぼーっとしていたり、寒くて指先がかじかんでいたり
カビ臭いエアコンの風で気分が悪くなったり
ルーペや眼鏡が曇ってしまうことも多々ありました。

こういった環境からの不快感が原因で、目の前の診察に集中できていなかったことを実感できています。流行りのマンガのように特別な訓練や呼吸などせず、高気密・高断熱にするだけで全集中できますよ!

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