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探しものを探しに

夕飯の準備をしていると、
小学校3年生の双子の娘が部屋の中をウロウロしている。

なんだかソワソワ、キョロキョロと。

様子がおかしいな…? 

「どうしたの?」と尋ねると、
「髪につけてたリボンがない…」と小さな声でつぶやいた。

そういえば、今日娘は学校から帰宅すると、
ピアノ教室へレッスンへ行く前に、
髪の毛を結び直してリボンをつけていた。

「あのリボン、ないの?」と聞くと、
今にも泣きそうな顔で
「さっきまでつけていたはずなのに…」としょんぼりしている。

部屋の中をよく探すように伝えて、その間に私は夕飯をダッシュで作った。

部屋の中を探してみても、やはり見つからないと言う。

探しにいくか、諦めるか。
時間は18時を過ぎていた。外はもう真っ暗だ。

ついこの前まで18時でも明るかったのに、すっかり秋だ。

「リボン、ちょっとだけ探しに行ってみる?」そう伝えると、娘は「行く!」と、準備をはじめた。

私たちの会話を知らん顔してテレビを見ていた双子の息子も、懐中電灯を持って外に出ようとしていることを察知すると、「僕も照明係としてお供しましょう!」と言い出して、3人でリボン探しに行くことになった。

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家の外に出ると、もう真っ暗だった。

普段歩き慣れた道も、懐中電灯で照らしながら歩くと、それなりに特別感がある。

娘が歩いた道を逆戻りしてみることにした。

双子たちが、下ばっかり見て歩くので、「落とし物の場合は、見つけてくれた人が目に見える高さに置いてくれたり、引っ掛けてくれることもあるから、下ばっかり見ないで、上も見ること!」

そんなことを伝えると、目の前のフェンスに、定期入れがぶら下がっていて、双子が声を揃えて「ほんとだ!」と言った。

それからは、下を見て上を見て、横を見て、親子3人でリボンを探す。

照明係をかってでたわりに、早々に探しものに飽きた息子が「だいたいリボンなんて見つかるのかな…」と言い出す。

娘は「あれは、ただのリボンじゃない!あれは、発表会のために買ってもらったお気に入りのリボンなんだから!」と怒っている。

一緒にいると、秒でいざこざできるのが双子。

私は正直なところ、リボンは見つからないかもしれないと思っていた。
でも、探してみた。ということが大事なんじゃないか…。
そう思って歩いていた。

ケンカ勃発中の双子を両脇に抱えて…。

なかばあきらめムードが漂う中、ピアノ教室が見えてきた。
そこまで行ってみて見つからなかったら諦めよう。

そう思っていた矢先、娘が急に走り出した。

するとそこには、娘のリボンが落ちていたのだ。
誰にも拾われず、誰にも捨てられず…。

大事そうに手にとった娘は、「これは特別なリボンだから」とつぶやいた。

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そう言えば、真っ暗な夜道を双子と3人で歩くのは久しぶりだった。

保育園時代は、3人で保育園から歩いて帰った道のりも、

小学生になり、自分たちで登下校するようになり…

学童も行かなくなった今、
私は双子を小学校へ迎えに行くことがなくなったのだ。

いつの間にかなくなっていた日常の1シーンを思い出した。
リボンが見つかってよかった。






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