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コモディティ(原油)の基礎知識

原油とは油田から採掘されて、まだ精製されてない石油のことである。プラスチックや繊維、紙、ナフサ、ガソリン、灯油、アスファルトなど原油が原材料や燃料になっているものが沢山ある。発電のエネルギー源にもなっており、我々の生活に欠かすことのできない資源であることは間違いないだろう。経済活動の様々な場面で必要とされるため、
景気が良いと原油需要は増え、悪いと減る傾向がある。基本的に好景気は原油高、不景気は原油安につながりやすいと言える。金と並んでコモディティーの代表格である。

原油の主な産油国は、サウジアラビア、米国、ロシア、アラブ、イラン、イラク、クウェート等。世界の生産の割合が高いのが中東諸国で構成されているOPEC(石油輸出機構)で、このOPECの政策や生産動向が原油価格に大きな影響を与えている。原油の埋蔵量の2/3、生産量の1/3は中東で占められている。

世界で取引されている原油の種類は、200種類以上ある。日本はサウジアラビアやアラブ首長国連邦(UAE)など主に中東諸国から原油を輸入している。一口に原油と言っても、生産する国や地域によって性質が異なる。

数多くの種類がある原油の価値を決める要素はまず、重いか軽いか、という物差しがある。ガソリンや軽油といった成分を多く含む軽質原油は価値が高いとさされる。反対に、常温でどろどろした重質原油は重油やアスファルトを多く含み、軽質より割安になる。次に硫黄分の濃度の違いがあり、硫黄分が少ないほど価値が高くなる。


~①WTI原油、②ブレンド原油、③ドバイ原油について~

実際の原油取引では「指標原油」を値決めに使うのが一般的である。産油国は輸出する地域ごとに指標を使い分け、中東以東のアジア地域では主にドバイ産やオマーン産を基準とする。欧州は北海ブレント原油、米国ではWTI(West Texas Intermediate)原油。

ドバイ、ブレント、WTIの指標3油種を比べると、ブレントとWTIは軽質・低硫黄、ドバイは比較的重質で高硫黄、という特徴がある。またWTI原油やブレント原油がドル建てなのに対し、東京市場のドバイ原油は円建てとなっているため、特に円安の今は取引しやすい商品と言えるだろう。WTIとブレントの性質は似ているが、以前はWTIがブレントより1バレル2ドル程度高いのが一般的であった。近年では、シェール革命で米国内の原油生産が増えた影響で価格が逆転している。

WTIはニューヨーク・マーカンタイル取引所(NYMEX)、ブレントはICEフューチャーズと、ともに商品取引所に上場している。ドバイは主にシンガポール市場で欧米石油会社などが取引している。取引量や市場参加者の多さで、影響力が圧倒的に大きいのはWTI。過去の値動きをみると、WTIが上がれば、ドバイやブレントも上がる傾向が強く表れている。


~原油の在庫について~
原油価格は、基本的には需給のバランスで決まる部分が大きい。この需給バランスを示すバロメーターの一つが、原油在庫量の変化である。需要を供給が上回っていれば在庫が増え、供給を需要が上回っていれば在庫が減るため、在庫の増加は原油価格の下落に、減少は上昇につながりやすい。

EIAが毎週発表している、週間石油レポートでは、原油や石油製品の在庫量の増減が、原油相場の材料となることが多い。


~原油価格の上昇要因~

・原油はドル建てが基本なので、ドル安は原油価格上昇の原因に
・産油国での政治的な不安定さや紛争、制裁措置など、地政学的な出来事は原油供給に影響を及ぼすことがある。供給の不確実性が高まると価格が上昇する。
・産油国が生産調整や供給制限を行う場合、これも価格変動の要因。OPEC(石油輸出国機構)などが生産調整を行うことで、価格を調整しようとする。
・原油の採掘や輸送に影響を与える天候や自然災害(ハリケーン、洪水など)。生産や輸送に遅延が生じることで供給に影響が出るため、価格が上昇する可能性

~原油価格上昇の影響~
・原油高は物価上昇の要因になり、各国のGDPにも影響を与える(日本の場合、原油が1割上昇すれば、GDPが0.4%ダウン=約2兆円の損失)
・原油はエネルギーの主要な供給源なため、原油価格の上昇は、石油製品(ガソリン、石油、ディーゼル燃料など)の価格にも影響を及ぼす。これにより、輸送や生産にかかるコストが上昇し、一般消費者にも影響が。
・原油価格の上昇は、生産コストの上昇をもたらすため、一般物価の上昇につながる可能性がある。これはインフレーション圧力を高める要因となる。


