ミステリ批評ベスト100 ~はじめに~

 オールスターが好きだ。
 例えば、プロ野球。ペナントレースはそれほど気にならないのに、なぜかオールスター戦だけは気になる。セ・パのスター選手たちがズラリと居並ぶスターティング・オーダーを見るだけでなぜか興奮してしまうのだ。サッカーやバスケットボールなんかも同じだ。ルールも戦術も選手の名前もわからないのになぜかオールスター戦をやっていると気になる。

 だからオールタイムベストも好きだ。
 思えば、自覚的にミステリを読み始めた時、その道しるべととしたのは『東西ミステリーベスト100』(文芸春秋)や『本格ミステリベスト100』(東京創元社)、ミステリサイト『幻影の書庫』の『ミステリ百選』だった。それらのリストをコピーしたり、プリントアウトしたりして1作ずつマーカーペンで塗りつぶしていった。懐かしい思い出だ。そして、その時から、将来の目標は「自分だけのミステリベストを作る」ということだった。

 だが、数年前にその目標は半ば達成し、半ば断念した。
 というのも私自身、ミステリ小説を読むのをやめてしまったからだ。理由は色々あるが、一番大きいのは批評を書き始めるようになったことである。特に、【和翠の図書館】という企画を始めてからは、現代の小説にまったく手がつけられなくなった。映画を観、シナリオを漁り、ノンフィクションや児童書を読み耽り、漫画を血眼になって探していると現代の小説にまで手が回らないのだ。

 しかし、やはり夢は捨てられなかった。
 そこで、私は考えた。
 「ミステリ批評ベスト100」を作ろう、と。
 ちょうど数年前、『推理小説批評大全 総解説』という本を作るために、ミステリ批評の本をひたすら読み込んだ貯金をここで活かせそうだぞ、と。

 というわけで、これから1日1作品を目標に「ミステリ批評ベスト100」をカウントダウンしていこうと思う。
 ただし、このリストはあくまでも私のパーソナルなベストである。当然、公的なものであるはずがないし、バランスを考慮した公平さはハナから目指していない。そういった点を理解していただける方のみお付き合いいただければ、と思います。
 では、ミステリ批評の世界へ、ご案内いたしましょう!

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