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なぜ連珠には複雑な開局規定があるのかの考察

連珠というゲームがあります。世に知られている名前でいうと五目並べです。
このゲームは、実はとても奥深い要素があり、一部界隈では盛んに遊ばれています。
しかし、社会的な評価は将棋・囲碁、さらにはオセロに全く及ばない状態にあります。

なぜ、連珠がこれほどまで地位が低いのか、素朴に考察しましょう。

個人的に一番大きいと感じるのは、二人完全情報ゲームの経済的なパイが囲碁・将棋で十分に占められていそうということです。囲碁の停滞を見ても連珠がここからのし上がるプランは今のところ厳しいように感じます。

ゲーム性のわかりやすさはオセロと並ぶ出来です。石を5こ並べるだけでいいのですから。それならばオセロよりも流行っておかしくないのです。それでも、連珠が遊ばれないのは、五目並べから連珠に追加されたルールが複雑すぎるという言説があります。

それは本当でしょうか。

五目並べと連珠の違い

五目並べと連珠には2つの違いがあります。

1. 先手の禁手

五目並べは圧倒的に先手が有利です。なぜならば、盤面は常に先手の石が1石多いか、後手と同じ数ある状態しかありません。先手が攻めるのに対して、後手が受ける。その展開が五目並べの基本です。

更に五目並べには先手の必勝法が知れ渡っているので、先手の何らかのハンデが必要になります。

他のゲームと比較するならば、チェスでは先手が勝ちやすいといえども、後手に策があるのに対し、五目並べでは後手の紛れが小さすぎます。先手が力を持ち続けてしまいます。

なので、先手はいくつか石を置けない場所が定義されています。「三々」「四々」「長連」というものです。

これらの禁手の定義が微妙に難しいため、連珠のルールに批判が飛ぶことがあります。

2. 開局規定

これも先手の不利を解消するための仕組みです。

完全情報二人ゲームの愛称である、「アブストラクトゲーム」では、先手と後手の均衡をたもつために、「パイルール」というメカニクスがあります。

パイルールでは、仮に決めた先手が局面を提示し、仮の後手が先手と後手どちらでやりたいかを宣言する、という作法を行います。仮の先手が局面を調整することによって先手と後手の力関係が保たれる。というのがパイルールでの気持ちです。

連珠の実際の対局では複雑化したパイルールが採用されます。なんと、パイルールが3回ぐらい行われます。なんでそんな複雑な作法をするのかがわかりづらいので、批判が及びやすいルールです。

連珠のルールへの批判

これらの連珠のルールが複雑すぎるために、連珠が普及していないのだ。という批判はよく目にします。
本当でしょうか。実際にあげられていた改善策への問題を見ていきましょう。

3手目を天元から離れたところに打つようにすれば良い

先手の力を弱めるための仕組みですね。天元の石から遠いところに次の置けば、石関係が弱まるために先手が弱くなるというアイデアです。

これは一見良さそうなのですが、致命的な問題があります。それは出てくる序盤局面パターンが少なすぎるということです。最善の先手の場所は1,2箇所しかないために、強い人同士の対局ではありきたりのパターンを追うことになってしまいます。なので、これは改善になっていません。

先手は20手以内にパスをする

これはSDINというサイトで禁手なし五目として実際に実装されています。禁手というアイデアに対して簡便な方法として提案されていますが、実のところ後手に有利すぎます。
また、戦型が増えないという点でやはり問題があります。

連珠の複雑なルールの意義

禁手の意義

連珠の禁手は非常に複雑なのですが、パズルとしては面白いと思います。後手の不利を解消するためには、後手の石を増やすしかないです。先手の禁手箇所は実質的に後手の石ということを踏まえると、禁手というのは後手が先手を拘束することで2手連続で指すための仕組みなのです。

難しいのですが、慣れるとかっこいいですし、後手番の目標があるという点でゲームとして優れている要素であると感じます。

長連と三々四々でどちらかを廃止するもの変だと思っています。この2つは大きな差、特に長連は先手が解消出来ないという面白い要素があります。

開局規定の意義

こちらは、初心者には正直関係がないです。開局規定がない状態で初心者が指しても、十分楽しめます。慣れてきても、3手までのパイルールで十分です。熟練者が公平に遊べる局面を増やしたいというモチベーションで開局規定が複雑化しています。

このときに、適当なパイルールだと「選べる盤面の多様性」と「既存の珠形との近さ」のどちらかが死にます。
突飛な始まりをしても連珠のようにならないし、退屈なルールだと結局同じような局面になってしまいます。

実は同じように開局規定が変なゲームとしてドラフツ64があります。ドラフツ64では、最初の数手がある程度公平になるようにランダムに指定された局面から始めるという手法があります。

連珠もランダムオープニングという手法を取る手はあると思いますが、研究ゲームとしての側面は薄れるので、行われることはないでしょう。

なんにせよ、いまの複雑な開局規定は達成したい要件が難しいということを把握しておく必要はあると思います。

まとめ

ここまで書きましたが、私は連珠は全然わかりません。5手詰ぐらいがわかる感じです。それでも連珠はとても面白いゲームですし、ペンシルパズルみがかなり高いゲームだと思うので、色々な人が興味を持つ余地がまだまだあると思います。これからも発展すると良いですね。

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