~原油への投資方法~

①直接的な投資
・原油先物取引: 先物市場で原油の先物契約を購入する方法。これにより、将来の価格変動に対するポジションを持つことができるが、先物取引はリスクが高く、専門知識が必要。
・原油現物取引: 原油の現物を購入することも可能だが、保管や輸送などのコストやリスクが関与する。

②投資信託 (ETFs): 原油価格の動向に連動するよう設計されているETF。
主なETFの例:WTI原油価格連動型上場投信(1671)、NEXT FUNDS NOMURA 原油インデックス連動型上場投信(1699)、United States Oil Fund LP($USO)、United States Brent Oil Fund LP($BNO)

③原油関連の株式: 原油産業に関連する企業の株式を購入することも投資方法の一つ。石油採掘・生産企業、石油精製企業、エネルギーサービス企業など。
例:国際石油開発帝石(1605)、石油資源(1662)、コスモHD(5021)

④商品指数ファンド (Commodity Index Funds): 原油を含む複数の商品に投資する指数ファンド。これにより、原油以外の商品の価格変動にもポジションを持つことができる。

⑤バリューチェーンの投資: 原油産業のバリューチェーンにおいて、探鉱、生産、精製、流通などの段階に投資する方法。ただし、これらの投資は特定のセクターに露出するため、リスク管理が重要。


~石油・ガス関連株 in USA (Q3・2013注目銘柄)~

①YPF:アルゼンチンに本社を置く企業で、様々な所有地から石油・天然ガス製品を生産している。石油製品の精製も行っている。

②Weatherford International(WFRD):エネルギー機器とサービスを供給。4月に第1四半期決算を発表。純利益は8,100万ドルで、2022年第1四半期の7,400万ドルの純損失から回復した。掘削事業部門と坑井建設部門の利益はともに前年同期比で20%以上増加した。

③Vista Energy(VIST):アルゼンチンおよびメキシコで石油・ガスの探鉱を行っている。

④Vertex Energy Inc(VTNR) : 同社は石油精製と配給を行っている。

⑤Black Stone Minerals L.P(BSM):米国41州にわたり、石油・天然ガス鉱区のロイヤリティ権益と鉱区権益を保有。

⑥Chesapeake Energy Corp(CHK): 2023年第1四半期、チェサピーク・エナジーの売上高は前年の約3倍となり、純利益は14億ドル(1株当たり9.60ドル)となった。

⑦Saturn Oil & Gas Inc(SOIL.TO):カナダ西部に鉱区を持つ石油・天然ガス探査会社。ティッカーシンボル(OILSF)で店頭取引も行っている。

⑧Obsidian Energy Ltd(OBE):カナダ・アルバータ州を中心に石油資源の探査、開発、生産を行っている。5月4日、2023年第1四半期決算を発表。ピース・リバー油田とバイキング油田について良好な結果が報告されている。

⑨Vital Energy Inc(VTLE):テキサス州全域で石油・天然ガスの探鉱・取得・開発を行う。5月9日、同社は第1四半期決算を発表し、純利益は前年同期の8,700万ドルの純損失から1億1,400万ドルに増加した。バイタル・エナジーは2022年第1四半期に3億2600万ドルという多額のデリバティブ損失を計上しており、これが株価が低いPERで取引されている大きな理由となっている。5月、バイタル・エナジーは、民間の石油・ガス探査会社であるフォージ・エナジーII LLCと、同社のデラウェア盆地資産を第三者パートナーシップを通じて取得する契約を締結した。この買収により、バイタル・エナジーのパーミアン・ベースン権益に19万8000エーカーが追加される。


参考文献はこちら↓

原油市場とは WTIやブレント、地域で異なる指標原油 - 日本経済新聞 (nikkei.com)、②原油投資の基礎知識 - 先物の極み (sakura-inv.com)、③原油価格(NY原油・WTI原油)と円建ての推移とチャート・速報 (stock-marketdata.com)、④Top Oil and Gas Stocks for Q3 2023 (investopedia.com)、⑤個人投資家が原油へ投資する方法と、過去の投資事例を検証 | 会社に依存しない生活 (whitegold.site)





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